刀匠、刀を打つ
いつも読んでいただきありがとうございます!!
更新頻度安定できるように頑張ります
材料も揃っている。
禁書庫で知識は得た。
あとはこれを形にする。
ミネルヴァ、アニータ、オレインを連れて引っ越したばかりの屋敷へ向かう。
と言っても引っ越した初日、中の確認だけ済ませてそのまま禁書庫にこもったせいでまだ実感はないが。
門をくぐり、屋敷へ入ると、オレインとアニータが止まったのに気づいた。
「どうしたんだ、2人とも。」
「いや、うん、近くだし見てはいたんだけどね・・・。」
「改めて中に入るとでかいなぁ。」
俺も初めて入ったときは唖然としたけどね。
冷静に考えてみると、鍛冶の設備とか考えれば実家より広いのかもしれない。
まぁ、屋敷だけだったら同じくらいかちょっと小さいくらいな気もする。
「申し訳ないですが、少し準備をしてくるので学長達は応接室で待っててもらってもいいですか?」
「ああ、構わない。オレイン、アニータ、付いてこい。」
ミネルヴァが二人を連れて応接室に向かう。
俺が受け取る前、管理をしていただけあって場所は把握しているようだ。
そういえば、食材もなにも買ってないや。
・・・何も考えずに禁書庫に籠もった自分が恨めしい。
とりあえず、身支度を調えるために風呂場へ。
着替えとかの荷物はまだ収納魔法で仕舞ったままだったので適当に見繕う。
ちゃっちゃと汚れを落とし、応接室に向かうと、なにやらいい香りがする。
「お、戻ってきたなアルバス。学長先生が色々準備してくれたぜ~。」
「おいしいよ、アルバス!一緒に食べよ!」
・・・一応、俺の屋敷だよね?
いつの間にか軽食を口にしている3人に吃驚だよ。
それに見知った2人が居る。
「オリバーさんにシグネトさんもいらしてたんですね。」
「お邪魔しております、アルバス殿。禁書庫から戻ったという知らせを受け、シグネトと共に馳せ参じました。」
「禁書庫内は飲食も出来ませんので、少しばかりですが食事をご用意いたしました。」
この二人ホント出来る人だよな。
暖かい紅茶と簡単なサンドウィッチがテーブルに並んでいる。
さっきから腹の虫がうるさい。
「ありがとうございます。早速いただきます。」
三日三晩飲まず食わずで居た体に暖かい紅茶が染み渡る。
サンドウィッチも具材があっさりしていてとてもおいしい。
脳に糖分が行き渡る。
手早く食事を済ませ、一息つく。
「それで、アルバス。この後は工房に籠もるのか?」
ミネルヴァが紅茶を片手に尋ねる。
俺は少し考える。
さて、どう答えるべきか。
従来のやり方なら、1本仕上げるのに数日は欲しい。
だが、禁書庫で得た知識を活用すれば、もっと簡単に仕上げることが出来るはずだ。
今までの経験、この1ヶ月ちょっとで理解出来た鍛冶術の知識、新たに知った方法。
それを総合的に判断すれば、出来る。
「そうですね、とりあえずは工房で作業を始めます。ただ今回はこもる必要は無いかもしれません。」
「ならば、善は急げ、だな。」
全員が立ち上がり、工房へ。
その途中、書斎に立ち寄りすぐには使わないと思っていた素材を取っていく。
ついでだから、実験もしてしまおう。
工房の扉を開くと、またここでオレインとアニータがフリーズ。
まぁ一般的な鍛冶師の工房でもこの規模の機材を揃えているのは本当に極一部だろう。
それを1人の屋敷にあるって時点で異様だわな。
「元お抱えの鍛冶師が使っていた屋敷だからある程度覚悟してたはずなのにね・・・。」
「オレっち、びっくりしすぎてなんて言っていいかわかんないわ、これ。」
なんも言わんでいいよ。まったく。
苦笑いを浮かべつつ、俺は炉に火を入れる。
収納魔法から鉄鉱石を取り出す。
炉はまだ十分に暖まってはいない。
では、どうするか。
「『粉砕』」
土魔法の派生『粉砕』。
地面や岩壁を粉砕し開墾する為に作られたとされる魔法。
これを応用して、鉄鉱石を粉々にする。
そう、砂鉄のように。
今度はマナダイトを取り出して同じように粉砕する。
金属容器の中に入れられた2つの鉱石粉。
ここからが、本番だ。
「ふう・・・行くぞ・・・!!」
容器を手に取り、魔力を流す。
容器の中にある鉱石粉全体に魔力が広がっていく。
徐々に徐々に、それぞれが震え、纏まり、明滅する。
熱を加えていないのに、溶け始める。
「これは・・・?!」
間近で見ていたミネルヴァが目を見開く。
今それに反応する余裕はない。
まだ、程度が分からない。
少しでも加減を間違えれば、失敗する、そう感じる。
タイミングを見極める。
魔力が、全く違う2つの鉱石を繋ぐ。
合金とも違う。
全く別の金属へ生まれ変わっていく。
だが、きっとこれは間違い。
いや、正しくはある種の正解。
俺が見つけた『魔鉄』というものへの1つの答え。
そして、それが正解だと言うように頭の中でチリチリと何かが騒ぐ。
スキル同士が共鳴しているのか。
スキルがレベルアップしてるのか。
そこまで確認する余裕はない。
だが、わかる。
「『創造鉱石』」
魔力が収束する。
鉱石粉同士が結合し、ひとつの塊になる。
濃い灰色のように見えるが、鈍く光っている。
「出来ました・・・!!」
「お前は、何をしたんだ・・・何が、出来た・・・?!」
出来上がった物をミネルヴァが食い入るように見つめる。
その目に魔力が帯び、鑑定を使っていることが分かる。
これがなにか理解し、言葉が出ない。
表情が物語っている。
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種類:魔鉄
名称:マナメタル
レア度:S
説明:鉄鉱石とマナダイト鉱石から生まれた金属。魔力親和性が高く、加工難易度は非常に高い。
鉱石理解により追加情報が解放:
→魔力精錬と創造鉱石によって生み出された金属。強化魔法との相性が非常に高い。熱加工と合わせて魔力精錬を行うことで加工は可能。
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出来たのだ、魔鉄が。
予想通り、魔鉄は金属の名称ではなかった。
恐らく、これは過去の鍛冶師達が生み出した技術。
異界からもたらされた刀をこの世界で生み出すために作られた技術。
過去の鍛冶師たちの執念に頭が下がる思いだ。
「アルバス、よくやった・・・!!」
ミネルヴァも見たのだろう。魔鉄であるということを理解したからこそ、賞賛の声をかけてくれる。
だが、ここからがスタートなんだ。
「ここから、まずは刀を打ちます。」
「待て、魔鉄は出来たんだ、だとしたら、まずはジュワユースを復元するほうがいいのではないか?」
もっともな疑問だが、そういう訳には行かない。
この魔鉄ではあの剣に合わない。
「いえ、この魔鉄ではジュワユースの復元は無理です。」
「それは、どういう意味だ?」
意味が理解できないのだろう、ミネルヴァが困惑している。
そりゃそうだろうな。
種類に魔鉄と書いてある。
ならば出来ると思ってもおかしくはない。
だが、特性が違う。
「今回のことでわかりました。魔鉄は、何種類か存在します。」
「・・・なるほど、だからこの魔鉄は合わない、と。」
「ええ、そうなります。なのでまずは、陛下から依頼があった刀から、と。」
「・・・陛下からの依頼って、アルバスほんとに貴族になったんだ。」
「まぁ、アルバスだしな。そうなってもオレっちは不思議じゃないとおもうよ。」
好き勝手言ってる二人は放っておこう。
そういえば、いつのまにかオリバーとシグネトが居ない。
恐らく自分の仕事に戻ったのだろう。
それはそれとして俺も仕事を続けよう。
取り出した魔鉄の塊を鉄鋏で掴む。
炉の準備は出来ている。
魔鉄を炉にくべる。
だんだんと赤く熱せられる。
だが、一向に適温が伝わってこない。
鉄鋏越しに魔力を流す。
「『魔力精錬』」
一連の加工で新たに身につけた技術。
魔力が魔鉄を覆い、浸透していく。
徐々にだが魔鉄の温度が上がっていくのがわかる。
室温も上がったのだろうか、じんわりと汗が出る。
鉄鋏越しに、適温が伝わる。
金床に取り出し、槌を振るう。
だが、固い。
金属が変成した為か、通常の鉄やこの間造った鋼よりも、固い。
何度も槌を振るってやっと延ばせた。
魔力をその間もずっと送り続けている。
温度が下がったところで再度炉に入れる。
取り出してまた叩く。
炉に入れる。
叩く。
炉に入れる。
叩く。
繰り返し、繰り返し、叩く。だが、普段なら延ばし終わる段階でも、終わりが見えない。
鍛造の行程で何か間違いがあるのか?
転生前の行程は通用しないのだろうか。
今までの金属との違い。
魔力と高い親和性を持っている。
これは、使う槌の問題もあるのかもしれない。
だが、今は止める訳にいかない。
それから数時間をかけて打ち続け、やっと納得のいく状態へ。
だが・・・
「・・・出来ました。」
「これが、刀・・・素晴らしい・・・!!」
ミネルヴァは出来上がった刀を見て、驚き、見入っている。
全体的に銀色に輝く刀身。
この国で主に使われるショートソードやロングソードと比べて薄く、それでいてしっかりとしている。
だが、俺は自分の中で納得できないで居た。
「鑑定。」
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種類:打刀
品質:D
切れ味:C
耐久値:200/200
説明:アルバスが鍛造した魔鉄製の刀。
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すごく頑丈ではある。ただ、それだけだ。
これは俺が求めたものとはかけ離れているし、献上するなんて出来ない。
「失敗です。」
「何、どこがだ?十分すぎる切れ味に頑強さでは無いか。」
疑問に思うのはわかる、この世界の量産品はこれよりもランクが落ちる。
それでも、俺の他の剣より落ちるんだ。
だから、俺からしたら、失敗。
鍔はつけず、柄をつけて仕上げる。
「俺としてはもっとしっかり仕上げてから、献上したいところですが、取り急ぎ1本仕上げろとの命ですので、こちらを持っていってください。」
正直、昔の俺ならすぐに打ち直しただろうが、今の力ではこれが限界だ。
俺が刀を打てるということを示すためにも、一度献上する必要がある。
刀を受け取ったミネルヴァは釈然としない表情だが、ひとまず納得したようだ。
「わかった。私が預かりしっかり届けるとしよう。さて、アニータとオレインも疲れただろう。今日はこれで帰るとしよう。」
気がつけば2人は椅子に腰かけて眠っていた。
時計を見ると既に夜だ。
そりゃ眠くなる。申し訳ないことをしたな。
ちょうどほかの仕事が終わったオリバーとシグネトが戻ってきたようで、2人を抱えて連れていく。
「ああ、そうだ。冒険者ギルドから預かり物がある。詳しくは応接室にある荷物を確認してくれ。」
ミネルヴァが帰る間際、そう言い残して言った。
この間の報酬とかその辺だろうか。
正直、このままもう一仕事没頭したいところだが、3日徹夜だったこともあり疲労が限界を迎えていた。
とりあえず荷物を確認しようと、応接室入ると、目を疑いたくなる状況だった。
「・・・なんだこりゃ。」
木箱に収められた素材の山、山、山。
ついでに革袋がどっさり積まれている始末。
テーブルの上には申し訳程度のサイズをした封筒が1通。
「こりゃ、俺いつ寝れるんだ・・・?」
今日も寝れない夜になりそうだ。
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