2話:遺跡
このころは魔導兵装の命名規則が決まっていませんでした。
「……やっぱりな」
入口の狭さの印象と変わらぬ狭い通路に見慣れた小型ガーディアンが浮遊していた。
ガーディアンは遺跡の外には絶対に出ない。そして遺跡の侵入者を容赦なく排除するのだ。
俺は小型ガーディアンの赤い丸みを帯びたセンサーの範囲へ入る前に雷球兵装で倒すことにした。
通常出力の雷球が小型のガーディアンの装甲を破壊した。
普段と変わらない光景に少しの安堵と退屈さを感じていた。
「入口も狭かったし外れかな?まだ入ったばかりだから気が早いか」
残骸の横を通り過ぎ、通路を進むと少し通路が広くなった。
そこには複数の小型ガーディアンが周回していた。
「数が多いな……」
俺は通路の手前に身を隠し小型の攻撃をなるべく受けないで撃破する方法を思案する。
小型の攻撃は携行シールドで防げるが魔力は無尽蔵にあるわけじゃない。
なるべく節約して奥に進んでいかなければいけない。
ガーディアンたちは規則正しく周回していた。
これなら二体はセンサーの死角から狙い撃つことができるだろう。
雷球も節約したいがガーディアンは一体がやられると同じ部屋の個体も同時に反応すようになってる。
一度侵入者を見つけたガーディアンは遺跡から侵入者を排除するか機能停止するまで追いかけ続けるのだ。
慌てて先に進んで更にガーディアンと会うわけにはいかない。各個撃破するしかない。
俺は通路手前の物陰から一気に飛び出ると雷球を二発放った。
紫電をあげながら雷球は二体のガーディアンに吸い込まれるようにあたりその機能を停止させた。
その瞬間残りの二体のガーディアンが振り向きセンサーを赤く点滅させながら警告音を放った。
「ビィィィィィ!」
そして二体のガーディアンは同時に雷球を放った!
バチィ!
一発はよけたがもう一発はシールドを掠めた!
「直撃じゃないなら大したことない」
姿勢を立て直しガーディアンの二射目の前にこちらの雷球を叩き込む。
ガシャン、ガシャン。二体のガーディアンは機能を停止した。
「稼働しているガーディアンが多い」
俺は気を引き締め慎重に通路の奥へ進んだ。
開けた部屋になっており奥に大きな丸い扉があった。
扉を守るように中型のガーディアンが二体佇んでいた。
こいつのこともよくわかっている。
中型のガーディアンは小型と違い、浮遊せず三つの球体を転がして地上を移動する。
両腕には剣のような板状の武器が備わっているが、実際には鋭さがなく、叩き潰すためのものだ。
こいつら前後左右は素早いが転回が鈍い。グラップリングガンを使えば容易く後ろを取ることができるはずだ。
「その前にこの部屋でグラップリングガンが使えるか確認しないと」
グラップリングガンは探索者の間で広く使われている魔導具だ。魔力でできた吸盤を射出し、壁や天井に張りつくことで、三次元的な機動を可能にする。まれに、魔力の吸着を妨げる素材もあるため注意が必要だ。
中型が静止しているのを確認し、壁と天井にグラップリングガンが使えるか試す。
吸盤はしっかりと張り付き意図せず外れることはなさそうだ。
攻略法を知っていても、中型の一撃は安物のシールドを紙のように切り裂く。まともに食らえば命はない。
当たれば一撃で死ぬかもしれない一撃を放つ敵が二体。緊張が高まっていた。
雷撃兵装をチャージモードにする。背中のコア狙いとは言えカバーがされており防御力が高いからだ。
準備をすませ一気に中型のセンサー範囲に入る。
バシュ!
グラップリングガンを天井に射出して先ずは右のガーディアンのコアを狙い撃つ!
ズガン!
中型のコアをカバーごと雷槍が貫く!右の中型は機能を停止した。
残るは一体、だが雷球兵装のチャージモードはすぐに次の攻撃に移ることができない。
チャージタイムが必要だが、残りの中型は完全起動しておりこちらを待ってはくれない。
シュゥゥイイイイン。
中型の駆動音が響く。
中型は一気に距離を詰め両手の武器を振り下ろしてくる!
ドゴォン!
間一髪でグラップリングを駆使し攻撃をよける!
「チャンスだ!仕留める」
チャージは終わっており攻撃を外した中型の隙を突きコアを狙い撃つ!はずだった。
残った中型は今まであった中型をはるかに上回る転回速度だった!
「何!?」
雷槍は正面装甲に阻まれかき消された。
「こいつおじさんが言ってた後期型か!」
戦いの緊張感の中かつての思い出が蘇る。
「ユーマ。俺の話を聞いてよぉ中型弱いって思っただろ?なめてると痛い目会うぜ?後期型は転回速度が速くて背後を突けないんだ。でこっからが大事なとこだ覚えとけよ後期型は正面装甲と頭部の間、スリットを狙うんだ。当たったらドカンだぜ!」
記憶から後期型の弱点を確かめる。スリットはあるが狭い。雷槍を狙いすまさないと倒すことはできないだろう。
「おじさん本当に倒したことあるのかよ」
毒づきながら再びチャージ時間を稼ぐ。グラップリングを細かく使い中型の一撃をもらわないようにする。
そしてチャージを完了し中型がこちらを向いた!
シュゥゥイイイイイン
中型が迫る!スリットに照準を合わせる。外せば死だ。
バリィ!雷装が放たれる!雷装はスリットに吸い込まれていく!
しかし中型の勢いは止まらない!バシュ!グラップリングガンを使い中型とすれ違う!
しかし中型の破滅的な一撃は来なかった。中型は壁にぶつかり爆発した!
ドゴォォン。
なんとか後期中型を倒すことができたのだ。
息を整え、真正面の“扉”を見据える。
初めてこの部屋に入ったとき、あれは扉だと思った。だが、よく見れば継ぎ目ひとつない、ただの壁にしか見えなかった。
(……なぜ、扉だと思った?)
その疑問が頭をよぎった瞬間だった。
キィィン――。
壁に、細く淡い光のラインが浮かび上がる。まるで生き物のように螺旋を描き、やがて輪をなすと……そこがゆっくりと開き始めた。
開口部の先は、これまで見てきたどの空間よりも広大だった。
幾本もの巨大な柱が規則的に並び、奥は闇に沈んで視界の届かない深さを持っている。
「……ここまで来たんだ。この先に、何があるのか……見届けないとな」
手元の兵装を確認する。
雷球兵装、残量は約半分。
グラップリングガン、残りは三分の一。
戦えるか――ギリギリだ。
だが、引き返す理由はどこにもなかった。
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