第93毛 誰が為に
大男「洗濯ってのはな、いっけん簡単そうに見えるが、そうでもねぇ。汚れの具合と位置、衣類の素材などを確認しながら、それにあった洗い方をしていく必要がある」
その方は、豪快そうな見た目とは裏腹に…と言ったら失礼でしょうが、とても丁寧に、繊細に私の服を洗ってくれました
「これでも着てな!!」と渡された服も、すごく肌触りが良く、心地よく…
大男「服を見て、何か洗っていくとな。そいつがどんな生き方をしているのかがわかってくる。とは言っても、最初は俺も想像みたいな感じだったがな。ああこいつは初めて手の込んだ料理を作ったのか、こいつはもしかして誰かに突き飛ばされたんじゃないか、こいつは日々、泥だらけになりながら働いてるのか…とかな。」
私「…想像…」
大男「ああ。んで、それが当たったり当たらなかったりして、繰り返してくとな。わかるようになってくるんだよ」
私「………私の、も…わかるんですか?」
大男「ん?ああ、何となくな」
私「…っ!!………」
大男「ハッハッハッ!!そもそも嬢ちゃん、これ血じゃねぇか。俺じゃなくても想像はつくぜ」
私「………」
大男「さっきも言ったように、俺は俺自身に何かない限りは、余計な詮索はしねぇ。俺が感じてるのは、嬢ちゃんがなかなか骨のあるヤツだって事と、生きようとしてるってとこかな」
私「……生きようと…してる??」
大男「ああ。まぁ詳細は省くが、大切な人がいるんだろ??荒っぽいが、よく汚れを落とそうとしたのは伝わるし、この血の量からして、容赦してねぇしな。容赦しねぇってことは、冷徹なやつか、自分は何としても生き残ってやるって想いが強いやつかに、たいてい分かれる。嬢ちゃんは、後者だな」




