第453毛 道具
民1「なんかさぁ、最近、アーデランス姫、暗くない?」
民2「え、そうかな?」
民1「うん。いや、公の場に出る機会がなかなかないみたいだから、アタシの思い過ごしかも知れないんだけど。…なんか、笑顔に陰りがあるというか…」
民1「あ、それなら、多分アレじゃないかな? 姫様、『かなり危険なスキル』を授かったって噂だよ」
民2「え?」
民1「又聞きだから詳しくは分からないんだけど、何か…相手を卒倒させる事ができるとか…」
民2「ホント!? めちゃくちゃ危ないじゃない…」
民1「だよね……。だからさ、以前にも増して、他者へ近づけないようにしてるって、専らの噂なんだよ」
民2「へ〜知らなかった……。姫様、可哀想ではあるけど、その方が安全かもね…」
民1「…そうだね……」
…
シュク「何度も言っているでしょう!!あの子は、道具じゃないんです!!」
使用人1「…そ、それは重々承知しておりますが…」
シュク「承知してる? しているなら、謁見許可の伺いを立てる輩を門前払いできるでしょう!!まったく…」
ゴウ「シュクモ」
シュク「!!あなた…」
ゴウ「…すまない遅くなった。………また、か?」
シュク「………ええ。…どこから漏れたか分かりませんが…。あの子を『索敵』に使いたい、と…」
ゴウ「まったく、とんでもない話だ。先日は『子守り』にもそのスキルを使えないか、とか言われたな。夜泣きがなくなるんじゃないか、と」
シュク「言語道断です!! …あの子は『道具』じゃないのに…」
アーデランス「………父上……母上………」
ゴウ「!!」
シュク「!!アーデランス…アナタ…」
アー「……母上…私…皆様のお役に立てるのでしたら…」
シュク「アーデランス」
シュクモはアーデランスの両肩をそっと掴む。
シュク「アナタの授かったチカラは、アナタの為に使うの。確かに、『役に立てる』事はあるかも知れないけど、アナタだって危険や負担はあるのよ」
アー「………」
ゴウ「心配するな。色々な噂が出るのは世の常だ。お前は何も悪くないし、責任を感じる事もない。授かったのには、理由が必ずある。チカラを使う場や機会もな。今はまだ、その時ではないだけだ」
アー「……………はい………」




