第十一話 その名を、もう一度呼ぶために
1.《セオリア中枢》からの最終命令
翌朝。セオリア学園・制御中枢タワー。
ナユタたちの戦いの報告が上層部へと届いたそのとき、
全校の演算システムを通じて、“宣告”が下された。
「君影ナユタ。君の存在は、この学園における理論秩序の脅威と認定された。
よって、学園は《存在抹消プロトコル》を発動する──」
「来たか……本当の“敵”が」
ナユタの表情に、かすかな微笑が浮かぶ。
“オルタ・ナユタ”との融合により、彼は“完全な自己”となった。
それは同時に、セオリアが恐れる“理論外の存在”の完成を意味していた。
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2.仲間たちの選択
夜。
屋上に立つナユタの元へ、ひとり、またひとりと仲間たちが集まってくる。
「……逃げる気はないの?」
御鏡シイナが問う。
「逃げても、世界そのものが追ってくる。
だったら、“この場所”で決着をつけたいんだ」
アランが苦笑する。
「お前はやっぱり、どこまでも“主人公”だよ」
そして、雨月メグが小さく呟く。
「──だったら、私たちも“物語の登場人物”でいさせてよ」
それは、彼に“共に立つ”という意志の宣言だった。
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3.最終決戦の布告
セオリア本部・天頂区画より、精鋭部隊が放たれる。
名称は──《コード・アンサー》。
学園が生み出した、最終防衛構造兵装部隊。
その先頭に立っていたのは、かつてナユタたちを導いた教官──ベル=ラグナロクだった。
「君影ナユタ。“私情”ではお前を救いたい。
だが、“理論”はそれを許さない。私は、セオリアそのものだ。理解してくれ」
その言葉は、かつての師としてではなく、“システムの意志”としての宣言だった。
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4.《戦闘構築区:天頂演算フィールド》 発動
「これが……セオリアの最終演算空間……!」
舞台は現実を遥かに超えた、概念演算上の戦場へ。
そこでは、重力、時間、記憶──すべてが“意思”によって構築される。
「……いこう。僕たちの存在を、証明するために──!」
ナユタの手が掲げられる。
《構造展開:全次元連動型演算》
《Logia統合演算:虚数×喪失×選択》
彼の周囲に、全員の演算が連携される。
アランの《演算剣》、シイナの《情報遮断幕》、メグの《時間凍結》──
そして、ナユタの《定義改変》。
そのすべてが、“存在を護る”ために共鳴する。
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5.それでも、名を呼ぶ
戦いの最中、ナユタの心に、誰かの声が届いた。
それは、かつて出会った“唯一の他者”。
今はもう失われた、名もなき“少女”の記憶──
「ナユタ……もしも、“君”が君でいられなくなったとしても──
私は、君の名前を呼ぶよ。何度でも。
君影ナユタは、君だけの“物語”だから」
その記憶は、かつて“存在を否定された”日々に光を灯した、
彼の始まりの希望だった。
「……ありがとう。
僕は僕を、ここで定義し直す。誰が何と言おうと──
“僕は君影ナユタだ”!」