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刀匠、調べる

誤字報告感謝です

修正させていただきました。

改行に関してご意見いただきました。

一部は1行改行を増やしています。

最終的には全体を統一する予定ですがまずはテストで。

ハグれとの遭遇戦から数日。


ここ数日、図書館に籠もり調べ物をしている。

実家では知りえなかった知識もあるため、勉強も兼ねてではあるが。

探しているものは、魔鉄についての記述。

これはミネルヴァとフェゴールから依頼があった、魔鉄の精錬、そして最終的には魔剣ジュワユースの再鍛造。

その為には古い文献を漁るしかない。

もちろん、ここはミネルヴァが徹底的に調べているだろうということはわかる。だが、それでも解釈違いや、俺だからわかることがある可能性を考えて、である。


古代文明の文献を探し、鍛冶に関する文献を読み、該当する鉱石を探す。

今まで見たこともない鉱石、覚えのある鉱石。

かなりの種類が存在するが、どれがそれに該当するのかは定かではない。

正直、魔鉄に関する記載がほとんどない。

確かに古い歴史書に記載がある魔剣の記述には魔鉄の文字はある。

だが、それを精錬・鍛造する方法はどこにもない。

他の可能性も考えていろいろな文献を読みあさる。


古代文明、エルフの秘術、ドワーフの歴史、魔族の成り立ち

関係がなさそうでも可能性を求めて調べる。

アニータとオレインも時間を見つけては手伝ってくれている。

その最中に、それぞれに適した技術が記された本が見つかっては読み込むという脱線もあったが、それはまぁいいとしよう。


授業に関しては、午前の座学だけは受けている。

午後の実技教練は、俺のステータスを加味して自由参加でいいということになった。

アニータとオレインは教練に参加している為、終わったあと時間があれば合流している。

しかし、いくら調べても関連する情報が無い。

ここまで来ると、失伝したというよりも、暗号か何かで記されている可能性も考えるが、正直手がかりが全くと言っていいほどない。

さて、どうしたものか。

図書館の机の上に鉱石図鑑を広げたまま、頭を抱えていると、図書館の扉が開かれる。


「ああ、やはりここにいたか、アルバス。」


やってきたのはミネルヴァ。

手には何やら書類を持っている。


「学長、どうされました?」

「その表情だと、結果は芳しくなさそうだな。」

「ええ。魔鉄以外の鉱石や金属に関する記述はある程度見つけましたが、今のところは何も手掛かりがない状況ですね。何かほかに条件があると思うんですが・・・。」

「そうか。あとは王立図書館の禁書庫の閲覧許可を取れればまた可能性はあるか。」

「禁書庫、ですか?」


禁書庫。

王立図書館にある区画であり、一般市民は入ることは決して叶わない場所。

基本的に王族やそれに準ずる貴族、または王族から許可を得た者のみが入ることが許される。

保管されているものは門外不出の王族の歴史や過去の文献、秘匿された物がほとんどと言われている。

だが、禁書庫の資料は持ち出すことは出来ない。


「ああ。まずは、王に謁見する必要があるがな。それに、お前が造った魔法の袋の一件もある。」


そういえばそんなこともあった。


「わかりました。」

「というわけで、行くぞ。」

「え?」

「王への謁見、このあと取り付けてある。ほら、行くぞ。」


ちょっとまて、流石に急すぎるから。

なにも準備も出来てないんだが?!


「いや、急に言われても、何も準備なんてしていませんよ?」

「準備もなにも、うちの学校の制服は充分に礼服を果たす。それにお前から預かった魔法の袋は既に王宮に提出済みだ。これでほかになにか準備がいるか?」


いやまて、まだ感応石を取り付けてないやつだよね?それでいいの?そんなことなら準備しておけばよかった・・・材料は手持ちにあるけど・・・いやそれよりもなによりもだよ


「正直、心の準備がまったくなんですが。」

「そんなものどうにでもなる。うだうだ言ってないで行くぞ。」


有無を言わさぬミネルヴァに、足掻いても無駄だと悟りついて行くことに。

こんなことなら献上用に1本剣を拵えておけば良かったと本気で思う。


王宮へ向かう道中、謁見に関する基礎知識を叩き込まれる。

王の許可がないうちは跪いたまま顔を上げてはいけないとか、許可されない限り発言してはいけないとか。

とにかくいいと言われるまでは跪けってことだろう。

そんなこんなでいよいよ謁見。

初めて入った王宮は豪華でありながら、どこか控えめにも見える印象だった。

もちろん来た人を圧倒する彫像や歴代の王族を描いた肖像画は多数ある。

だがそれは王族の威厳を示す以上に華美にはなっておらず、気品を感じさせる配置だった。

謁見の間の大扉の前でミネルヴァと並んだ時、今まで感じたことがない緊張感に包まれた。


「お前でも緊張するのだな。」


喉の奥でクツクツと笑い声を噛み殺すミネルヴァ。

これで緊張するなって言う方が難しいわ。


「ミネルヴァ=フォン=ルーネスタリア公爵閣下、並びにアルバス=セルタニス、御入場!!」


大扉の内側から声が響く。その直後、大扉が開かれ、真っ赤な絨毯が敷かれた謁見の間が目の前に現れる。

中央の赤絨毯から少し離れて、両脇にはこの国の重鎮達が立ち並び、絨毯の先、1段高くなったところには玉座が据えられている。

ミネルヴァの後についてまっすぐ絨毯を進み、段より少し離れたあたりで跪く。


「国王陛下、本日は拝謁をお許しいただき恐悦至極に存じます。」

「ミネルヴァ、アルバス、両名面を上げよ。」


玉座から掛けられた声で上を向く。

現ディルソフィア王国国王、ガイアス=エル=ディルソフィア。

このディルソフィア王国はこの人が即位してから急激に発展したと言われている。

即位して20年余り。国土の再分配を行い土地の開発を進めた。

近隣諸国との停戦締結や同盟国との国境線再開発。

法衣貴族を封地入りさせることで東西南北の広大な土地をそれぞれに管轄させることで広大な土地を広範囲に開発することが出来た。

今代の国王は賢王と称えられている。


「して、その方がアルバスか?」

「はっ。アルバス=セルタニスと申します。陛下のご尊顔を拝謁する栄誉をお与えいただき、ありがたく存じます。」

「クックックッ・・・グレイの息子がそのような堅い言葉で話すとはな。のう、ミネルヴァ。」

「『銀灰の狼』と恐れられたセルタニス伯の血は色濃く継いでおられますよ。」

「ふむ、そうかそうか、それは重畳。それで、例の件、お前が引き受けるというのは本当か?」


陛下の視線が鋭くなり、値踏みするようにこちらを見つめる。


「はっ。冒険者ギルドマスター、及びルーネスタリア公の御二方より命を受けております。微力ながら王家の為、この国の為に身命を賭して励む所存にございます。」

「ふむ、そうかそうか、あいわかった。しかしな」


不敵な笑みを浮かべる。あ、すげぇ嫌な予感。


「まだ、お前の実力を我が見ていない。故に、まずは一振り仕上げて見せよ。」

「一振り、と申しますと、剣を1本拵ろ、ということでしょうか。」


うわ、来た。

魔鉄を探して国宝である魔剣を直すことが依頼の内容だがそれをこなせる力量があるか見極めると。

これ生半可なもの作ったらダメなやつじゃん。けどあんまりいいものを作ってもこの先のことを考えるともっとダメな気がするぞ。

正直、国の為とか言ってずっと同じことの繰り返しはもう嫌なんだよな。

国の為ではなかったが、自分の作りたいもの以外を作らされる苦行はもうしたくない。


「剣、そうだな、これも、確かに剣だな。ゼピュロス、例のものをアルバスへ。」

「陛下、本当によろしいのですか?あれはこの国において唯一残った一振りですぞ。」


脇に控えた男が陛下に確認する。

どういうことだ?なんかそんなに貴重なものなのか?

この間の魔剣と同等かそれ以上、と?


「控えろ、アーノルド。この件は朝議にて決められたこと。お前が陛下の決定に口を出していいものでは無い!」

「よい。アーノルドも国を思ってのことだ。だが、ゼピュロスの言う通り、これは決まったことだ。」

「・・・承知致しました。」


もう一方で控えていた男に諌められ、アーノルドと呼ばれた男が下がる。

おそらくこの2人とも宰相なのだろう。

もう一人の男が布に包まれた物を持ってくる。

長さはおおよそ80cmくらいある。細長いそのフォルムはどこか見覚えのある印象。


「第一宰相のゼピュロス=アルガナスと申します。これは王家が代々守ってきた由緒ある物です。くれぐれも、粗雑な扱いの無きように。」

「は、はい。」


ゼピュロスから手渡された物を受け取る。

手に持った重さ、太さ、もしかして、これは


「もしかして、刀・・・?」

「ほう、よくわかったな。この国には既にこの一振りを置いて他に存在しないのだが、本当にお前は博識だな。宝刀『景虎』という。」


包まれた布を取り払う。そこにあったのは、見間違うはずもなく、刀だった。

転生するまで幾度も打ち、幾度も仕上げた刀。

この世界に来てからやっと手にすることが出来た。

黒い鞘に施された意匠は銀糸で虎の様な模様が縫われている。


「え、ええ、以前、聞いたことがあった形状と似ていたので。」


正直こっちの世界で読んだどの文献にも未だに刀の記載は見かけない。

だが、短刀を造ったとき、鑑定結果が正常に出たことを考えれば、類似する物、同一の系統の物が存在することは考えていた。

どういう経緯で造られたのかは不明だが、実物が目の前にある。


「お前のその知識量、本当にすごいな。刀は我が知る限りこの国にはその宝刀ただ一つしか残っていない。そこでお前には、刀の技術を復活させて欲しい。」


あれ、おかしいな。魔剣の打ち直しと魔鉄の精錬は?


「なに、今おぬしが持っている景虎は魔鉄製だ。同じ材料で造るには魔鉄の精錬が必要になる。結果的にやることは変わらぬよ。」


これ、ただただ仕事を増やされただけじゃん。


「まずは魔鉄製ではなくても構わん。刀を一振り、我に造って持って参れ。そのできばえを見ておぬしの実力を判断する。」

「・・・わかりました。私の出来る最大限を持って作り上げましょう。」


鋼を使った刀は作れる。まずはそれを使って献上するとしよう。


「陛下、併せて奏上いたします。此度、このアルバスは先日献上いたしました魔法の袋を作成し、技術を復活いたしました。」


ミネルヴァが伝えると同時に、準備されていた魔法の袋が宰相から手渡される。


「うむ、これに関しても事前に見ておる。誠に素晴らしい知識と技術力だ。」

「ありがとうございます。」

「この功績を称え、アルバス=セルタニスに準男爵を叙爵する。」


・・・はい?なに?なんて言った?


「あと数年もすれば他家へ婿入りするか騎士団へ入るかなのだ。今のうちに叙爵し、国へ尽くすが良い。」


この人、まじでやり手だ。

刀を引き合いに出したのも、ちょっとやそっとでよそに行かせないようにする為だし、叙爵したのもそうだ。別に俺は婿入りは考えてない、といってもグレイがもしそれを考えていれば話は別だが。

まんまとはめられた気がするが・・・


「ありがたき幸せ。不肖、アルバス=セルタニス、身命を賭してこの国の為、陛下の為に捧げます。」


なんか裏がありそうだけど、とりあえず強大な後ろ盾ができたって思うことにする。

貴族の礼はお粗末だったかもしれないが無事謁見は終わった。

渡された宝刀は丁寧に布に包み収納魔法で仕舞う。


「アルバス殿、陛下からの言伝がございます。」

「拝聴いたします。」


謁見の間を出た後、控え室へ下がった際、宰相のゼピュロスが箱を手に持ってやってきた。


「此度の叙爵に伴い、昨日ルーネスタリア公から渡した屋敷は正式に贈与することとする。また、魔法の袋の生産技術復活に伴い報償として白金貨10枚。さらに準男爵の俸禄として年間白金貨10枚。王立図書館内禁書庫の自由閲覧権限を与える。貸与した宝刀は厳重に扱い、決して破損させぬように。以上です。」


うん、理解が追いつきません。

手渡された箱の中には叙爵に伴う書類に勲章、屋敷の権利書、白金貨合計20枚が詰まった王家の紋章入りの袋、王家の紋章入りの許可証。


「ああ、それと、今のところは貴方は学生が本分となります。貴族としての義務は成人を迎える3年後からで構いませんが、まずは知識をさらに蓄え、励んでください。」


貴族の義務とはそのままで、国に貢献すること。

現状出来ることとしては軍属に付き、国のために尽くすか、俺の場合は鍛冶術を使い奉仕すること。

必要に応じて生産し献上することで義務を果たす形になるだろう。

準男爵に対する俸禄として破格とも取れる金額なのはこれも見越してのことだろう。


「承知いたしました。」

「全く、お前の扱いはここでも特別だな。」


ミネルヴァが白い目を向けてくる。

そんなこと言われても困ります。


「そんなこと言われてもですね・・・。とりあえず、今日のところはこのまま寮に戻ります。」

「ああ、わかった。ああ、そうだ。禁書庫は基本いつでも入ることが出来る。気が向いたら向かってみるといいぞ。」

「そうしてみます。」


王宮を後にし、寄宿舎へ戻ってから今後のことを考える。

数日後には引っ越しも控えている。

といっても荷物はそんなにない。

これからやるべきことを纏める。


・魔鉄の精錬方法を調べる。精錬する。

・刀を打つ。

・ジュワユースを再鍛造する


この3つが今受けていること。

それらをこなすために必要なことが


・禁書庫で魔鉄に関する書物を見つける。

・引っ越しを済ませて機材の確認をする。

・精錬、再鍛造に必要な素材を調達する。


まぁ結果的には禁書庫に入らないと次の段階に進むことは叶わない。

だが、禁書庫で手がかりを得たとして、手持ちの機材で対応出来るかが直ぐはわからない。

つまり、まずは機材の確認を優先するべきかもしれない。


「まずは、引っ越しを済ませよう。屋敷内の機材を確認して、禁書庫へ向かう。それで手がかりが見つかればいいんだけど。」


それから2日後。


休日の今日は引っ越しの日。

収納魔法で荷物を全て仕舞い、屋敷へ向かう。

寄宿学校の敷地から出てわずか数分。

西口の出口と寄宿学校、そして王宮前通りからほど近い場所にある一軒の屋敷。

ここが、今度から俺が暮らす、俺の屋敷。


「やっぱり、でかいな、この屋敷。」


門の前で見上げるようになりながら呆然とする。

正直わずか12で暮らすような建物ではない。

本気でハウスキーパーを雇わないとだめだな、これ。

俺一人では到底片付けなんて出来やしない。


門扉に受け取っていた鍵を差し込み、捻る。

通用口が開き、中に入る。

芝生が敷き詰められた広い庭。

建物の玄関から中に入ると、広いエントランスホールが現れる。

地上3階建て、地下2階建ての豪邸だった。

・・・うん、これ、準男爵じゃあ余りありすぎます。

隣接した建物へ向かうと、そこは想像通り作業場だった。

精錬用の炉が数機、金床、ハンマーに鉄鋏。

鋳造用の粘土など、必要な物はだいたいそろっている。

あとは、根気よく作業をする必要はあるが。


本館の1階には書庫があったが、ここは王立図書館のあとに確認することにする。

建物の中は掃除が行き届いている。

もしかしたらなにか保全用の魔法でもあるのかもしれない。

部屋の数も多い。そのうち、使用人でも雇わないと建物の管理も出来ない。


屋敷の中を回り、部屋の配置をだいたい確認し終えた。

書斎に当たる部屋に必要な荷物を配置して、取り急ぎ屋敷での作業は終了。


「さて、早速王立図書館にでも行きますかね。」

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