第525毛 範疇
ウェーボ「……………」
エクステ「…お兄ちゃん?」
ウェーボは暫し考え込む。
………
ウェ「…エクステ。君は今、どう思っているんだい? 率直に聴かせてほしいな」
エ「!! ……私は…………」
エ「…スキルって、すごい便利なもので、授けられるのは光栄なことで、みんなより…ちょっと有利になるというか……自慢もできるものかなって…思ってた…」
ウェ「…うん」
エ「友達も、ああ、はやくスキル授かりたいな、って言ってて…やっぱり、スキルを授かるのは選ばれし者! なら、私も選ばれたいなって………。でも……」
ウェ「………」
エ「…お父さんは、『スキルが無くても活きていける』って、言ってた…。お父さんは、スキル…なんて…授かりたくない、って感じだった………。……でも、でも! お父さん、スキルのお陰で助かったんだよね?? スキルを授からなかったら、きっと……おじいちゃんも………」
ウェ「………その想いは、シンシュークさんに伝えたのかい?」
エ「……ううん…。言えなかったの……。お父さん…すごく…すごく……悲しそうな顔してたから…。私も、なんだか悲しくなっちゃって………」
ウェ「………そうか……」
ウェーボはエクステをしっかりと見つめる。
ウェ「…エクステ。君の想う事、もっともだね。確かに、その時、シンシュークさんのスキルが目覚めていなければ、どうなっていたかわからない」
エ「……………」
ウェ「ただね、エクステ。そもそもの話になっちゃって申し訳ないけど、多分、その襲撃者も『スキル』らしきものを持っていたよね?」
エ「え? …うん……」
ウェ「うん。それであれば……『その襲撃者がスキル(のようなもの)を駆使しなければ、お祖父様は襲撃者を退けた』んじゃないかな?」
エ「!!……ぁ………」
ウェ「もちろん、実際のところはわからないけど、シンシュークさんは今、非常に『重宝』されてる。ただしこれは、シンシュークさんの純粋な技量はもちろんだけど、『スキル』が貴重だから、という意味合いも、やっぱりあるんだよ」
エ「……………」
ウェ「エクステ」
エ「……うん」
ウェ「君が、スキルに対して抱く想いを、否定はしない。シンシュークさんも、君を気遣っての発言だと思う。その上で、覚えていてほしいのは、『スキルに自分がくっついているわけではない』と言う事だよ」
エ「……え??…」
ウェ「スキルはね、憧れであり、超常的なチカラだ。まるで『神にでもなったかのような』って、リーブの民は想うだろう。……でもね、『神になる』のが、良いことだって、誰が決めたのかな?」
エ「……お兄ちゃん…??」
ウェ「!!ごめん、ちょっと話が逸れちゃったね。つまり、スキルはどれも強力で、自分の理解の範疇を超える。だからこそ『スキルありきの私』になるヒトは、多いんだよ。…でも、実際は違うよね?」
エ「………」
ウェ「エクステ。君はこれから、スキルを授かるかもしれないし、授からないかもしれない。今だからこそ、覚えていてほしいな。シンシュークさんが言っているように、ボクらは『スキルがなくても活きていける』。…スキルに、踊らされないよう…スキルにのめり込まないように、するべきだね…」
エ「………お兄ちゃん……」
ウェーボの語りは
どこか
己自身にも言っているようだった。
 




