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007 シャータまでの旅路

マルルクとの再会を喜ぶまもなく、一行はキルーティへと旅立った。


護衛のフォーメーションは、先頭馬車と後続の馬車とで3名ずつ。

先頭馬車は商隊のほとんどとなる4名が乗車する一般的な馬車、後続は荷馬車となっており、そこに冒険者も同乗する形になっている。

先頭は人でいっぱい、後続は荷物でいっぱいだ。


俺は荷馬車の後方に配置された。後ろからの強襲奇襲を防げるかは俺にかかっていると言っても過言ではない。


相棒は射程は短めだが取り回しのいい弓矢一式と、両刃の片手剣だ。防具は鋼鉄製の胸当てと左腕に貼り付けた小さめのシールド、あとは革鎧。この3年間で少しずつ買い集めたものだ。けっして高いものではないが持ちのいいもので揃えている。


魔法は補助程度のため杖は用いないが、ちょっとだけ魔法の威力や正確性を上げる宝石の組み込まれた腕輪を両手に一つずつつけている。

魔法使いは杖がなくてはいけない、というわけではない。もちろん、威力など補正はかかるから本職なら杖は重要な相棒となる。


また、俺はソロのためオールラウンダーとして振る舞えるようにこのような装備となった。

ただ、このスタイルは一つ間違うと方向性がわからない人みたいになるので注意が必要だ。


道中は知り合いだからと後続馬車に回されたマルルクとともに談笑しながら過ごしていた。




「リョウカもついにシルバーランクになったんだね、おめでとう。今度お祝いしなくっちゃね」


「ありがとさん。でもマルルクはいつシルバーランクになったんだ?半年前くらいに会った時はまだアイアンだったよな」



国外(連合国の場合は登録した国となる)に出るのは主要5ギルドならシルバーランク以上、あとは貴族様達だけになる。


残念ながら平民は基本的に移動の自由はまだない……外に出たければ何かしらで功績作れってことになってる。

まぁ、ランクさえ上げれば移動できると考えればけっこう良い方なのかもしれないな。



マルルクは俺に近寄り小声で、


「これは広めないで欲しいんだけど、僕、実を言うとまだアイアンなんだよね」


「ならどうやって…?」


「今回の商いで昇級要件を満たすから、実質的にはもうシルバーランクになるんだし、今回の商品を仕入れるきっかけも僕だったからいいだろうと子爵ーー商隊長が口添えしてくださったんだ」


マルルクは嬉しそうに話してくれた。

同い年で昇級レベルの良い商品を仕入れて販売するまで携わるなんてすごいな。


「そうだったのか!なら成功できるようにますますちゃんと護衛任務しないとだな」


「ふふ、よろしくね。ところで進行方向と逆を向いたままだと気持ち悪くならない?大丈夫?」


「特には体調が悪いとかはないかな。むしろ景色が一望できて楽しい。もちろん気は抜いてないけど」


「なら良かった。酔い止めとか簡単な薬ならあるからいつでも言ってね。あ、アッシェルトさんとダンテさんもいつでもおっしゃってくださいね」


マルルクは腰につけているポシェットを叩く。随分と小さめだから薬用で持って来たのだろうか。


「マルルクが持ってるそのポシェット、いいな。どこの店で売っているんだ?」


「お目が高いねリョウカ。これも今回売り込みに行く商品の一つなんだよ。今は詳しくは言えないんだけど」


マルルクは自慢げに胸を張った。


「そっか。じゃあ販売したら教えてよ」


「それはもちろん」


その後の道中は時たま鳥系の魔獣がちょっかいを出してきたがダンテさんの力を借りながら無事にやり過ごした。





そして、順調に旅路は進み、護衛依頼開始から4日目の昼前にはキルーティ商業国の国境を越えた。


「おぉ!これがキルーティか!」


キルーティは国境こそ石壁に囲まれているものの、その中についてはほとんどが解放された都市だ。


忙しなく往来する馬車に合わせて国道が走っており、今俺たちが進んでいる道も4車線通っている他、に駐車用のスペースが左右の脇にあり、とても広い。


基本的には石造の街だが商店が多く立ち並び、看板や暖簾などが多くあるなどカラフルで活気のある様子だ。


「こんなに店があるなんてすごいな。帰りに寄っていこう」


財布の中身は万全だ。




その後も誰かに襲われたり、交通事故に遭ったりはなく、夕方ごろに無事シャータにたどり着いた。

商隊に指示された魔法道具市場の一角まで行き、俺たちの護衛は終了となる。


「ふぅ〜、終わった〜」


はじめての長距離護衛依頼だったが失敗しなくて良かった。


「リョウカ、お疲れ様。馬車での長期間の護衛について、良い経験になったでしょう」


先ほどまで子爵と依頼達成書類の処理をしていたマリィさんがこちらに来ていた。


「はい。今回は4日でしたが、自分だけならまだしも非戦闘員やその荷物にまで注意をし続けるというのはなかなか消耗しますね」


「それがわかったなら成長した証よ。今後は注意力の必要なところ、抜くところを上手く切り替えるようにできるといいわね」


「はい!」


「実はカムヒャット子爵から、良かったら追加依頼を受けないかと打診を受けているのよ。リョウカは興味あるかしら」


「どういった内容なんですか?」


「カムヒャット子爵一行の出す魔法道具市の出店の開店準備とその次の日の護衛兼店番ね。報酬は少なめだけど追加で今夜含めて2日の宿代とその手配をしてくださるということだけど」


「宿を手配してもらえるなら俺は受けようかと思います。子爵の手配してくださるならまともな宿でしょうし、土地勘がないので店番しながら周辺の話とかきこうかなと。【銀の牙】はどうするんですか?」


「私たちは準備だけ手伝って今夜だけ宿の斡旋を頼む形で交渉したわ。明日以降は私たち、中央に行くから」


「中央だと、オークションが行われたりする場所ですよね」


「ふふ、オークションも冷やかしに行く予定よ。他にも、有名どころの武具屋や道具屋に行って、良いのがあれば買おうと思っているのよ」


「そうなんですね。有名どころの装備かぁ、憧れます」


冒険者には、常にいい装備にしたいと言う欲求がある。例外はない。


「リョウカも立派な冒険者ね。感慨深いわ……あ、子爵に伝えて来なくっちゃね、また後で話しましょう?」


悪戯にウインクをしたマリィさんは俺の心臓をドキドキさせつつ優雅に子爵の元に向かった。

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