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刀匠、羨まれる

ちょっと長くなったので次に分けます

その次から対抗戦編予定です

陛下から手紙を通して爆弾を投下されてから1週間後。


ミネルヴァからの指示も有り、今週一週間は学園を休み作業に没頭していた。

というのも、魔法の袋の量産のめどが立ったため、シグネトに手伝ってもらうことになったから。

彼女の裁縫技術は非常に優れており、量産するに当たって問題になっていたマナダイトインクを使った口周りの円環に関しても、裁縫の技術で解決して見せた。

あとは刻印魔法を施した留め具をこちらで量産すれば、十分に供給することは可能になるだろう。

それに、この留め具自体も、鍛冶術を使って複製量産が出来た。。

武器だけではなく、こういった金属製の物も量産出来るのは非常に便利だ。

・・・正直毎度同じ刻印を施すのは、面倒だ。


シグネトが革袋の細工を施す間に、俺自身は留め具の量産を行い、併せて頼まれていた武器の生産を進めていた。

求められているもと違っていた鞭と弓に関しては、シグネトがミネルヴァの屋敷からそれらしき文献を持ってきてくれたおかげで解決することが出来た。

・・・量産のスピードを落としたくないからなのか、王立図書館に行くと伝えたらすぐに寄越したんだよな。

お陰でその後作った試作品は良識の範疇に収まる出来映えに。

これなら事故は起こさないだろう、うん。


対抗戦の準備に目処がたち、そこからは怒涛の勢いでひたすら量産を行っていた。

その中で、シグネトと相談をしてちょっとした魔道具を作ったりもしていた訳で。

普段持ち運ぶ上で革袋そのものでは見た目的にもあれだったので、カバンタイプのものや、感応石をまた少し融通して貰えたので魔力認識型のものもいくつか。

基本的には王家に献上するものとミネルヴァへ渡すものがほとんどだけど、何個かは手元に残すことが出来た。

せっかくなら、学級の皆にも使ってもらおうという考えだ。

他の学級ならおかしな因縁をつけられるかもしれないが、うちの学級はそれこそどこか1歩ズレているから、そんなこともなさそうだし。

せっかくなので学級のエンブレムをシグネトに刺繍してもらった。

しかし、あとからシグネトが持ってきたミネルヴァからの指示書を見て目を疑ったよ。

生産に関しては限度なしに作れるだけ作って欲しいと。

どうするつもりなんだ、この大量の魔法の袋。

結局シグネトも泊まり込みでひたすら作り続けてくれているので助かるが、これはちょっとした苦行だ。

それでも、俺の今ある魔力量だとそんなに苦にならないけれど。

そういえば、何度かアニータが訪ねてきたらしいけど、作業場までは1度も現れなかったな。

何がしたかったんだ??




「よし、これで予定数は達成だね。」

「はい、アルバス殿のおかげで、予想以上に生産効率をあげることが出来ました。ありがとうございます。」


箱に収められた大量の魔法の袋。

それを、合わせて準備して置いた輸送用に作った大容量版の魔法の袋に入れて、作業は全て終了。

シグネトと2人、やりきった。

合計200個の魔法の袋。


「私としては、50も出来れば十分と思っておりましたが、まさかここまで作業を効率化することが出来るとわ・・・アルバス殿はまだ12なのに、博識でらっしゃいますね。」

「い、いえ、それも王立図書館や、この屋敷に残されていた文献のおかげですよ、ははは。」


正直に言えば、智天の書庫で、色々調べながらだったが、それは黙っておこう。

未だ位階への到達までは数年あるが、知ることが出来る知識は書庫よりも遥かに膨大だ。

お陰様で今できる最大の生産効率を出すことが出来た。


「そういえば、明後日からはまた学園へ戻られるようですが、明日はどうされるのです?」

「あー、何も考えていませんでしたね。素材もいい感じに消費しちゃったので、明日はギルドに顔を出して依頼でも受けようかな。」

「そうですか。今の時期は北の湿地帯にタイラントスネークが大量発生するので、近づく際にはお気をつけください。1匹1匹はでかいだけの蛇ですが、群れになると非常に戦いにくい相手ですので。」


大量の蛇とか想像するとなんか嫌だな。

けど、蛇かぁ、蛇の皮って材料にならないかな。


「アルバス殿はわかりやすいですね。」

「え、どうしてですか?」

「いえ、今素材にならないか?とか考えてましたよね?」

「え、そうですけど、そんなに顔に出てました?」

「ええもう、はっきりと。」


そんなにわかりやすいのかな。

普段あまり笑わないシグネトがクスクス笑っているくらいだか、よっぽどなんだろうな。腑に落ちないけど。


「アルバス様、お客様がお見えです。」

「ん?お客さん?誰だい?」


作業場の扉からひょこっと顔を出して知らせてくれたのは、メイドのリリー。

うちにやってきた使用人たちの中でも1番歳が若く、最近成人したばかりだとか。


「えっと、ミネルヴァ様と、お連れの方が何名かいらっしゃいました。応接室でお待ちです。」

「学長が?」

「おや、もういらっしゃいましたか。」

「シグネトさん、何か知ってるの?」


訳知り顔のシグネトに話を振るが、ニコリと微笑み何も言ってくれない。嫌な予感しかしない。


「行けば分かりますよ。」

「・・・わかった。今向かうからリリーはお茶の用意が済んだら下がってくれ。」

「かしこまりました。」


俺の事を置いてトテトテ去っていく姿はどう見ても歳上に見えない。

なんか見てて危なっかしいんだよな、あの子。




シグネトを連れて応接室に入ると、嫌な予感がピッタリ当たった。

ソファーに腰掛けているのはミネルヴァ含めて4人。

残りの3人は見覚えあるし、なんだったら見知っている。

国王陛下に、なんでジェシカとセインが居る。

臣下の礼を取ろうとしたら手で制された。


「よい、今日は公務ではない。それに、ここは王宮ではないのだ、臣下の礼はいらぬ。」

「いえ、ですが。」

「ほら、言ったとおりだろう?こいつはこうなんだ、ガイアス。あいつそっくりだろう?」

「ミネルヴァの言うとおりだったな。まったく、どこまでもグレイにそっくりだ。」


クツクツ笑う陛下とミネルヴァに困惑気味でいると、シグネトがこっそり教えてくれた。


「陛下とミネルヴァ様は寄宿学校時代の学友にございます。その際の同輩が、アルバス殿の父君、グレイ様です。」

「あー・・・なるほど、そうでしたか。」


なんかこの一瞬ですごく疲れた。

この2人が旧友であることは以前の謁見の際に何となくわかっていた。

それに、ジェシカが陛下と血縁にあることも、先週の訓練でつい口をついて出かけた言葉で察しては居たが、黙っていたわけで。

そういえば、ファミリーネーム、知らなかったな。


「ガイアス、そろそろ本題に入ってやらないといつまでもアルバスがそのままだぞ?」

「うむ、それもそうだな。アルバスよ。」

「はっ。」

「此度のカタナ再現、そして魔法の袋生産技術の復活、誠に大儀であった。」

「恐れ多くございます。」


私用といいながら完全に謁見と変わらないじゃないか。

今更跪く訳にもいかず、ソファに座ったまま聞く。

あれ、そういえば俺なんか大事なこと忘れてないか?


「先日知らせたとおり、お前に追加で報償を出す。私の娘、ジェシカをお前の婚約者としよう。」

「・・・はい?!」

「お父様?!」

「父上?!」


あ、ジェシカもセインも何も知らされていなかったんだ。

というか俺がすっかり忘れてたけど、そういえばそうだ、先週の手紙(爆弾)で、そんなこと書いてあった。


「ハッハッハ、いいではないか、ジェシカ。此奴は傑物ぞ。将来大成するであろう。側に使えて支えてやれ。」

「いえ、あの、お父様の命ならばお受けいたしますが、そもそも、なぜアルバスなのです?それに、どうしてこの屋敷に彼が?」


あ、全く知らされていないんだ。

あれ、けど学級の仲間全員図書館前に来てたよな。

あの時点で俺の叙爵の件も、色々伝わっていると思ってたけど、勘違いなのか?


「ジェシカ、彼はガイアスが準男爵に叙爵したんだ。それと、魔剣の復活を依頼しているのも彼だ。」

「えっ?!」


驚いた表情でこちらを見つめるジェシカの瞳は戸惑いと畏敬が籠められていた。

そりゃそうだよな。同い年の俺が陛下から魔剣の復活に刀製造を頼まれたなんて思いもしない。

元々辺境伯家ではあったけど、叙爵して今では準男爵。

・・・あれ、そういえば、成人していないで叙爵したのって歴史上他にいるのか?


「それにな、此奴は順当に行けば成人と共に子爵に昇爵する予定だ。」


待て、聞いてないぞ?!


「陛下、初耳にございますが・・・?!」

「お前の成果は聞き及んでいる。シグネト。」

「こちらでございます。」


いつの間にかミネルヴァの横に移動していたシグネトが先ほど一緒に仕上げを終わらせた魔法の袋を手渡していた。


「うむ、見事な仕上がり。この量が入る魔法の袋、ダンジョンの産物でも滅多に出ない。」

「陛下は、一目見ただけで容量がおわかりに?」

「『天啓の心眼』に掛かれば、この程度は造作も無い。」


初めて聞くスキルだな・・・。俺の叡智の魔眼と同じ系統なのかな。


『主様主様、天啓の心眼は国王となった物に捧げられるスキルです。主様の叡智の魔眼とは発現条件は違いますが、似た系統だと思ってください。あ、私に返事しちゃだめですよー?』


わかってるわ。急に声掛けてくるからびっくりしたけど、助かった。


「して、量産はどの程度できそうなのだ?」

「はい、アルバス殿が要となる留め具を量産出来ることがわかりましたので、裁縫系の職人を集めればではありますが、一ヶ月で500は可能かと。」


さっき2人で試算した数を少し下回っているが、妥当なところだろう。

俺としてもかかりきりにはなれない。

俺が手を出さなくても量産出来る体勢を整えるまでは、そこが限界だろう。

正直、自分の研究も全然出来なくなったら出て行ってやる。


「それは重畳。ならば、アルバスよ。月に100でよい。この半分の容量の物を国に納めよ。」

「はっ。」


その程度ならお安いご用だ。一晩もあれば俺の方は作業が終わる。


「これだけのことを成したのだ。子爵でもおかしくあるまい?お前が嫁ぐには十分な才覚だとおもわんか?」

「はい、お父様。ここまでの傑物とは、同じ学級におりながら、気づけませんでした。」

「よい、此奴は中々におもしろい男よ。先ほどから心眼で見ようにものらりくらりと躱される。」


やっぱり見てたか。一応偽装の魔眼でステータスをぼかしてたけど、よかったのかな。


「アルバス、改めていう。ジェシカは私の末の娘でな。非常に高い才覚ももっているが、妾腹でな、他の兄弟からセイン共々嫌な思いもさせられてきた。お前に、託したいのだ。」


一瞬ジェシカを見た陛下の目は、優しい父親の目だった。

本当なら自分の元で守り抜きたかっただろうが、王として、ジレンマに駆られていたのだろう。


「・・・承知いたしました。陛下の臣下として、御身から賜った命、しかとお受けいたします。」

「うむ。よろしく頼むぞ。それから、セイン。」

「はっ。」

「お前はアルバスの家臣として、側に仕え、己の力量を鍛えよ。」

「はっ、承知しました、父上。」


・・・一気に婚約者と家臣が出来ました。

それに、なに、いつの間にか子爵になるのか。

なんというか、うん、急展開過ぎ。


「うむ、今日はよき日になった。おお、そうだ、アルバス。」

「はっ。」

「この屋敷、部屋に空きはあったな。」

「え、あ、はい。」

「ならよい。ジェシカ、セイン。明日寄宿舎から引っ越しだ。」

「「はい?!」」


何言い出すんだこのおっさん?!

急すぎる!!


「おお、それはいいじゃないか。シグネト、魔法の袋を何個かジェシカとセインに貸してやれ。」

「叔母様?!」


・・・叔母様?


「ああ、そういえばアルバスには言っていなかったね。ガイアスの弟が、私の旦那なんだ。だから、ジェシカとセインは私からすれば姪と甥に当たるわけだ。」


うわー、濃いなこの親戚関係。

・・・あれ、ちょっと待て。そうなると。


「つまり、お前も義理の甥になるわけだな。」


・・・父上すみません、貴方の知らないところで貴方の学友と親類縁者になりました。


「まさか、学友が親類縁者に増えるとは思っても居なかったがね。」

「さて。そろそろ私たちは帰るとしようか。」


陛下とミネルヴァが席を立ち、外へ向かう。

後に続いて外に出ると、非常に質素な馬車が待ち構えていた。

まさかこれに陛下が乗っているなんて誰も思わないだろう。


「ではな、アルバス。またよき報告を待っている。ジェシカとセインを頼んだ。」

「承知いたしました。」

「ではな。」


陛下を乗せた馬車が王宮へ向け走り出す。


「さて、私もこのまま帰るとしよう。ああ、そうだ。ジェシカとセインの荷物はどうせ少ないだろうから、明日にでもオリバーとシグネトに運ばせよう。もう今日からここに居ればいいさ。」

「え、叔母様?!」

「叔母上?!」

「せっかくだ、これを機にもっと仲良くなっておけ。ではな。」


ミネルヴァはシグネトを引き連れて去って行く。

なんというか、陛下もミネルヴァも嵐のようだ・・・。


「・・・とりあえず、中に」

「あ、アルバスいたーーー!!」

「いや、アルの家なんだからいるに決まってるだろ。」

「あれ、アニータ?それにオレイン。」


ミネルヴァが出て行ったあと、アニータとオレインがやってきた。

なんだ、今日は。


「あれ、ジェシカにセインも?どしたの?」

「あー、えーっと・・・。」

「姉上とアルバスは婚約した。私も家臣として、今日から側に仕えることになった。」

「ちょ、セイン?!」


速攻で全部話すやつがいるか?!

ほらみろジェシカも絶句してるじゃないか


「え?!」

「わー、なんというか、オレっちも予想外の展開。」


アニータは固まってるし、オレインは訳知り顔だけど少し驚いてる。

予想外ってなんだよ。


「ず・・・ず・・・」

「ず?」


なんか、アニータがぷるぷる震えている。

なんだ、どうしたんだ?


「ずるいーーー!!」

「はっ?!」


なにがずるいの?!

どういう意味だ?!


「わ、私もアルバスと婚約する!」

「何をどうしたらそういう発想になるのかな?!」

いつもお読みいただいてありがとうございます!

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