第12毛 声
シ「怪奇現象…か」
ラ「はい。失踪してからまもなく、家の中を誰かが歩くような音が聞こえはじめました。そして、いつしか声も」
シ「声?」
ラ「はい。途切れ途切れだったり、非常に小さい声のため、最初は気のせいかとも思ったのですが……どうも、使用人含め、かなりの人数が聴いているようで」
シ「内容は聴き取れたのか?」
ラ「俺含め、こうなんじゃないか、と思っているのは『もう一回』です」
シ「もう一回?」
ラ「はい…。なにを『もう一回』やりたいのか、わかりかねますが…ただ俺は、というか皆、やはり失踪したメトリーと関係があるのではと感じているのです」
シ「まぁタイミング的にもそうだろうな」
ラ「はい。先日、父も心労で倒れてしまい、いよいよ、メトリーが俺たちを恨んでいるんじゃ、という噂もたちまして」
シ「恨む理由は?」
ラ「無いように思えますよね。ただ、倒れる前、父が俺に言ったのですが、どうもメトリーには、想い人がいたようで」
シ「ほう」
ラ「父も、強引という訳では決してなかったようですが、やはり国でもそれなりの権力ある父のため、誘いを受けたら断れない、というのもあり」
シ「それで、恨んでいると??」
ラ「多少強引なこじつけの気もしますよね。でも、『もう一回』という声も、『もう一回やり直せたら』という意味だと考えると、腑に落ちるといいますか…」
シ「ふむ…」
パ「お話中ごめんね。そろそろ客間につくんじゃない、ラックス」
ラ「あ!すみません。では、続きは客間にて、お願い致します」
シ「承知した」




