第8話 恋患い・前編 ⑧
「あの、今さら気付いたんですけど……佐野嶋さんはどちらへ……?」
え!? とほぼ同時に声を上げたノブオとジュンジも、キョロキョロと辺りを見回す。
だが、どこにもサノッチの姿はない。
「サノッチ!! え、いや、さっきまで一緒にいたよな!? 車で話しかけたのは、確かに覚えているが……」
「はい、確かに車は一緒に乗ってて……え? サノッチ君、いつからいないの!?」
「おーい! サノッチ!! サノッチ!! どこだー!!」
ノブオは大声で名前を呼びながら、ホワイトハウスの外周を一回りした。
だが、応答はなく物音ひとつしないのだった。
半狂乱になりかけの二人に、見かねた真実子は提案する。
「もしかしたら、車に戻ったのかもしれません。私たちも一度、車のところへ戻ってみませんか?」
「あっ、そう、そうですね! 戻りましょう、ノブオさん!! ノブオさん、ほら!! 行きますよ!!」
サノッチ!! サノッチ!! と徘徊するノブオの両肩を無理やりおさえるようにして、ジュンジはノブオを連れ歩き出す。真実子はその後をついて歩いた。
「皆さん、お疲れ様です。真相がわかりましたよ」
落ち葉に埋もれかけた細い道に停めてある車の外で、ハンガーをL字に切ったような棒を両手に一本ずつ持つサノッチは、戻ってきた三人を迎えた。
「もう、サノッチ君! 僕ら、すんごい探したんだよ! 見てよ、この満身創痍なノブオさんを!!」
「よ、よかった! サノッチ、サノッチ……無事で……」
息も絶え絶えに、ノブオはその場に転がっている。
「そんなに心配してくださっていたなんて、申し訳ないことをしました……でも、嬉しい……」
まさか探されているとは思ってもみなかったサノッチは、喜びをかみしめる。
そんなことより、真実子は気になっていた。
「あの、真相がわかったって、おっしゃいましたよね? 何がわかったのですか?」
「あぁ、はい。一家の無理心中の真相ですよ。行方不明事件にも関連しています」
「え? 無理心中は本当にあったの!?」
転がるノブオを気にかけていたジュンジだったが、関心は一気にサノッチの言葉に向いた。