刀匠、慄く
投稿が遅くなり誠に申し訳ありません。
本職の方が忙しく、安定して投稿が出来なくなっております。
できる限り速く投稿できるようにがんばります。
安定投稿まで今しばらくお待ちください・・・!
初戦が全試合終了して、第2戦。
次の相手は戦乙女学級のチーム。
ちなみにリヴァスのチームも無事に初戦は突破したらしい。
「さて、次が第2試合、事実上の準決勝って訳だけど・・・。」
なんか、会場の空気が妙だ。
客席から上がっている熱気は変わらず、今か今かと待ち望んでいるのは伝わってくる。
だが、それとは別になんと表現したらいいのだろうか、悪意を含んだ気配を感じる。
それがどこから向けられているものなのかはわからない。
「なんか、嫌な雰囲気ね。」
「ジェシカも、そうおもうか?」
「ええ、なんて言ったらいいのか分からないけど、禍々しいというか・・・。」
ジェシカも俺と同じように違和感を感じていたようだ。
眉根を寄せて怪訝な表情を浮かべている。
「・・・みんな、警戒は怠らないようにな。」
全員が頷き、会場へ入る。
会場に入っても違和感は変わらない。
むしろ開けたところに出たからか今まで以上にはっきりわかるようになった。
正面の入り口から相手が出てくるが、そっちからではない。
だが、近い。
直感でしかないが。
『準決勝第1試合、参加チーム、中央へ。』
拡声の魔法を使って場内に声が響き渡る。
相手は戦乙女学級のチーム。つまり全員女性。
前衛が3人、後衛が2人。前衛は全員槍持ち、後衛はどちらも杖を持っていることから魔法メインだろう。
第一試合とは違い、前衛後衛ともにバランスがしっかり取れている。
緊張からか顔がこわばっているが、嫌な雰囲気はない。
先ほどまで感じていた悪意は相手から感じられない。
これがただの演技なのか、それとも本当にこのチームは関係ないのか。
正直これは試合が始まらないとわからない。
『不死鳥学級第1チーム、リーダーはアルバス。戦乙女学級第1チーム、リーダーはイライザ。両者準備はいいか。』
前衛の中央に立っている女性が無言でうなずく。
リーダーが中央とは、なんというかすごい女帝感を感じるな。
「問題ありません。」
会場が一瞬静まりかえる。
さて、どう攻めるか。
『それではクラス対抗戦第2試合、開始っ』
合図と共に、相手は前衛の両サイド2人が突っ込んでくる。
リーダーのイライザはその場でとどまっている。
「ジェシカは待機、オレインとセインで迎撃!」
「よっしゃ、いくぜぇ!」
「承知しました!」
身を低くしてオレインとセインが駆け出す。
中央付近でお互いがぶつかり合い激しい剣戟が繰り返される。
今回はあっけなく武器が壊れることもなく、繰り返し打ち合う。
ぶつかったときの火花の散り方、相手が持つ武器の色からして、材質は恐らくミスリル。
「流石は貴族のご令嬢が所属する学級。金にいとめは付けないと。アニータ、強化魔法!」
「任せて!『天使の加護』!」
アニータの杖から光が迸り、オレインとセインに強化魔法を放つ。
身体能力強化を主体にした聖属性強化魔法。
身体強化に伴い、拮抗していた力はこちらが優位になり、次の一撃で相手を弾き飛ばして距離をとることになった。
「うお、急に強化魔法?!」
「オレイン、それくらいは予測したほうがいい。アルバス様のことだ、恐らくだが互角と判断したのだろう。」
「マジかよ。さっきと違って打ち合いが楽しめたから少し遊んでただけなんだけど・・・。」
事実、第一試合は武器が数発で折れてしまって不完全燃焼だった。
だが今回はしっかりと打ち合える。
それが楽しくて少し遊んでいたのだ。
「まぁ、少しは楽しめたからな、こっからは本気でいくさっ!」
「ええ、この後の懸念もあります。早めにけりをつけましょう!」
二人の動きはさらに早くなり、突出していた相手の前衛二人に肉薄する。
「・・・やっぱり、遊んでたわね、あの二人。」
「ジェシカ、どうかしたか?」
「いいえ、なんでもないわ。」
ジェシカも二人の意図を理解したが、アルバスは理解していないようだった。
強化された二人は突出した相手の前衛を圧倒し、後退させていく。
ここで動いたのが、相手のリーダーであるイライザだった。
「セシル、二人に強化魔法を。セリカ、牽制で攻撃魔法を。」
「「はい、御姉様。」」
後衛の二人が同時に魔法を展開、セシルと呼ばれた方が強化魔法を一人ずつに掛けていく。
セリカと呼ばれた方はぶつぶつとなにやらつぶやいている。
「アルバス、相手は攻撃呪文を打ってくるわよ、どうするの?」
ジェシカが相手の攻撃を警戒する。
ということは、やっぱりアレは詠唱か?
「なぁ、ジェシカ、ちょっと聞きたいんだけどいいか?」
「こんな時に、何?」
「もしかしてなんだが、ある程度の攻撃呪文は詠唱が必要なのか?」
「詠唱なしでも使えるけれど、威力は落ちるわ。詠唱をすることで魔力が込められて威力が上がる、そういう風に言われているわ。」
詠唱有りと無詠唱で威力が変わる、か・・・?
正直今まで使ってきて無詠唱の方が威力が劣っているとは思えない。
「ちなみに相手が使おうとしている攻勢魔法、何かわかるか?」
「え?ええっと、聞こえてきたフレーズ的には風系統中級『風刃乱』じゃないかしら?」
ふむそれなら行けるか。
そんなことを話していると相手は準備が終わったらしい。
「唸れ、風の刃、暴れ狂え!『風刃乱』!」
風の刃が乱れ狂い直線上を薙ぎ払う。
相手の前衛2人がギリギリまでオレインとセインを引きつけ、横に飛び退く。
「二人とも、伏せろ!」
アルバスの声を聞き、反射的に体勢を低く取る。
「『風爆刃』!」
風系統上級『風爆刃』。
中級と比べて速度、威力共に2倍以上。
三日月型に広がった風の刃が駆け抜け、相手が打った魔法を食い破りそのまま肉薄する。
「なっ?!」
「無詠唱で?!」
相手の後衛二人が驚愕の表情を浮かべているが、イライザは表情一つ変えず、槍を構えている。
「魔断ッ!」
槍を振り下ろし、風爆刃を断ち切る。
二つに分断され勢いを殺された風爆刃はそのまま後衛二人に直撃し、意識を奪う程度に威力が残っていた。
「おお、相手も中々やるなぁ。」
「それでも、味方を守るとかじゃなく自分だけ無傷で済むように動いたのはどうかと思うのだけど。」
感心しているとジェシカが厳しい目つきで相手をにらんでいる。
その間にも前衛2人は打ち合いを再開してる。
相手も強化魔法を受けていたが、後衛が倒れた事で強化が切れている。
先ほどとは違い、こちらが圧倒している。
決着が付くのにそこまで時間は掛からないだろう。
「アルバス、アレは私にやらせてもらえるかしら。」
「わかった。無理はするなよ。」
「ええ、任せて。」
ジェシカが剣を構え、駆け出す。
「アニータ、ジェシカにも強化魔法を。」
「わかったわ。『天使の加護』!」
走り出したジェシカの早さが、一段上がる。
「くっ!?はやいっ?!」
「いくわっ!」
相手の槍とジェシカの剣が交差する。
イライザに掛かっていた強化魔法も切れているはずだが、それでもジェシカの攻撃をしっかりと受け止めている。
ジェシカ同様、相当に鍛錬しているのだろう。
リーチが長いイライザが有利かと思われたが、一振り一振りのモーション速度がジェシカの方が速く、距離を取ることが出来ずに居るようだ。
「これは、すぐに決着付くかな?」
「いや、アニータ、そうでもないかも。」
ここに来て、また空気が変わった。
試合開始前に感じていた、違和感。
それが、急に膨らんできている。
「そろそろ、決めるわっ・・・!」
「くぅっ!?」
ジェシカの連撃がイライザの槍を弾き飛ばす。
これで仕舞いかと思った瞬間、悪寒が走った。
本能が危機を告げる。そんな直感が、悪寒となって伝わる。
「ジェシカッ、離れろッ!」
「・・・ッ?!」
イライザの目が赤く光り、次の瞬間には魔力がほとばしり、爆発が巻き起こる。
寸前でなんとか距離を取ろうとしたジェシカだったが、間に合わず爆風に巻き込まれる。
オレインたちは爆風に巻き込まれず、事なきを得ていた。
しっかり残りの2人を無力化している。
「ジェシカ、大丈夫か?」
「ええ、なんとか・・・。けど、なんなの、アレ・・・さっきまでの彼女とは比較にならない・・・。」
なんとか空中で体勢を立て直したジェシカが横に来ながらつぶやく。
彼女の目には恐れが浮かんでいる。
「アルバス様ご無事ですか?」
「アル、ありゃなんだ?!」
「俺は大丈夫だ。さっきまでの違和感の原因は、あいつだったのか・・・?」
爆風が収まり、土煙が薄れてくる。
土煙の奥にはイライザが居るはずだが、そこから漂ってくる気配は先ほどまでのイライザとは全く違う。
いや、もはや人とは思えないちぐはぐな気配。
「まったく・・・この素体、予想よりも弱っちかったわね。お陰でワタシが出てくることになったじゃない。あ~あ、予定よりも早すぎるわ。」
聞こえてきたのは別人の声。
見た目はそのままだが、気配も、声も、濃密な魔力も全く別になっている。
「お前は、何者だ?イライザはどうした?」
「んん~?ハン、アンタ、アルバスとかいう坊やかい?」
「何故俺の名前を知っている・・・?いや、その前に質問に答えろ。」
「やっぱりアンタがアルバスだね!大当たりじゃないか・・・!あと、イライザってのはこの娘の事かい?」
顔を押さえて笑い声を上げながら、自分の体に向けて指をさす。
「こいつはワタシの依り代さね。こいつの体はワタシのもの。既にこいつの魂はこの世にはないわ。」
正直、理解が追いつかない。
依り代?それにイライザは既に死んでいるということか?
「お前は、何者なんだ?」
「ワタシはファシリス。魔王様の眷属、魔族なり!」
魔族という言葉に、観客席が騒然とする。
それもそうだ。史実によれば数百年前に魔王は討たれた。
その後魔族は歴史から姿を消した。
その魔族が、今目の前にいる。
「お、おい、あいつ魔族って・・・!」
「に、逃げろおおおお!!」
先ほどの爆発で若干混乱していた観客たちは、恐慌状態に陥り我先にと出口へ逃げていく。
「ククク・・・何百年経っても弱小種族は変わらないわね・・・!」
「お前はどうしてここにいる?」
「あら、アンタたちは勇気あるわね。逃げないんだ。いいわ、特別に教えてあげる。ワタシはある人に召喚されたのよ。そして契約をした。ワタシの依り代を用意する代わりに、お前を始末して欲しいってね・・・!」
俺を始末ね・・・。全く心当たりがない。
「全くもって心当たりがない、うん。アルバス違いじゃないのか?」
「まぁ、ワタシとしてはどっちでもいいのよ。正直肉体が手に入ればそれでいいの。契約は契約。仕事が終わればあとは本来の目的を果たすだけだもの。」
「本来の目的?」
正直俺のことはどうでもいいという言い回しだ。
これは契約者とは主従の制約はないということだろうか。
だが、本来の目的が別にあるという。
正直、それが嫌な予感しかしない。
「もうすぐ、新しい魔王様が誕生されるわ・・・その為にもワタシたちは新しい拠点を得なければならない。その為にこの国を頂くわァ!!」
「なっ?!」
国を乗っ取る?それも、魔王が新たに誕生する?
何が起こってるんだ?俺はこの世界で悠々自適に暮らすはずだったのに。
これははっきり言って想定外だ。
だが正直、目の前に立ち塞がるというなら、倒すしかない。
「だが、お前一人でこの国を堕とすなんて無理だろう。それに、お前自身も行かせるわけには行かない。」
「クックック・・・まさか、ワタシ一人だけが依り代を得た、なんていったかしら?」
「なっ、まさか・・・?!」
嫌な予感がする。
それも、特大の。
「同胞は全部で4人。さぁ、お前たち弱小種族が上位種族である魔族を止められるかしらぁ!」
ファシリスの宣言と共に、学園を中心に複数の場所で爆音が轟く。
「まさか、負傷した他の学生も・・・?!」
「ふふふ、さぁて、どうかしらねぇ・・・?まぁ、アンタたちはここで死ぬのよぉ!!」
魔力が膨れあがる。
ファシリスは遣るつもりだ。
正直、状況が完全には理解出来ていない。
だが、最悪な状況な事は間違い無い。
「・・・ジェシカ、セイン、お前たちは学長先生を探して状況を伝えてくれ。オレイン、アニータは二人で冒険者ギルドへ走ってギルドマスターに緊急要請を。」
「待って、アルバスはどうするつもり?!」
「あいつの今の狙いは俺だ。だったら、やってやるさ。」
「ジェシカ、こいつは言っても聞かない。それに、この状況じゃあ俺たちは足手まといになりかねない。今はとにかくやれることをやろうぜ。」
俺のやろうとして言うことをすぐに理解したオレインとアニータはすぐに動く準備をするが、ジェシカは引き留めようとしているが、セインが何も言わずにジェシカを連れて動いてくれる。
「アルバス、無茶はしないで!必ず状況を伝えてくるから!」
「ああ、頼んだ、みんな。」
4人が一斉に走り出す。
「・・・驚いたよ。てっきり妨害すると思った。」
「弱小種族がなにしようが関係ないわ。それに足掻いた後に絶望の表情を浮かべた人間を殺すのが、一番気持ちいいのよ。」
下卑た笑みを浮かべ、舌なめずりをする。
こいつは生かしちゃ行けない。
腰の刀に手を添える。
レヴァンティンは仕舞ってあるが、いざというときは出すしかない。
「あら、やるっていうの?今命乞いをしたら今ならワタシの下僕にしてあげるわよぉ?」
「お前を生かしておくわけには行かないさ。どこまでやれるかわからないが、やってやるさ・・・!」
まだ刀は抜かない。柄に手だけを添える。
「あっそ。だったら、死になさい。」
ファシリスの手に魔力が集まる。
それを合図に、殺し合いが始まった。
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