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背中越しの恋人  作者: 雨宮 瑞樹


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波乱3

 余計なことを考えずレポートを終わらせた後に唯は泥のように眠った。だが、翌朝の寝覚めは最悪だった。体も疲れているけれど、何よりも内側が異様に重い。布団から這い出て、大学に行く準備を整えるために洗面所へ行くと、昨晩気持ち悪くてごみ箱に捨てたメモが目に入った。

『別れろ』

 角ばった文字の赤に、押されてぐっと胃が押されたようにキリキリ痛むし、頭痛までしてくる。顔を洗って、鏡に映った自分の顔。目の下にはクマもできているし、生気が全部どこかに取られてしまったかのようだった。自分でも驚くレベルだ。今日は入念に化粧しないと、見れたもんじゃない。ファンデーションを分厚く塗り込み、いつもより濃くしながら考える。あのメモは本当に私に対するものなのだろうか。集合ポストの番号違いということもありうるのではないだろうか。唯は、ともかくそう思うことにして身支度を整えて家を出た。

 途中で、スマホが震えて確認すると亮からだった。

 『明日休みがとれそうなんだけど、会える?』という内容。重たかった体が急に軽くなる。『大丈夫だよ』と送れば『じゃあ、後で電話するよ』という返信が来て、唯はの顔は自然と綻ぶ。そして、ふと考える。あのメモ。亮に言うべきかどうか。ただの間違いかもしれないし、まだ自分宛だという確証はないし、無用な心配はさせたくない。もう少し様子を見てからいえばいいか。そんなことを考えながら、唯は大学の講義室に入っていった。



大学の講義室。今日は本来ひなと同じ授業のはずだが、相変わらずひなは欠席のようだった。 本当にひなに何かあったのではないだろうか。漠然とした不安と時折襲う頭痛と闘いながら、何とか授業を終え、唯は食堂へと向かった。

 けれど結局固形物を喉に通せるほどの元気はなくコーンスープを買うことにした。

 賑わう食堂の片隅の二人席の空きを見つけて、紙コップに入ったスープを口にしようとしたら「唯ちゃん」という声に遮られた。ぎょっとしてスープを机の端に置いて、視線をあげてみると目の前には何故かフミヤが立っていた。


「久しぶり」

「……何でいるんですか。あなたはここの学生じゃありませんよね」

「着信拒否までされたからさ。これはもう乗り込むしかないと思ってね。ほら、この前の男みたいに」

 亮とは似ても似つかないのに、何を言い始めるのかと怒りが沸いてくる。噴き出してくる怒りと共に何とか胡麻化していた頭痛が更に酷くなって顔をしかめながら、唯は空かさず席を立とうと机に右手をつくとその上に、フミヤの手が重ねられて握ってくる。唯の手から悍ましさが全身を駆け巡る。

 力ずくで手を振りほどこうとしても、唯の手の色が変わるほどガッチリ捕まれて離すことは叶わなかった。

「離してください!」

 唯の声が食堂に響いた。学生達の視線が一挙にフミヤに矢を射られるように集まっていく。さすがのフミヤも渋々手を離したその隙に唯が立ち去ろうと机に置いてあった鞄を持ち上げようとしたが、フミヤはすかさず掴んでくる。唯は堪らずそれを振り払おうとしたら、いつからそこにいたのか。ひなが先にフミヤの手を弾いていた。


「フミヤ、何で来てるのよ! 唯に迷惑かけないでって言ったわよね?」

「だって、あまりにつれない態度を唯ちゃんにされるからさ」

「そんなことするんだったら、いくら友達といえど警察に突き出すわよ」

「お前が唯ちゃん紹介してくれたんだろ?」

「それは、あんたが迷惑かけないっていう前提の話だったでしょ? 断られたら絶対に諦めてねって言ってあったじゃない!」

 ひなの声か周りの壁に跳ね返り数倍の威力となって、フミヤの耳を突き刺したようだった。フミヤは喉仏をごくりと鳴らすと、思いどおりにならなかった鬱憤を吐き捨てるように「うっせぇな!」と叫び、不機嫌な足音をおしげもなく撒き散らしながらフミヤは食堂から出ていった。



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