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刀匠、成人する

たいっへん遅くなりました・・・

ここから2章突入です!

 対抗戦に魔族が現れたあの事件は『魔族襲撃事件』として語りぐさになっていた。

 あれから約2年。


 この2年の間、いろいろなことがあった。

 いろいろあったし、むしろ起こるはずだったことが起こらなかったこともあった。

 まず、魔法の袋。

 これは製品化するめどは立ったが製法は公開するべきではないと陛下の判断により中止。

 その代わり、国家事業として国内に流通させることとなった。

 しかし、その製法が特殊だったり今までが余りにも高額だったこともあり、急激に流通させるべきではないことも事実。

 その為、まずは主要貴族や領主に大容量のものを俸禄と共に渡し、反応を見ることに。

 結果的には比較的いい反応を受けたところがほとんどだったが、一部ではそれを解析しようとする動きもあった。

 そうなることは国としても俺としても予想通りだったので好きにさせている。

 実際、模倣品を作ろうとして失敗していると言うことも、報告が上がっている。

 技術力を身につけようとするのは良いことだと俺は思っているが、陛下の思惑はそれだけではなかったらしい。

 その辺はそのうち語ることになるだろう。

 その他にもいろいろあったが、その辺もいずれ語ることになるだろう。

 とりあえず俺が成人するタイミングで商業ギルドに定期的に卸すことで話は最終的にまとまった。


 これらを除けば、基本的に俺たちの日常にこれといって大きな変化はなかった。

 というのも、俺たちは学生である前に成人前の生徒である。

 それもあり、学長であるミネルヴァをはじめ、教師陣からまずは学業を優先するよう厳命されていたのもある。

 もちろん、生活のために行っていた冒険者としての仕事も変わらずしっかりこなしている。

 ハグれの出現はあれ以降鳴りを潜め、滅多なことがなければ現れるようなこともなかった。

 それが本来普通なのであるが、俺が王都に向かう前後から魔族襲撃事件までが異常だったのだ。

 短期間で俺が関わっただけで3度、それ以外でも実は5度ハグれの報告があったらしい。

 あの事件以降はハグれの報告はなく、穏やかな日々が続いていた。

 正直、生活費の為という当初の目的は俺の叙爵に伴い俸禄が与えられたこともありもはや必要ないに等しい状況だったが、それでも鍛冶の素材集めや、陛下から頼まれた魔剣の修復に必要な素材を集めるという意味でも冒険者活動は重要な意味を持っている。

 とは言ってもこの2年で魔剣修復の目処がたったかというとまだまだなわけで。

 ケルビム曰く、成人するまでは位階が上がらず、スキルの成長も一部制限されているわけで。

 とにかくまずは基礎の徹底、というわけでトレーニングに量産武具の作成、しまいには鎧や軽鎧、革細工とか今までやった事ない技術にまで挑戦しちゃったわけで・・・

 まぁそれもいい経験になったと思ってるんだが、それはまた別の機会に。


そして俺たちは寄宿学校の3年次まで進級し、明日は成人の儀当日。


「なんというか、全く実感がない。」


 いつものように作業場で火を起こしながらそんなことを嘯くと、後ろからに深いため息が聞こえてきた。


「アルバス様、さすがにそろそろ実感して頂かないと。貴方も、私達も明日で成人。しかも貴方は父上が以前仰ったように成人の儀を終えたあと、子爵に陞爵するのですよ。立派な貴族家となるのです。」


 ここ最近俺が作業してるといつも付き従うようになったセインだが、あいつは多分うちの家族の中でいちばん成長著しいんじゃないだろうか。

 背丈は俺より少し高く、さすがに陛下の息子ということもあり切れ長の目元がそっくりだ。

 元々槍が得意だったがここ1年くらいで雷魔法を習得する努力家だ。


「それはまぁわかってるんだけどなぁ・・・。」

「いや、アルはまだその辺ちゃんと理解してないっしょ。

まぁかく言うオレっちも全くもってなんだけどさ。」


 今日は珍しくオレインも鍛冶場にやってきていた訳だが、訓練はいいのだろうか?

 ここ最近オレインは双剣術の特訓に励んでいて、有り余る魔力を身体強化に回して毎日庭で剣を振り回している。

 ・・・2年前からあまりやってる事が変わっていない気もするな。そりゃ実感わかないわな。


「・・・明日、聖堂に伺えば自ずと実感は湧くさ。それより、2人は明日の服、確認今からだろ?こんなところで煤けてたらアミナが怒るんじゃないか?」

「・・・それもそうですね。オレイン、行くぞ。」

「へーい。んじゃアル、また後でな。」


 ヒラヒラと手を振りながら立ち去るオレインと腰を綺麗に折って出ていく律儀なセイン。

 ほんと、真逆なふたりである。

 ちなみにアミナとは服飾系技師で、最近よく世話になっている服飾店の店員だ。

 ジェシカとアニータのドレスをここ最近何度も新調している為もはや顔なじみというか、お抱えみたいになっている。

 新調する理由は色々あるが、まぁ成長期、とだけ言っておこう。


「さて、今日もやりますか。」

『相変わらず毎日毎日よくやりますねぇ主様。』

「ケル、ほんと唐突だよね、君。」


 智天の書庫に宿る智天使ケルビム。

 既に2年の付き合いだと言うのに出てくるタイミングはいつも唐突だ。

 そういえば声しか聞いたことがないからあれだが、天使にも男女ってあるのかね。

 神様は女神と男神って一応分別あるみたいだけど。


『なんかだいぶ失礼なこと考えてますね・・・。ちゃんと性別はありますよー?こんな私の美声を聞いておいてどっちか分からないというのですか、主様。』

「いや、まぁ、なんとなく女性っぽいとは理解してるつもりだけどさ。その辺って正直曖昧じゃん。」


 さしてどっちでも支障はないというか別に問題になる訳でもないしね。


『ま、その辺は確かにそうですけどね。しかしまぁ、いつの間にそんなに効率上がったんです?驚きなんですけど。』


 頭に響くケルビムの声は呆れとも関心とも取れる声色だった。

 もともと詠唱は不要だったが、しばらく前から『粉砕(ブレイク)』などの下級魔法系統は単語での呪文指定も不要になり、以前よりも効率は上がったのは確かだ。

 成人するまでスキル取得や急激なステータス上昇がしないように制限が掛かっているらしいが、正直実感は全くわかない。

 というのも、それ以前にスキルを取得したときも、ステータスに変化があったときも、自分のステータスを確認するまでは特に異変は感じたことがなかった。

 前に宝刀を鑑定したときに解析出来ず、頭痛が走ったときや、ケルビムから伝えられた自分が使ったことがない技能名を口にしたときに走った頭痛ぐらいじゃないだろうか。

 ・・・まぁそれ以前に、寄宿学校に入学した直後から考えるとゆっくりと今のスキルと向き合う時間が取れて、新しいスキルを身につけたり余計な調べ物をする予定もなかったからだろうか。

 

『ちなみに主様、最近ステータスって確認しました?』

「いや、正直最後に確認したのは去年2年に進級する前くらい、かな。」


 そもそもそのときも特に大きな変化はなかった。

 というのも、冒険者としての仕事でも、なんだかんだセインやジェシカ、オレインが前衛でどんどん切り込んでいくものだから、自分のレベル上げはしていなかった。

 実際、そのときのステータスは対抗戦前とは大きく変わっていなかった。


『それでしたら、明日の儀式後に確認してみてくださいね。第一位階に上がると同時にいろいろと変わると思いますので。』

「あー、そういえばそんなこともいってたね。」


 スキルが再構成されたときにいっていた制限か。

 制限が解除されて、変化が起こるのは気になるが、余りにも急激に変わるのは勘弁して欲しいな。

 鍛冶術に関連するスキルをやっと把握できたところだからな。これに関わる余計なスキルが増えるのは正直今は好ましくはないんだよな。


『・・・それにしても主様器用ですね。』

「ん?なにが?」

『私の話聞きながら、加工してますよね?しかも既に片手剣一振り出来上がりそうですし。』


 ・・・そうでも無いと思うんだけどな。

 そんなことを考えながら、片手剣の仕上げをする。

 スキルをフルで使ってるわけではないから、一般的な鍛冶術での製造よりも遅い方だとは思うが、まぁ確かに会話したり考え事したりしながら作っている割には速いのかな?


『いやいや、そういう問題じゃないんですがね・・・まぁ、今更ですけども。』

「それで、ケルはそれだけ良いに来た?他に用事あったんじゃない?」

『察しが良いですね。その通りです。明日の成人の儀式後、神託が下ります。まぁ前々から言ってるので今更かもしれませんけど、それでも大事なことなので一応。』

「そういえば、言ってたね。」


刃を研ぎ、仕上げを行いながら返事をするが、以前言われたときから思っていたことがあるのでこの機会に聞いてみることにする。


「けどさ、前から思ってるんだけど、俺がこの世界に転生したのは救世主になるためとかじゃないぞ?神託を受けてもそれに応じないっていうことも出来るわけだろ?」


そもそも女神アルセナスの手でこの世界に転生を果たすことが出来たのは確かだが、そのときに自由に暮らして良いと言われていたはず。

これで救世主だの勇者だのになれと強制されたところで、全く持て受ける気はない。

自分の生活が脅かされるとかだったら多少協力することは吝かではないが、それでも率先して前線で剣を振るうのは自分が目指す物とは違う物である。


『その辺りはアルセナス様も望んでいないようです。それ以上のことは今この場で私の口からは申し上げられないので、悪しからず。』

「ま、そうだろうな。俺もそこまでの答えは望んでいないけど、ねっ。」


握りの調整を行い、完成。

片手間で作ったにしては上等な出来に仕上った片手剣。


『またそんな、一般に出回らせてはいけなさそうな物を作って・・・。』

「そんなわけないだろ。鑑定っと。」


————— ————— ————— ————— —————


種類:ロングソード

銘:

品質:A+

切れ味:A

耐久値:250+100/250+100

付与:鋭利化、武器破壊、硬質化

説明:アルバス=セルタニスが仕上げたロングソード。魔鉄を使ったことで更に頑強に仕上った。


————— ————— ————— ————— —————


「あー・・・俺、魔鉄使ったのか。これは封印だな。」

『材料の確認ぐらいちゃんとしてくださいよ、全く・・・。』


適当に取り出して使ったために普通の鉄を使ったはずが作り置きしておいた魔鉄を使ってしまったようだ。

それでもまだ試作品の()()を使っていないだけマシではあるのだが。


『とりあえず、何にしても明日、必ず確認してくださいね?』

「ん?ああ、ステータスの件な。わかったわかった。」

『必ずですよ?でわ、私はこれで。』


それだけ言い残すとケルビムの声は聞こえなくなる。

スキルを経由しているとは言え、未だに原理が全くわからない。

ただ、何となくだが最近は気配を感じることが出来る気がする。


「ま、そんなことどうでも良いか。俺も準備に行くか。」


鍛冶場の片付けを済ませ、仕上げた剣を収納魔法で仕舞うと部屋を後にする。

明日の儀式の後、登城し陛下から新たに子爵へ陞爵賜る。

その為に着る儀礼用のスーツを受け取るため、セインたちが向かったアミナの元へ行くことに。

それとは別件で注文していた物の確認で他の店にも立ち寄ることになるがそれは別のお話。




翌日、成人の儀当日。

アルバスたちはミネルヴァが準備した馬車に乗り王都中心部にそびえる大聖堂へ向かっていた。

女神アルセナスを祀ったこの国主教『アルセナス教』の教会である。

大聖堂には既に今年成人を迎える人々が多数集まっており、儀式が執り行われることを心待ちにしていた。


「ここまで大勢居ると、圧巻だな。」

「それでも今年は少ない方ですわ。」

「なんでも人数が多いから、各都市に戻って成人の儀に参加することにした人が多いみたい。」


アルバス何気ない一言に、ジェシカとアニータが答えた。

2人はそれぞれ水色とオレンジのドレスに身を包んでいる。

成人の儀より、この後に行われるアルバスの陞爵の儀式に向けた服装である。


「今年は貴族の子弟が多く、商家の子弟はそれぞれの本家が居る都市に戻っているそうです。」

「ま、俺っちもアニータも戻るべきかって話だったけど、むしろ実家からそのまま王都に居ろって言われたっけな。」


セインとオレインもまた儀礼用のスーツに身を包み、ジェシカたちの後ろに付き従っている。

ちなみにアルバスも同じく儀礼用のスーツだが、2人は黒に対しアルバスは白銀。


「・・・俺も2人と同じ黒の方がよかったんだがな。」

「アルバス様、流石に貴族家当主ともある方が、従者と同じ物をお召しになるわけにも参りません。」

「そうそう。旦那様はもっと偉ぶってないといけませんよ?」

「オレイン、お前やけに楽しそうだな。」


ニヤニヤしながら煽ってくるオレインに若干の苦笑いを返しつつ、成人の儀が執り行われるのを待つ。

しばらくすると奥から司祭らしき人が数人現れる。

その後に続くように純白の修道服に身を包んだ女性が現れ、祭壇の前に立つ。


「皆様、大変お待たせしました。これより、成人の儀を執り行います。」


女性が声を上げたと同時に、聖堂の中はしんっと静まりかえる。


「私は大司教、アルミナ=リヒトシュタイン。今年の儀は私が執り行います。」


アルミナが手に持った聖典を開き、祝詞を唱える。

空間が清廉とした空気に包まれ、清められていくことが感じられる。

次第に聖堂全体に薄らと白光が広がっていく。


「(あ、この感覚、懐かしいな。)」


アルバスが感じたのは祝福の儀を受けた際に感じた物と同質の力。

この世界に転生する前の神界と同じ清廉な力の流れ。

祝福の儀を終えた後初めてステータスを確認した際、ステータスに女神からのメッセージが残されていたのを思い出し、今回も同じ感じだろうなと、直感が伝えていた。

だが、それよりも今回の方が力を強く感じている。

これは、なにやら嫌な予感もしてくるがこの場ではどうしようもない。

しばらくの間続いた祝詞を聞き、聖堂の中に広がっていた力の波が収まると、儀式の終了が告げられた。

ぞろぞろと大聖堂を後にする物たちを尻目に、アルバス達は人の流れが引くのをそのまましばらく待つことにした。


「大聖堂なんて俺っち初めて入ったけど、いやはや、なんとも言えない場所だな、ここ。」

「オレイン、お前は何か感じたのか?」


オレインの何気ないつぶやきに反応したセインは、眉根を寄せてオレインの答えを待った。


「うんにゃ、俺は神聖魔法も、光魔法も適正がないからかそういった気配はなんも。」

「それじゃあ、何が何とも言えない場所、なんだ?」

「んー、一言で言えばすげぇ視線を感じるというか、漠然とした力を感じるというか。俺にも良くわかんないんだが、とにかくそんな感じよ。」


予想以上にオレインは力に敏感なのかもしれない。

アルバスは元々この世界に来る前に経由したというのもあり魂が反応しているのだろうが、もとよりこの世界の住人であるセインやジェシカたちは全くと言って良いほど理解出来ていない。

だが、オレインは恐らく神々の視線を感じたのだろう。

オレインもまた神々の愛でし子だから感じる事が出来るのか、果たしてまた別なのか。

そんなことを考えていると、人々の波は過ぎ去り、動ける程度に人が減っていた。


「さて、王城に向かうにはまだ速いがそろそろ俺たちもお暇しますか。」

「少し、お待ちください。」


立ち上がり、外へ向かおうと思ったそのとき、声を掛けられて動きを止めることになる。

振り返った先に居たのは、先ほど祝詞を唱えていた大司教、アルミナその人であった。


「これはアルミナ様、ですか。私たちになにか?」

「突然お声を掛け申し訳ございません。アルバス様で、お間違いないですね?」


名乗っていないのに自分の名前を言い当てられ、アルバスの表情が強ばる。

鑑定が使えるか、あるいはどこかで情報が漏れているのか。


「そんなに緊張なさらないでください。私は鑑定を使えるわけではありません。ただ、女神様からの神託を受け、お声がけいたしました。」

「女神様の・・・?」


また、別の嫌な予感がした。


「はい。こちらをお持ちになってください。お城での式典が終わりました、こちらをお読みください。」


手渡された封筒は封蝋で止められており、アルミナス教の印が押されている。


「これに、神託が記されていると?」

「はい。ただ、私にも内容はわからないのです。貴方が見れば、わかるとのことでした。それでは確かにお渡ししましたので、私はこれで。」


それだけ言い残すと、他の司祭共々、アルミナは立ち去っていった。


「・・・なんか、嫌な予感がするな。」


もやもやする気持ちをこらえ、その場では何も出来ないと判断し、大聖堂を後にする。

ジェシカ達も特に気にした様子はなく、そのまま少し時間をつぶしてから王城へ向かい、陞爵の儀はつつがなく執り行われた。

その際、何気なしに陛下がジェシカとの正式な婚約をその場で発表することで場内は騒然となったのは言うまでもない。






「ったく、なんて1日だ・・・。」


全てが終わって邸宅に戻れたのは夜中に迫った頃であった。

陞爵の祝いと称して王城で行われた立食パーティーは所謂コネつなぎの場だった。

若くして子爵位を賜った事に対する嫉妬も多いが、それ以上に王族とつなぎが出来たことに対する嫉みが多い。

だが、それと同時にそんなアルバスとつながりを持つことで更に上に行けるようにと言う向上心も見て取れた。

まぁそんな貴族連中の相手をさせられたアルバスは辟易していたわけだが。

ちなみにそのときセインとオレインは陛下に呼ばれたジェシカの護衛でその場には居なかった。

巻き込まれたアニータは眼を回していたがさすがは商家の娘、対応は心得ていたのだろう、非常に助かった。

成人の儀には王都に来ると行っていた父であるグレイは統治する領地で問題が発生したとかで参列できていないで居た。

それと合わせて何か大きな問題を忘れている気もするが、思い出せないと言うことはそこまで問題では内藤事だろう。


「それより、まだやっておかなければいけないことがあるな・・・。」


屋敷に着き、着替えを済ませていつものように鍛冶場へ来ると入り口に鍵を掛け念のため閂も掛ける。

正直、これから自分に何が起こるか全く予想が付かないことを考えると、必要な手段でもあった。


「さて、それじゃあやりますか・・・。ステータスオープン。」


しばらくぶりに見る自分のステータス。

成人を迎え位階が上がると制限が1つ外れると言うが、果たしてどうなることやら。


「・・・?あれ?」


いくら待っても自分のステータスが表示されない。

今までこんな事は起こったことがない。これはあからさまに異常だった。


「どうなっているんだ?あ、それよりも、神託ってのを確認為た方が良いのか。」


思い出したように大司教から預かった神託を確認するべく取り出した封筒を開く。

中に入っていた羊皮紙にはなにやら幾何学模様が記されていた。


「これ、神託を使ってかかせたのか?それにしては複雑すぎるような・・・!?」


いくつにも折りたたまれたそれを広げきると、図形は突然、白銀に染まった。

思わず手を離した羊皮紙は地面にそっと広がり、そのまま光り輝き続ける。

まばゆい白銀に染まるそれを目をこらしてみると、どうやら何かの魔法陣だと言うことはわかる。


「これは、一体・・・!?」


光は強くなり、次の瞬間鍛冶場を覆い尽くすばかりの光が魔法陣から溢れ出す。

とっさに眼をかばうように覆った腕をどかすと、目の前には見たことがない『ヒト』が立っていた。

いや、厳密にはヒトではない。その背中には純白の翼が2対4翼。これは俗に言う天使、と言う奴だろうか。


「全く、遅いですよ開くのが。お会いするのは初めてですね、主様。」

「その声は、ケルなのか・・・?」


目の前に現れた天使の声は、今まで幾度となく聞いた、スキルの声と一緒であった。


「はい。智天使ケルビム、この度主様の位階昇格の手助けと今後のサポートの為、顕界致しました。」

いつもお読みいただいてありがとうございます!

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