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背中越しの恋人  作者: 雨宮 瑞樹


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波乱4

 集まっていた学生たちの視線もさっと潮が引くように霧散していくのを見計らって、ひなは唯に今にも土下座しそうな勢いで謝り始めていた。


「唯、ごめんね! フミヤがあんな暴走するなんて思わなくて……」

「ううん、大丈夫。助けてくれてありがとう」

 ひなは、視線を落として首を振り「唯。ちょっと、こっちきて」と食堂の学生達から逃れるように校舎を出た。


 中庭のベンチに並んで座ると唯はひなに亮のことを謝ろうと口を開こうとした。けれど、それより早く「唯、この前の本当にごめん!」ひなが叫ぶようにいった。

「この前のことずっと謝ろうと思ってたんだけど、あんな酷いこと言っちゃった手前どんな顔して会えばいいのかわからなくなっちゃって……。唯はそんな人じゃないってわかってるのに。 

 前さ、宮川亮の熱愛スクープ出たでしょ? あの時、憧れの彼があんな胡散臭いキラキラアナウンサーなんかに引っかかったんだって、正直幻滅してたの。やっぱ、宮川亮もただの小さい人間だったなって。それが、蓋を開けてみたらそんなんじゃなくて、本当の相手は唯だったって……もう驚きで頭の中は大混乱。しかも、私の目の前に本人いるし、気が動転して何が何だかわからなくなっちゃって。気付いたら思ってもみなかったこと口走ってた……。本当にごめん!」

「ううん。私が悪かったのよ。嘘ついて……ひなには本当のことちゃんと言うべきだったのに。私こそ、ごめんね」

 唯がそういえば、ひなはブンブン首を振って言った。

「唯は当然のことしたまでで、唯は悪くない」

 神妙な面持ちだったひなの顔が、急ににやけ始める。そんな様子のひなに唯が首をかしげていると、ひなの瞳は恋する乙女に変わって頬を赤くし染めあげていた。

「それでね。時間が経って冷静になってみたら、益々彼素敵だって思えてきたの。あんな芸能界に首突っ込んだのに派手なモデルとかアナウンサーなんかじゃなくて、ずっと前から付き合ってる幼馴染を愛し続けるなんて! やっぱ、亮さん素敵。益々、彼の株が上がっちゃった! それに、よくよく考えてみたら……親友の恋人が彼だなんて、私めちゃくちゃラッキーじゃない?」

 そういえば、この前私どさくさに紛れて触っちゃったし……と呟くと、頭から湯気が本当に見えそうなほど真っ赤にさせて興奮冷めやらない様子で続けた。

「しかも、唯を介せばいつだって会えるってことよね? もう最高! 唯、絶対別れないでよ」

 唯は困り顔で乾いた笑みを浮かべると、忘れていた痛みが舞い戻ってきた。それを蹴散らしながら「善処します」と答えるのに精一杯だった。


「唯、このあと授業だっけ?」

「うん。一コマ出て、そのあとバイト」

 唯が答えると、ひなの顔の中心に皺が寄り始めていた。急にどうしたのだろうと思っていたら 

「唯、顔色悪いけど大丈夫?」

 突然そんなことを言われて驚きながら、唯は笑いながら答える。

「昨日レポート終わらなくて寝不足気味なのよ」

「授業終わったら、帰ったほうがいいんじゃない? 顔真っ白だよ」

 そういわれて、今朝鏡に映った酷い顔が蘇った。化粧でも誤魔化しきれないレベルになっているのだろうか。そんな不安を吹き飛ばすように、唯は明るく笑って見せた。

「それは目の下にクマができちゃってさ、ファンデーション塗りたくってきたからよ」

「そうなのかなぁ? だとしたら、その化粧失敗してるよ」

 容赦なくそう言われて、唯は苦笑するとひなは、スマホに目をやって「あ、もうバイト行かなきゃ。唯、またね。無理しないでよ」と元気に手を振って、小柄な背中を揺らして駆けていった。

 

 それを見送ってほうっと息を吐きながら、唯はベンチに背中を預けるとズキズキ頭に不快な痛みが駆け巡る。そこに、ふと昨晩のメモが蘇った。あれはフミヤの仕業だったのかもしれない。着信拒否をした私に腹立った挙げ句のあのメモならば、すべて辻褄が通る。

 フミヤは、ひなにあんなにこっぴどくやられたのだ。もう、あんな嫌がらせはきっとしないだろう。それに、犯人の正体さえわかれば何とかなるだろうし。ひなとも仲直りできたこともあり、そんな根拠のない楽観が唯にじわりと浸透していく。 そして、ほうっと息を吐くと、張っていた気が急激に抜けた反動なのか、朝より数倍の威力となった頭痛が舞い戻ってきた。

 痛い……だけど、この後は必須授業。痛みに耐えながら、授業を何とか凌いだころにちょうど亮から電話がかかってきて、スマホが震え始めていた。

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