第19話 続・恋患い ③
「そういうことです。そして、太母に身体や意識を取られている長女は再び、自らの足であの穴へ戻り、一昨日までに至ったのです。
また、小林さんの高校時代のご友人はホワイトハウスへ近寄った際、太母に誘われ穴へ入ってしまったのでしょう。そうして彼女も、一昨日まであの穴で捕らわれていたということです」
うんうんと相槌を打ちながらペンを走らせていたジュンジは、ふうと一息ついて顔を上げる。
「これが心霊スポット、ホワイトハウスの真相か……それでサノッチ君が最初に言った、緑黒い人影が写真に写る謎については何もわからなかった、という結果になるんですね……どうなんですかね? 他にも心霊スポットは巡っていたみたいだし、他の心霊スポットに原因があるんですかね?」
「それはどうでしょうか。小林さんのお話ではホワイトハウスの他で、特に怖い思いはしていないようですし、原因は他にあるのかもしれません。何より、彼女の巡った心霊スポットを全て探し出し、確かめに行くというのは、もはや不可能です」
いつもピンと背筋を伸ばしているサノッチにはめずらしく、テーブルに片肘をつけると、頬杖をついた。
「そりゃそうだな。そうなると、俺たちに残された手段はあと一つだけだ」
ノブオはグビグビと栄養ドリンクを飲み干し、カンと音を立てて瓶を置いた。
「はぁ……そうですよね。それしかないし、これで上手くいけば、もう解決しちゃうかもしれないし……」
はぁと深いため息を吐いて、ジュンジはカフェオレの紙パックをチュッと吸う。
そして、ノブオとジュンジの視線は自然と、サノッチの分厚い前髪に集まった。
「……わかりました。マツさんに電話をかけましょう……はぁ……ジュンジさん、マツさんに小林さんからのメールを転送してください」
「了解です!」
早速ジュンジは移動すると、パソコンからマツにメールを送信した。
こうして、われわれ便利屋花丸キュウ微商会は、日ごろから懇意にしている超絶能力者マツ(東北地方在住・ものすごくお金持ちでケチ・謎の多い地味なおばあさん)に相談することを決めた。
ちなみに、マツは山で拾ってきた等身大人形に魂を入れ、この世にサノッチを生み出した人物である。
彼女の計り知れないその能力が恐ろしく、われわれ便利屋花丸キュウ微商会は懇意にしているのだが、なるべく懇意にしたくないのだった。