刀匠、やらかす
気がつけば、朝だった。
なんてことは昔はざらだった。
昔といっても転生前の話だ。
ここ最近は・・・この間禁書庫に潜った時はノーカウントでお願いしたい。
規則正しい生活を送っていたと思うが、久々にやってしまったわけで。
気がついたら金床を枕にして寝ていました。
辺りを見渡せば魔鉄や錬成鉄の山、山、山。
新しく手に入れた力を使いこなすべく、何度も何度も作った結果、これだ。
ただ、全てを武器にしなかったことは褒めて欲しい。
ケルビムから技能を教わってから作った2本以降、追加で5種類ほど作ったあたりで止めたのだ。
・・・5種類作る前に止めるべきだったとは思うが、まぁそれはおいておこう。
だが、このおかげで大まかに使いこなせるようにはなった。
「そういえば、適当に作ったけど、こいつらどうしよ・・・。」
練習で作った5種類の武器。
片刃の剣、槍の穂先、ロングソードにショートソード、ナイフが5本。
・・・ナイフは他と比べて材料が少なくて済むからまとめて一気に作ってしまったわけで。
だが錬成鉄を使った点は褒めてほしいわけで。
・・・誰にだよ。
だが問題は槍か。柄が剣と違って長いからちょうどいい材質のものがない。
「さーて困ったな。ちょうどいい長さで木材より頑丈なもの、そんないいものここに・・・」
寝起きでぼーっとしていたが、目に入ったものをみて一気に目が覚めた。
木箱に納められたデッドラプトルの骨。
非常に太く、しっかりしている。
「・・・これ、加工したらいけるんじゃないか?」
自然と喉がなる。
試したい、作りたい、仕上げたい。
そんな欲求が頭の中を駆け巡る。
まるで幽鬼のように誘われるように木箱へ歩みを進める。
「アル、やっぱりここにいた!」
「あれ、アニータ?」
バンッと音を立てて入ってきたのはアニータ。
制服を身にまとった彼女は呆れた表情のままこちらに向かってくる。
「あれ、じゃないわよ。もうすぐ授業始まる時間よ!ほら、準備していかないと!」
「え、あ、骨~・・・!」
「骨は逃げないけど、授業に遅れたら私も貴方も怒られるの!」
アニータに腕をつかまれ引きずられていく。
その後、急いで学院へ向かう準備を済ませる。
家を出る前なんとかアニータをなだめて作業場に取って返し、練習で仕上げた片刃の剣とナイフ5本を持ち出すことができた。
ナイフのうち1本はアニータに渡し、お詫びだと伝えた。
そうしたら表情は一変して笑顔に戻ったからよかった。
正直、既製品のナイフと比べても性能はいい。
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種類:ナイフ
銘:
品質:B
切れ味:B+
耐久値:200/200
説明:アルバスが鍛造した錬成鉄製のナイフ。小型の魔物程度なら骨も砕ける。
付与魔法枠:1
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非常に優秀である。
このサイズ感で付与魔法を1つ付与できる。
あとで何か付与をすると伝えたら大喜びだった。
近接向きではないはずなんだが、それでも接近戦で使える武器があるだけでも気持ちは違うのだろうか。
まぁ予想通りと言えばそうなのだが、見事なまでに遅刻した。
それはもうきっちりミネルヴァに怒られたわけだが。
正直、今は授業よりも考えることが多すぎてそれどころではないわけだ。
スキルが統合・整理されたことでできることが増えた。
だが、ケルビム曰く、成人するまではスキルの成長にも制限がかかっている。
実際それがどのレベルまでは上がるのかはわからない。
それに、スキルのレベルは上がらないが、ステータスのレベルは上がる。
今まで通り、時間があるときはギルドの依頼をこなしつつ、レベル上げもしておいた方がよさそうだ。
なにが成人後、位階を上げることにつながるかわからない。
さて、どうしたものか。
考え事をしていると一日があっという間に過ぎていき、午後の授業。
クラス対抗戦の練習の為、グラウンドへ。
今日は各々の動きを確認することがメインになる。
練習相手にミネルヴァが連れてきたのは恐らく自分の私兵だろう。
非常に動きが洗練されている。
リヴァスのチームはやはりバランスが取れている。
前衛をソフィアとレオが、後衛でリヴァスとユン、間にルガルフが入りサポートを行っている。
「リヴァスの指揮が適格だな。やるな、あいつ。」
離れたところから5人の動きを見ているが、的確な指示で動いており、よどみもない。
いやぁ、俺があの指示するの?無理だよ、無理。
「さて、アル、次はオレっちたちだぞ。」
「わかってるけど、俺が指揮するわけ?」
「リーダーだもん、アルがやるにきまってるじゃん。」
オレインとアニータは「なにを当たり前のことを言っているんだ?」と言いたげな顔。
そんなこと俺にもわかっているんだが・・・。
「アルバス。君たちの得意な武器を教えてほしい。」
今まで黙っていたセインが問いかけてくる。
「俺は基本的に前衛だが、魔法も使えるから後衛も担当できるぞ。」
「私は、光魔法で補助が得意だよ。」
「オレっちは前衛だけだな。魔法はからっきし。」
「そうか、わかった。先日アルバスには伝えたが、私は槍を、姉上は剣を使う。」
とりあえずこれで全員の使う武器はわかったわけだ。
さて、となると・・・。
「それじゃあ、ジェシカとオレインが前衛、セインが中衛、アニータが後衛で。俺は中衛と後衛を兼務する形にしようか。」
恐らくだが、これが無難だろう。
俺の提案に全員がうなずいてくれたのでこれでいこう。
あ、そうだ。
「オレイン、これ使ってみてくれ。」
「おん?これは?」
「昨日打った剣。まだ試作だけど、振りやすい剣がいいって言ってただろう?試しに使ってみてくれ。」
手渡したのは今朝作業場から持ち出した片刃の剣。
ショートソードとも、ロングソードとも違う。
刀身は刀より少し幅が広く、背が沿っている。
だが全体的に薄く、取り回しがしやすい。
「こりゃ軽くていいな。初めて持つ剣なのに、すごく手に馴染む。」
軽く剣を握り、何度か振り回すが、具合がいいようで笑みを浮かべている。
「これだったら、両手でそれぞれ扱っても十分立ち回れそうだぜ。」
「それならよかった。じゃあ、それを軸にして作るよ。」
「これで十分だぞ?」
「いや、まだ試作品だ。ちゃんと完成させた奴を今度渡すよ。」
いくら本人がいいといっても、俺としては半端なものは渡したくない。
今の技量でどこまでが半端かと言われれば、難しいが、それでも今できる最善で渡してやりたい。
「まぁ、アルがそういうなら、いいんだけどさ。」
「すまないが、私にも見せてもらってもいいだろうか?」
「ん?ああ、いいぜ、ほら。」
オレインが手にしていた剣をジェシカに手渡すと、目を見開いて驚いていた。
「これは、こんなにも軽いなんて・・・!」
握りを何度も確認し、おもむろに数回振る。
非常に速い動き。
だが、一応目で追うことができた。6回か。
「さすがだね、一瞬で6度、斬るなんて。」
「あ、アルバス、今のが、見えたのか?」
俺の言葉に驚いていたのはジェシカだけではなかった。
後ろで見ていたセインが唖然としていた。
「今の動きが、見えたと・・・?!そ、そんなばかな・・・。」
「いや、そんなこと言われても・・・あ。」
俺、やっちやったな、うん。
叡智の魔眼の効果でもあるだろうけど、そもそも俺自身の反応速度もあるからなんともだけど。
今の動きでも普通なら見えないのか。
気を付けよう・・・。
「君はどこまで規格外なんだ・・・。ところで、この剣は何でできているんだい?私の鑑定では見ることができなかった。」
あ、やっぱり鑑定使ってたんだな。
って、鑑定で見えなかった・・・?
そんな馬鹿な。
だってこれちゃんと錬成鉄で作ったよな
『えーっと、主様、それ、魔鉄製ですよ。』
突然頭にケルビムの声が響く。
そんな馬鹿な。
・・・一応見ておくか。
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種類:剣 名称未設定
銘:
品質:A
切れ味:AA
耐久値:150/150
説明:アルバスが鍛造した魔鉄製の剣。この世界に初めて生み出された特殊形状の剣で、風魔法との親和性が高い。魔剣には届かないが非常に強力な性能
付与魔法枠:5
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・・・完全に、やってしまった。
これ、陛下に献上した刀(試作品)より下手したら上の性能じゃないか・・・?
「あー・・・えっと、そうだな・・・企業秘密ってことで。」
「キギョウ・・・なんだ、それは。」
「いや、なんでもない、忘れてくれ。これはちょっと回収な、うん。」
有無を言わさずジェシカから剣を回収し、収納魔法にしまい込む。
「さっきから思っていたが、アルバスは収納魔法の使い手なんだな。」
やっべ、そういえばジェシカもセインも俺が空間魔法使えるの知らなかった。
なんだ、寝不足のせいなのか?
今日は色々やばい
「安心してくれ、俺も姉上も空間魔法の才があり、2人とも使うことが出来る。」
「あ、そうなのか。けど珍しいスキルって言う割に2人とも持っているんだな。」
よかった。少しほっとした。
「私の方はそこまで多くの収納は出来ないんだがな。セインは私より樽ひとつ大きいくらい、だったかな。」
・・・あれ、これ基準がわかんない。もしかして俺の収納魔法も異常なのか。
「そ、そうなのか、じゃあ俺のもセインくらいかなー」
とりあえず、この場はやり過ごそう。
今日はこれ以上ぼろを出したくないぞ・・・。
その後連携確認もつつがなく進み、今日の教練は終了となった。
前衛のジェシカとオレインはこの調子で行けば問題ないだろう。
あとは俺が中後衛向けに動きを調整すればいい。
「アルバス、すまない。昨日の話なんだが。」
「ああ、ジェシカとセインか。剣と槍を作るんだったよな。」
神妙な顔をして2人がこちらにやってきた。
うん、こういう顔をして近寄ってくるやつはあんまりいい話は持ってこない。
これは経験則だけど。
「俺の槍は、正直牽制用に使えれば構わない。素材はこれを使って欲しい。」
セインから渡された革袋には鉄鉱石とマナダイトが入っていた。
だが、量が多い。
「柄も金属製が希望か?」
「そこは任せる。取り回しやすいのが1番だからそこはアルバスを信用する。」
わーい丸投げだ。
・・・正直これがいちばん困るんだが、まぁいい。
それより問題はこいつの姉上だな。
ジェシカが手にしている革袋、あれ絶対おかしな鉱石入ってる。
直感が言ってる。
「アルバス、私に先程の剣を1本作ってくれないだろうか!!」
ほらきた。
困ったもんだよ、正直さっきの剣、あんまり表に出したくないんだよなぁ・・・というか陛下の耳に入ってみろ。
絶対さらに面倒になる。
なんだったらミネルヴァに気づかれないように速攻でしまったんだからな。
「あー、全く同じものは多分難しいぞ。その、あれに使った材料は、一応陛下からの依頼で研究してるもので・・・」
「なんと、アルバスはち・・・陛下からなにか依頼を受けているのか?」
くっ、また余計なことを口走った
そしてこいつも脇が甘い、今絶対父上って言いそうになったよな?
まぁ聞かなかったことにしてやろう。
「そこは、うん、あー」
「陛下からの勅命だ。いくらジェシカでも、伝え聞かされていないなら教える訳にはいかないだろう。」
渡りに船とはこのこと。
今の話を聞いていたミネルヴァがフォローに入ってくれた。
「学長先生・・・それは、確かにその通りですね。余計なことを言いました。謝罪します。」
「ああ、いや、それはいいんだ。」
素直に頭を下げるジェシカ。
正直、こんな真面目な姿を見ると作ってやりたくはなるがね。
「だが、先程の剣は非常に優秀だった。せっかくだ、1本ぐらい作ってやったらどうだ。」
見てやがった上に余計なこと言い出したよ、おい。
「なに、陛下には私からそれとなく言っといてやる。それに、ジェシカとセインの為に作るならば、陛下のことだからお許しになる。それどころから褒賞を出すかもしれないぞ?」
だから、なんでそんなに嬉しそうに言うんだ。
この学級が出来た理由のひとつは王族が関与しているのは明白だった。
恐らく、ジェシカとセインは王家の血筋なんだろうけど、公にできない理由もありそうだ。
とりあえず、聞き流す、聞き流す。
「わかりましたよ。じゃあ、同じ系統でいいんだな?」
「ああ、ありがとう、それで構わない。これは少ないが足しにしてくれ。」
手渡された革袋の中にはセイン同様鉄鉱石とマナダイトが入っていた。だが、その奥に一際目立つ銀色の鉱石が入っている。
現物を見るのは初めてだ。
「おい、これって」
「じゃあ、後はよろしくな、アルバス!」
笑顔のまま立ち去っていく2人を目で追いながら、どうしたものかと考える。
「ほう、ミスリルか。」
「困りましたね、こんな代物渡されたら手抜きできないじゃないですか。」
ミスリル。魔銀とも呼ばれる天然の鉱石で、魔力に対する親和性が非常に高い。
その上非常に頑強でしなやか。
仕上げるにはドワーフ達の秘伝が〜とか歴史書には書かれているが、そんなの知ったこっちゃない。
「どうせお前のことだ、ミスリルを加工したくて仕方がないのだろう。」
なんでこう俺の周りには心の内を読むやつばっかりいるんだ、まったく。
「正直に言えば、その通りですね。研究したくて仕方がないです。」
「ならば、それとは別にミスリルを融通しよう。」
「・・・何を企んでるんです?」
正直願ってもないことではあるが、怪しすぎる。
というか、ギルドマスターからの手紙を開けた時並に嫌な予感しかしない。
「何、簡単なこと。私の分も1本剣を頼みたいだけだよ。」
「あー・・・わかりました。受けますよ。それで、ミスリルを使えと?」
やっぱりそうだと思った。
というか、どうせこの後のセリフもわかってるんだ。
「いや、急がなくて構わん。いずれ出来る魔剣を私にも1本頼んだよ。」
ほら言わんこっちゃない。
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