第172毛 フェイタス
景色が変わる。
シ「…聞いてはいたが、まさに一瞬だな」
エ「転移がもたつくと『転移酔い』等の症状にも繋がるので、特に大規模ポタールは、精度が抜群です」
シ「なるほど」
エ「さぁ着きました。バンテリン共和国です」
ネイチャー王国とは異なり、工業都市のような印象をシゲルは受ける。
シ「王国は、私のセカイでいう『ヨーロッパ』のような、歴史的建造物が溢れる街に見えたが、こちらは、活気の具合が王国とは少し違うな」
エ「勇者様のおセカイでも、似た雰囲気の街や国があるのですね。確かに、バンテリン共和国はネイチャー王国とは趣が異なるかと」
パ「アタシはたまにしか来ないけど、こう、肉体派!!って感じの人が多いよ。シゲルや、ボールドさん、まぁラックスもそうか。そんなムキムキな人たちが、意外と繊細な仕事をしてたりするの」
シ「ほう」
街中を歩く一行。
シ「さて、ひとまず宿の確保…おや」
道の端々に、年端のいかない子どもたちが大きな荷物を抱え、立っている。中には、小さな露店のようなモノを営んでいる者もいた。
エ「勇者様、この通りは、孤児や、難民の方々が主に商売をされています」
シ「なるほど」
エ「基本的に、物心がつけば、商売を認めているのが、この国です。受け入れはするけど、自分の身は自分で何とかする、が、この国の方針でもあります。ただし、居住場所や医療は、様々な事情を鑑みて無償または格安で提供するなど、あくまで『生きていくためのサポート』は欠かさない国です」
シ「良い意味で、力がつくな」
エ「はい。この通りは別名「フェイタストリート」と呼ばれており、そんな、生活力を身に着けようと働く方々で成り立っているのです」
シ「ますますサポートがありそうな場所だな」