刀匠、練習する
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回までで対抗戦準備編は終了
次回から対抗戦に入ります。
翌日、寄宿学校のグラウンド。
今日も対抗戦へ向けた準備が行われる。
主に行われているのは、それぞれが準備した武器の確認や、連携の確認。
うちのパーティもその例に漏れず、連携の確認を行っている。
昨日の依頼でみんなの動きを再確認出来た。
うん、十分過ぎるほど強い気もするが、上には上がいると思う。
だからこそ動きの再確認を行い、備えなければならない。
「というわけで、ちょっと実験です。」
「唐突なんだけど、アルバス?」
ジェシカが不思議そうな顔でこちらの手元を見ている。
それもそのはず、俺の手には見せたことがない武器がある。
丸い円形の刃、持ち手はなく、円の内側は空洞になっていて指を入れることが出来る。
「これはチャクラムという武器で、投擲して使う武器なんだ。ただ、ナイフとかみたいに持ち手はない。さて、どう使うかと言うと・・・」
指を穴に入れ、指先を起点に回す。
「こうして、回して・・・投げるっ」
十分に回転したチャクラムを的目掛けて投げる。
真っ直ぐ的に吸い込まれ、木で作られた的を真っ二つに断ち切る。
すぐ後ろの石壁に突き刺さり動きを止めたチャクラムを見て、俺はちょっとばかり焦る。
「・・・と、このように、切断系の投擲武器です。」
「待て待て待て、凶悪すぎるだろあの切れ味!!」
抗議に来たのはもうひとつのパーティーリーダーであるリヴァス。
彼の手には先日渡した合成弓が握られている。具合がいいようで何より。
「いやぁ、俺もこれは予想外だった。何がいけないんだろうか。うーん。」
「・・・アルバスの魔力が影響している、と思う。」
石壁に刺さったチャクラムを引き抜き持ってきながらそう言ったのは同じく隣のパーティーメンバーのユン。
彼女も後衛メンバーということもあり、この武器には興味を示していたが、これは無理だと言わんばかりに俺に渡してきた。
それより、俺の魔力?
「魔力?なんでだ?」
「この武器、風の魔力を帯びている。アルバスの魔力が、それを後押ししていた。」
「確かに飛翔距離を伸ばすために付与で風魔法をつけたけど、それが原因か?」
「間違いなく、それよ。全く物騒なものを作って・・・。」
呆れるジェシカではあるが、俺にはわかる。あれは早く私にも使わせろと言いたいのだろう。
あいつはアレで武器マニアなところがある。
セインの槍も渡した初日に借りて振り回していたっけ。
「だが、狩りでは有効だが、このままじゃ実験になるどころか事故が起きるので、使うのはこっちにしよう。」
先程のチャクラムは収納魔法で片付け、別のチャクラムを取り出す。
「こっちは刃を潰しているのと、風魔法の付与もしていない仕上げ前のもの。これを投げるから、それぞれ躱すも良し、撃ち落とすも良し、それぞれの判断で対応してくれ。」
遠距離攻撃に対する対応方法を、チャクラムを使って練習する。
魔法の捌き方とは異なるが、論理は一緒。
クレー射撃に近い形を取ろうというわけだ。
「なぁアル。オレにやらせてくれ。」
「リヴァスは弓使ってるし、動く的得意だろ?」
「いや、それでもお前の作ったあのチャクラムって武器はすげぇ速いし、良い練習になる。な、頼むよ。」
手を合わせて拝み倒してくるリヴァスに、むげに断るわけにも行かず、渋々応じる。
リヴァスとだいたい20mほど離れ、準備を行う。
使うチャクラムは10こ程。
「んじゃあ、やりますかね。リヴァス、準備は良い?」
「おう、オレはいつでもいけるぜ!」
やる気に満ちあふれたリヴァスの瞳に魔力が宿る。
「それじゃあ、はじめるぞ・・・!!」
チャクラムを回転させ、連続で投擲する。
リヴァスの手には弓は握られているが、矢は無い。
「魔弓繰術『銀矢』・・・!」
目に宿った魔力とは別に、空だった右手に銀色に輝く矢が現れ、それを連続で射る。
視力を補助する魔法を利用し、的確に飛翔するチャクラムをたたき落とす。
うん、流石はリヴァス。恐らくこの学校で一番弓の扱いはうまいんじゃないか?
残りのチャクラムが5こになったところで、リヴァスの前に割り込むようにユンが立ちふさがる。
「ちょ、ユン?!」
「リヴァスだけずるい。ぼくもやる。」
手に握った数本の短剣を構え、こちらを見つめるユンは、残りを全部纏めて放れと訴えてくる。
あいつの技量を考えれば余裕だろうけど。
「それじゃあ、最後は全部行くぞ・・・!!」
手に魔力を込め、風を起こして回転させる。その勢いのまま、残り5枚をユン目掛けて投擲する。
魔力を使い回転力を上げたチャクラムは今までより速く飛翔する。
「『雷棘』」
両手に持ったナイフを前方に投擲するのと合わせて魔法を重ねる。
投げたナイフに雷が着弾し、切っ先を起点に複数の雷光がチャクラムへ駆け巡る。
一斉に投擲されたチャクラムは一瞬にして打ち落とされてしまった。
「お見事。流石だな、二人とも。」
ない胸を張るユンと、横取りされたリヴァスだが、まんざらでもなさそうだ。
「それじゃ、俺たちも負けてられないね。セイン、勝負しようぜ!」
「オレイン、お前はどうしてそう・・・」
「あら、いいじゃない。私も混ぜてもらおうかしら。」
「あ、姉上・・・?!」
「んじゃ、私もー!」
「んなっ?!」
まじめなセインは周りの勢いに負けて渋々勝負に巻き込まれるのでした。
4人纏めて練習を行った結果、意外な事がわかった。
思いの外、アニータの攻撃魔法が成長していたのだ。
ユンほどではないが的確な攻撃魔法を繰り出し、全部というわけには行かないがしっかりとチャクラムを打ち落としていた。
オレイン達はそれぞれの間合いをしっかり把握してしっかり撃墜をしたり、回避を行っていた。
完成品の速度と比べればだいぶ見劣りするが、それでも十分な速度を発揮するチャクラムは良い練習相手になったようだ。
それに、俺自身も飛翔武器の扱いにも慣れることが出来たし、この武器の改良点もしっかりと見出せた。
「アルバス、中々良い武器を作ったじゃないか。」
「あ、学長。」
「今度、うちにも融通してもらおうかな。それにあっちにも。」
「・・・ハイ。」
新しく出来た武器を見逃すはずがないのがこの人と陛下である。
縁戚になったわけだし、もちろん提供はするけれども。
「それからお前に手紙だ。後でいい、確認しておくように。」
「・・・わかりました。」
手紙の封蝋は王家のもの。つまりは陛下からだろう。
今ここで開くのはまずいからとりあえず収納へしまう。
つつがなく教練も終わり、自宅へ帰り、作業場へ。
ジェシカとセインは実家によるらしく、アニータも用事で別に帰宅。
オレインと二人帰宅したが、オレインも家臣になってやることが増えたため、家では別行動。
というわけで今日も制作に入るわけだが
「今日は、いよいよあれに手を出そうか。」
おもむろに取り出したのはミスリル。
魔銀ともいわれる魔力親和性がいい天然鉱石。
魔法職であるアニータの杖を作るにはもってこいの素材だ。
本当ならほかの金属と合わせて魔鉄に昇華させたいところだが、それだとほかの武器との差が出すぎてしまう。
本来なら魔力の通りがいい材木とかを利用した木製のスティックとかのほうが取り回しやすいのだろうが、未だに木工は未経験。
鍛冶術は進化しているとは言え、木工や彫金、革細工といったほかの加工は未経験なのだ。
いずれはしっかりとそのあたりも学びたいとは思っているが、今優先すべきは別。
今回はスティックタイプの魔杖にする。
炉に火をくべ、ミスリルを入れる。
じっくりじっくり温度を上げ、溶解するのを待つ。
そうしてしっかりと溶けたミスリルを専用の容器に納め、準備は整った。
「『錬成鋳造・型形成』」
魔力をスティックの形に固定し、出来上がった魔力の器の中にどろどろに溶けたミスリルを流し込む。
魔鉄のように魔力を使い結晶化した合成金属であればそのまま錬成鋳造で形を決めることができるが、天然鉱石はそういうわけにはいかない。
そのため、通常の金属同様まずは溶解し、形成しやすい状態を作る。
正直炉の温度が足りてくれてよかったが、これ以上の高炉が必要になるならいろいろ考えないといけない。
しっかりと形が定着したのを確認し、魔力を解き、型を消滅させる。
表面をしっかりと整え、先日仕入れた魔石をスティックの先端に固定する。
これで、完成。
「よし、無事できた・・・!まさかミスリルで作る最初の品物が杖になるとは思ってもなかったけど。」
出来上がった魔杖は全体的にうっすらと銀色に輝く杖。
先端には真っ赤な魔石が嵌め込まれている。
ちなみに魔石の表面は加工されており、宝石のようにカットされている。
「それでは・・・『鑑定』」
念のため性能の確認をと思い、鑑定を行う。
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種類:魔杖・スティック型
銘:
品質:A
切れ味:--
魔力:100/100
耐久値:350/350
説明:アルバスが鋳造したミスリル製の魔杖。魔力親和性が高く、魔力増幅効果が高い。
基礎属性:聖
付与魔法枠:2
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・・・うん、やりすぎた?
初めて見た。武器のステータスに魔力の項目あるし。
魔法の攻撃力ではなく、純粋に魔力を含んでいる。
しかも、これ、恐らくだけど俺が作るときに使った魔力そのものに近い。
つまりこれ、魔力をここから引き出しながら使えるということか?
基本の治癒魔法や初級攻撃系の魔法なら10発以上使うことができる魔力量。
ミスリルが魔力親和性が高いってのは知ってたけど、まさか吸収してるのか?
「これは、ちょっと魔鉄化しなくて正解だったかも。」
首筋を垂れる汗がいつもより冷たく感じた。
「・・・とりあえず、これは付与はせずにアニータに渡そう。それがいいな。」
これ以上の強化はまだアニータでは扱いきれないだろう。
それに、これでも十分に強い力を秘めているのは確かだ。
「さて、残りも仕上げてしまいますかね。」
錬成鋳造で余ったミスリルはそこまで多くはない。
だが、溶かしたミスリルをそのまま再度固めるだけでは芸がない。
だったら、ちょうどいいからほかの形も練習しようと考えた。
そこからはひたすら試行錯誤。
まさに練習、練習、練習。
今できる最高を求めてひたすらに作り続ける。
武器だけでなく、仲間を、自分を守るためのものを作るためにひたすらに。
結果として、帰って来たジェシカとアニータに叱られるまで、ひたすら鎚を振るっていた。
いつもお読みいただいてありがとうございます!
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気温の変化がひどく、若干夏風邪気味で更新が遅くなり申し訳ありません・・・
夏が終わる前に1章を書き終えたいと考えております。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします!




