第636毛 エルターズ・オリジナル.20 リッチ
……………
スカルプ「…ふぅ。まだまだ………」
工場長「スカルプくん」
ス「!! 工場長!!お疲れ様です!!」バッ
スカルプは即座に深いお辞儀をする。
工場長「ああ、お疲れ様。楽にしていいよ」
ス「はいっ!!ありがとうございます」シャキッ
工場長「………フッ」
ス「?」
工場長「スカルプくん。君は、とても熱心に仕事をしてくれるね。頼りにしている」
ス「! ありがとうございますっ!!」
工場長「ハハハ。……だが、ね」
ス「え?」
工場長「……もう少し、肩の力を抜いても良いんだよ」
ス「………と、いうと??」
工場長「君、同僚との付き合いは、殆どないだろう? いや、真摯に仕事をしてくれている事は、もちろん有り難いのだが、こう……羽根を伸ばすというか、『楽』になるよう振る舞うことはしないのかい?」
ス「……………工場長」
工場長「うん」
ス「……ボ…私にはふたつ、夢があります」
工場長「夢?」
ス「はい」
スカルプは、真っ直ぐに工場長を見ている
ようで
それよりも遠くを見ているかのように話し出す。
ス「…私は、親に捨てられました。…その後、『在る出会い』があり、教会の方々が保護をしてくれて、今の私があります」
工場長「…そうだったね」
ス「はい。身寄りのない私ですが、今は、周りの方々に支えられて、生きる事が出来ている。本当に、感謝しています。…そして、私は……愚かに聞こえるかもしれませんが……私と同じ境遇や、あるいはもっと…お辛い状況にある方々に、できる限り手を差し伸べたいと思っています」
工場長「……なるほど…」
ス「…色々な手段があるかと思いますが、私は……やっぱり、自分自身文字通り『余裕』がないと、十分な手助けというのはできないと考えます。そしてその『余裕』は、金銭的な部分もしかりです」
工場長「……………」
ス「決して『お金が全て』と言っている訳ではありません。 …ただ、手段があっても、行使できる『余力』が無ければ、意味がない。いくら気持ちで『助けたい』と思っていても、そのチカラが無ければ変わらない。ですから私は、自分のチカラのある限り、仕事をして、お金を稼ぎ、真の意味で『裕福』になりたいと思っています」
工場長「………そうか……そこまで……」
ス「生意気に聞こえるかと思いますが…」
工場長「いいや。立派な事だよ」
ス「!」
工場長「…何だかがむしゃらに、なりふり構わず仕事をしているように見えたから心配だったが、そうか……。自らの境遇を糧に、そこまで考えているのは、素晴らしい事だ。…君は、真の意味で『リッチ』になれる気がするな」
ス「リッチ??」
工場長「ああ。『裕福』『至福を肥やす』という意味らしいが、これは単に『私利私欲の富』を指すわけではないらしい。それこそ、君が言ったような『他者に手を差し伸べるための裕福さ』が、真の意味だと私は思うな」
ス「………リッチ……ですか………」




