第48毛 エクストラダメージケア
???「あっ…」パリーン
酒場の厨房らしきところから、何かを割ったであろう音がする。
程なくして「またお前か!!まったく、言いたくないが、そろそろ『無能』呼びするぞ…」「すみません…すみません…」等の声が漏れてくる。
パ「あ〜あ、またやっちゃってるね」
シ「知り合いか?」
パ「う〜ん、顔なじみというか、この街では有名なんだよね。何をやっても上手くいかないみたいで、一部からは『無能』呼ばわりされてるんだよ」
シ「ほう」
ラ「性格は素直で明るく、いい方なのですが…」
パ「ちょっとかわいそうだよね〜」
シゲルはちらりと厨房を見る。
黒髪短髪の青年が、料理長らしき人物に何度も頭を下げている。
パ「まぁでもここの長は、そんな事情がわかっていても長く受け入れてるんだよね。ちょっとやそっとじゃ辞めさせられないと思うよ」
シ「そうか」
少し気になる事があったシゲルだったが、そのまま向き直りウイスキーっぽいモノを口に運んだ。
ウタゲが進み
アーデランス「むにゃむにゃ…勇者様…シゲルさまぁ〜…たくましいですわぁ〜…」
いつの間にか隣で泥酔していたアーデランス姫が、シゲルの左腕に絡みつきながら眠っている。
ラックスは家族の様子を見に行きます、と早めに家路につき、今はシゲルとパンテーン、そして酒に強い何名かの有象無象が飲み続けている。
寝息を立てているものも少なくない。
パ「シゲル、お酒強いね…。アタシと朝まで飲める人は初めてだよ」
シ「そうなのか」
パ「うん。あ〜アタシもアタマ痛くなってきたな〜…。このままじゃ抜け落ちてシゲルみたいになるかも〜」
シ「誰が抜け落ちてんだ」
そんな会話をしていると、ふいに音もなく、誰かが酒場へ入ってくる。
シゲルは気配で気がつくが、パンテーン含め、他のものは気づいていない。
ふと、その誰かが、杖らしきモノをかざして呟いた。
???「『エクストラダメージケア』」
パ「……ん〜??なんかアタマが楽になってきたかも……。って、あれ?」パンテーンは後ろを振り返る。
???「全くアナタは。相変わらず飲み過ぎですよ。ましてや、勇者様の前でしょう」
シ「パンテーン、この方はもしや」
パ「あ〜、うん。スキルでわかったと思うけど、この子がエッシェンシャルルだよ」
名前を呼ばれた彼女は、シゲルへと深くお辞儀をした。
エッシェンシャルル「お初にお目にかかります勇者様。エッシェンシャルルと申します」
※長くなりました。
これにて、第二部、第三部と続いた『彷徨う御魂と光る頭』完結です。
圧倒的幕間を挟み、第四部を開始致します。




