第七話「秘密」
第七話「秘密」
私は二人と別れ、藤堂の待つ駐車場へと向かった。
「お帰りなさいませ。雪乃様。」
「車を出してちょうだい。」
「かしこまりました。」
道中で蒼龍と神崎が楽しそうに話ながら帰っているところを発見した。
「如何しましたか?」
「何でもないわ。」
《確かあの二人は中学も同じだったのよね。彼を幸せに出来るのは私ではないのかもしれないわね。》
「雪乃様つかぬ事を伺いますが蒼龍という人と何か関係があったのですか?」
「どうして関係があると思ったのかしら?」
「昔見た事のある顔立ちだったのでもしやと思っただけの事です。」
「そう。藤堂少し相談にのってくれないかしら?」
「かしこまりました。」
一方蒼龍たちはネットカフェに寄った。
「とりあえずハムハムを調べよう。」
「そうね。」
二人は検索をするがハムスターの動画や写真ばかり出てきてハムハムを知ることは出来なかった。
「ところで蒼龍君はその力どう使うの?」
「俺は君たちを守るために使おうと思う。」
「守ってくれるんだ。私たちを。」
「あぁ。」
「その後は?」
「その後?」
「地球を救った後だよ。何に使うの?」
「この能力とおさらばしたいな。」
「そうなんだ。もしもあの時先生が変なジュースを渡さなかったら本当はどんな能力が欲しかったの?」
「自然を操る能力だな。」
蒼龍は満面の笑みで答えた。
「どうして?」
神崎は首を傾げた。
「俺はその力で自然が豊かになるなら、自然豊かな地球にしようと思った。」
「例へば?」
「そうだな。まずはアフリカに行って綺麗な水を飲ましたり砂漠を草木が生い茂る野原に変えたいな。」
「全部するの?」
「俺はその手助けをするだけさ。」
「なんで?全部したらありがとうっていっぱい言われるよ。」
「それも考えたんだがそれは無理だな。」
「どうして?」
「いい例として蜀の人材難が当てはまるな。」
「そうなの?」
「蜀は諸葛亮の死後頼れるのは数少なくなっくなってきた。蜀といえば誰を思い浮かべる?」
「関羽とか趙雲とか諸葛亮かな。」
「だろ。関羽と趙雲が死んだ後頼りにしていたのは魏延や馬岱たちだろ。」
「うん。」
「諸葛亮の死後は費禕や蒋琬らが政治を行っただろ。」
「うん。」
「今挙げた人達以外にも優秀な人材はいた。でも諸葛亮や関羽を超える人材はいなかった。」
「だね。」
「つまり、俺が言いたいことは俺が生きているうちは豊かだろうが俺が死んだらその後が問題だらけになるから全部は手伝わないんだ。ま、俺の能力は龍を作るか過去や未来を見ることだから無理な話だがな。」
「ねぇ、その私が・・・・・・。」
「どうした?」
「なんでもない。そろそろ出よっか。」
「そうだな。」
二人は部屋を出た。
「とりあえずハムハム対策はこちらで練ってみる。」
「私はハムハムについてもう少し調べようと思う。」
二人はお互いにレインを交換した。
「じゃ、また明日。」
「うん。また明日。」
私は笑顔で元気いっぱいに手を振った。蒼龍君の背中が大きく見えた。
《私は言えなかった。むしろ言ってはいけない気がした。私だけを守ってなんて我儘にも程がある。いつから私こんな強欲になったんだろう。最初はただの好意だったのに。この気持ちは私だけの秘密にしよう。》
神崎は家に帰るとハムハムについて調べたがやはり載ってなかった。
「彩。何を調べてるんだい?」
お父さんが私のパソコンを覗いた。
「ほうハムスターか。彩はハムスターが欲しいのか?」
「私は眺めてるだけでいい。」
「どうしてだい?」
「だって私に命を扱う資格は無いもの。」
「彩は優しいな。」
《優しい。それは私にとって一番相応しくない言葉。私は優しくなんかない。》
「そうだ!彩は音楽は好きかい?」
「まぁ。」
「彩と同じ高校生が歌ってる曲なんだが聞いてみるか?」
私は気分を晴らそうと思い聞いてみた。
《これって私の一番好きな曲だ。え?蒼龍君の歌声が聞こえる。この歌声は一度だけ聞いたことがある。私の好きな人が歌う一番好きな曲。》
神崎の目から雫が一つ床に落ちた。
第七話「秘密」~完~