第661毛 ゲンキョウ
少し遡り
コーボ「ベーグル、カラダの調子はどう??」
ベーグル「ああ。だいぶ体力や気力が回復した。心配かけたな」
コーボ「ううん。傷が塞がったとはいえ、一時は死にかけたんだからさ、カラダはびっくりしちゃったよね…。とりあえずよかったよ」
ベー「思いのほか、ヘバッてたみたいで、情けねぇぜ…」
とある宿のベッドにて、ベーグルは悔しそうに話す。
コーボ「いやいや、ウチなら、刺されちゃった! って衝撃で、もっと回復まで時間かかりそうだからさ、ベーグルは早い方じゃない」
ベー「そうだと良いんだがな…」
レノア「ご歓談中失礼致します」
ベー「!」
コーボ「うわびっくりした!! もー、毎回不意に現れないでくださいよ」
レノア「慣れていただければ幸いです。して、ベーグル様。そのご様子だと、大分回復されたようですね」
ベー「ああ。せっかく目的や目的地が明確になったのに、俺のせいですまねぇな」
レノア「いえ。私は全く問題ございません」
コンコン…
コーボ「あ、ハルトかな? どうぞ〜!!」
ガチャ
ヤマザキ ハルト「…勢揃いだな。…ベーグル、体調はどうだ?」
ベー「ああ。もうすっかり良いぜ。すまなかったな」
ハルト「…いや、回復したならそれでいい。…レノアさん、じゃぁ、オニガシマとやらに行くことにするか」
レノア「はい、そうで………!!」
レノアは右のこめかみ辺りをおさえる。
ハルト「? どうした?」
レノア「…………。……………。……………ハルト様」
ハルト「?」
レノア「……………勇者ミノキ シゲル様御一行が、セレンディピティ共和国にて、ある『試練中』のようです」
ハルト「!」
コーボ「試練??」
ベー「! ………」
レノア「はい。……私も今、念話にて他のボタニストから聞いたばかりなのですが………どうやら、以前私が皆様へお話した『派閥』の件と、関わりがあるようです」
ハルト「……どういうことだ?」
レノア「………。……………。……試練を課したのは、セレンディピティ共和国の首都『創作の都』の主、カリブ様……ではなく、カリブ様に『成りすました』神のようで、『狡知の神』ラキ様との事です」
ベー「!!ラキといやぁ、『いたずらの神』とも言われる、例の神か?」
レノア「どうやらそのようです。………。明確な意図は不明のようですが、勇者シゲル様御一行の、『チカラの覚醒』を促している模様です。同時に、ラキ様は『保守派』であり、勇者シゲル様御一行もその意向を『今のところは』汲んでいるとの事………」
コーボ「え……ええ??? なんかややこしくなってんね………」
ハルト「………それで、その情報が何で今、お前に流されてきてんだ?」
レノア「はい。どうやら、別の派閥の介入や、襲撃の恐れもあるようで………。ラキ様のおチカラ等を駆使し、一時的にこちらとあちらの『映像』と『会話』を共有したい、と希望されています」
ハルト「!」
コーボ「ぇえ……どゆこと??」プシュー
ベー「…俺もよくわかんねぇが、コッチ側も危険だという事か?」
レノア「はい。恐らくは…。………とうやら、あちらのお仲間のうち、残りの覚醒は1名のみのようで、それが終わり次第、彼等もオニガシマへ向かうそうです。その理由と、そもそも今、あちら側で何が起こっているのかを、共有し……場合によっては、こちら側の意見も賜りたい、との事です」
ハルト「……………」
コーボ「な、なんかあっちはあっちで大変そうだね………。だけどハルト、どうする? 仲違いはもうしてないけどさ、完全な味方ってわけでもないじゃん」
ベー「そうだよな。…情報交換は大事かもしれないが、ハルトは結局、あっちの勇者様よりもはやく…というか、なんとしても元の世界に戻りたいんだろ? …こういっちゃ何だが、そこまで馴れ馴れしくしても良いのか?」
ハルト「……………」
レノア「……………。………。………。…なるほど………ハルト様」
ハルト「……なんだ」
レノア「……あちら側は、躊躇いがあるようですが……敢えてお伝え致します」
ハルト「?」
レノア「………貴方様をこちらのセカイへ召喚した神が、今、勇者シゲル様御一行のもとにいるようです」




