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005 ギルドランクと越国許可証

ざっくり時間が飛びます

孤児院からの卒業、ノリのいい冒険者たちがいるギルドへの加入。

転生し、俺は少しずつではあるが確実に目標へと前進していた。


ギルド加入から3年後、つまり15歳の成人を迎える年。

俺は、越国許可を入手するまでに成長していた。


ここまでの道のりについては話したいことがたくさんあるが割愛させてもらう。

もし、機会があったら語ることにしよう。




「なぁにしけた顔してんだよ、坊主。シルバーランクをもらったからには冴えない顔は捨て去って、自信を持つことだな、ガハハ!」


バンバンと決して軽くはない力で俺の背中を叩いて激励しているのはギルドに入って最初に話しかけてきた強面の冒険者ギルデルドさんだった。

彼には事あるごとに飲みに誘われたが、それ以上に冒険者としてのアドバイスや武器を持った戦い方の稽古をしてもらった。


「そうですよね、ギルデルドさん。俺、もっとふてぶてしくなります!」


「アンタはそのままでいいんだよ、そのデカブツの言うことなんて気にするなよ。ヒック」


次に話しかけてきたのは俺の魔法の師匠となってくれたミリアさん。

今日も小さな身長なのにぼんきゅぼんのわがままボディをしている美人さんだ。

でも何故だろう、彼女を見ると冷静になる。

きっと生活能力がないダメ人間であるのがいけない。酒に酔ってまただらしのない格好をしている。

機嫌が悪くなっても嫌なので俺はそっと空になった彼女のジョッキにエールを注いであげた。


「いやぁリョウカくん、相変わらずたかられてるね。君が初めてギルドに来た時のこと思い出すよ」


いつの間にか隣に来ていたのは指導係をしてくれたシャーウッドさん。


「今日は非番じゃないですよね?飲んでていいんですか?」


「いいのいいの、だって私の教え子がシルバーランクになったんだもの。これは祝わないとね」


シャーウッドさんは品よくワインを飲んでいた。でも減り方が尋常じゃない。もう3本は空けてる。

相変わらずザルのようだった。


「3年でシルバーって言うのはほんとにすごいことなんだよ。それに年齢にしたってそう、ちゃんと調べてないけど最速に近いんじゃないかな」



シルバーランク。

それは、一人前とされるギルドランクである。

このランクになるとギルドカードが近隣諸国への移動許可証の役目を持つようになる。いわばパスポートだ。


旅行を目的としていた俺は、ギルドに入ってからの3年間、このランクを目指して過ごしてきた。


おもむろに自身のギルドカードを眺める。本物の銀でコーティングされており、ピカピカとしている。



【冒険者ギルド 所属証明書】

ランク:シルバーランク

氏名:リョウカ

年齢:15

出身:サルマリア連合王国 パルタ 王都教会付属孤児院

実績:413/425件

備考:(幸運プチ)



ランク制度は以下のようになっている。ちなみに、冒険者ギルドだけでなく他の主要なギルドでも同じランク分けとなっている。



▶︎(ストーン)…初期のランク。誰もがこのランクから始まる。

▶︎(カッパー)…駆け出し冒険者。一定期間のうちに規定の数の案件をこなすと貰える。

▶︎(アイアン)…普通ランク。兼業の人や安全な案件ばかりをこなすなら大体ここ止まり。

▶︎(シルバー)…一人前とされるランク。冒険者として信頼されるのはこのランクからが多い。

▶︎(ゴールド)…いわゆる高ランク、凄腕のランク。田舎にはいないことも多い。

白金(プラチナ)…限られた人にのみ与えられる特別なランク。



人数の分布的にはストーンからアイアンまでが緩やかにあがっていって、シルバーからガクッと下がる感じだ。


これは、冒険者と一口に言っても誰もが冒険やら危険やらを求めているわけではなく、妻子のための金稼ぎをしていたいという人が多いためである。

ようはシルバーランク以上は古き良き無謀者ばかりになるということだ。


とは言え、冒険者ギルドは少しずつ安全安心なギルドを目指して頑張っているのだ。

アイアン以下の堅実に暮らしたい人たち向けに、各拠点で講習を開いたり、簡単な算数や読み書きを教えたり、はてはマナー講座までやっている。


その甲斐あってかかつてカーティの言っていた不名誉なランキングのうち、3年以内離職率5ギルド中ワーストワンはそのままだが、1年以内怪我率は半数にまで低減、1年間の死亡者数も大幅に減少してついにランキング争いに復帰した。



「ランクが上がったのは俺だけじゃなくって、ギルデルドさんやミリア師匠と言った冒険者の諸先輩によるところが大きいですよ」


「ふふ、アタシ様のことをきちんと評価できているのは感心だ。もっと献身して」


「はい師匠、もう一杯」


俺は空になったジョッキに再度エールを注いだ。

ミリア師匠は鷹揚に頷いた。


「ったくミリア嬢は相変わらずだな」


ギルデルドさんは軽くミリア師匠に引いていた。

彼と師匠は同じゴールドランクの凄腕冒険者だが、貫禄には大きな差がある。


「それはさておき、坊主。シルバーランクになったがどこ行きてえとかもう決まってんのか?遠出してえってんでランク上げてただろ」


「それなんですけど、実はまだ決まっていなくて……」


「ガハハッ!坊主でも抜けてんこともあるんだな。まぁ特に決まってないならまずは国ん中を回ってみるのがいいんじゃないか?坊主は王都付近は移動したことがあっても国の端とか行ったことないだろ?」


「国内旅行か……」


俺のいるサルマリア連合王国は4つの国々により構成されている。



サルマリア王国:鉱石山を多く持ち、連合王国に跨る大国家


アルセルランタ公国:南西に位置し、穏やかな気候と豊かな海産物が特産


ケイタム諸国:国南東にある活火山を囲むように獣人や移民など多種族が住む多民族国家


キルーティ商業国:3カ国の間にあり、連合国内の流通を司る商業地帯


各国の位置としては、横長の長方形をまず想像して欲しい。


長方形の上半分がサルマリアだ。

そしてその下半分を三分割した時、左からアルセルランタ、キルーティ、ケイタムとなる。

3カ国の下には海が広がっており、南側に行くにつれて気候的にはいわゆる温暖湿潤気候になっていく。


これらサルマリア連合王国は大陸の南側に位置しているため、北にはまた多くの国や地域があるらしい。もっとも寒すぎて人間には厳しい土地のため、基本的には亜人国家とのことだ。


南にはまた別の大陸がいくつか広がっている。


世界は広い。広すぎる。



「国内って言っても、けっこう特徴の違う地域ばかりで迷います。これまで行ったことがないから決め方がいまいちわからないんですよね」


俺の最後の旅行は前世の修学旅行……もう旅行先の決め方なんて……いや、だからこそ旅行するんだ。行き先はわからないけど。


悩む俺の前に一枚の依頼書を渡してきたシャーウッドさんは、


「そんなリョウカくんにちょうどいい依頼があるよ。ちょっとした護衛依頼があるんだ」

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