刀匠、焦る
誤字報告ありがとうございます。
過去投稿した分の誤字に関しましては修正いたしました。
また、一部内容に齟齬が生じていたため添削した部分がございますことをご了承ください。
話の本筋には特に影響しない部分でございますので説明は割愛いたします。
翌日からは授業が始まった。
寄宿学校のカリキュラムは週に5日間。
転生前の学校と大して変わらない。週末の二日間はお休みになっている。
ミネルヴァ学長自ら教鞭を振るい、座学の講義を行う。
基本的な算術や文字の読み書きは入校する前に貴族の家では家庭教師から、平民は寺子屋のような街の学問所で教わっているため、そういった科目はない。
まずはアルバスたちが暮らすこの国『ディルソフィア王国』に関する歴史、地理を知る『王国学』。
基本的な軍隊全体で動くときの『兵法学』。
黒獅子学級と戦乙女学級は主にこの学問を重点的に学ぶことになる。
騎士団などの指揮系統を学んだり、兵ごとの役割を主に学ぶ。
怪我の応急手当や治療法を学ぶ『簡易医術』。
魔法の基礎的な知識を学ぶ『魔法学』。
大まかな座学がこれらである。
そのほかに学ぶのが各々が選択する実技教練。
黒獅子学級、戦乙女学級は主に各自の得意とする得物に関する教練を選ぶことが多い。
商才学級は主に算術や医術の追加教練、商いに関する教練を選ぶことが多い。
不死鳥学級は全員まったく別の授業を選択してる。
アニータは魔法薬学と聖魔法学を選択しているようだ。
魔法系統の才能があるのだろうか。確かに、豪商から登り詰めた家柄からすれば、特殊な才なのだろう。
寄宿舎で向かいの部屋になったオレインは近接格闘術と槍術を選択している。
武芸の才能があるのだろうか。今度冒険者の仕事に行くとき誘ってみようか。
他の面々も各々が別々の教練を選択している。
銀髪の2人は槍術と光魔法、闇魔法を選択している。
俺はといえば、鍛冶術と剣術を選択することにした。
もちろん家にいたころから剣術は習っていたし、鍛冶術を選択するのは俺のまだ知らないことがあるかもしれないという淡い期待だ。
剣術で習うことがなくなったら他の教練を選ぶ予定だ。
午前中は座学、午後は実技を含む教練。
1日の教練が終わった後、空いていれば鍛冶施設を借り、空いていなければ自室で収納魔法を付与するための実験。
魔法陣の形成の仕方、魔力の流し方。色々と試行錯誤をしているが、なかなかうまくいかない。
休日は冒険者ギルドで依頼を受けて金を稼ぐ。
登録をした段階でランクは最低のGランクからスタート。
俺としても別に目立ちたい訳ではないから、そこまで急激にランクを上げる必要もない。
Gランクの内に受けることが出来る仕事は限られている。
・門外周部に群生する薬草の調達
・王都下水道区域の清掃
・グラスラビットの討伐、納品
・・・一部雑用みたいな仕事も混ざっているが、成り立ての冒険者が無理をして命を落とさないようにするための防止策なのかもしれない。
下水道区域の清掃となると水魔法をしっかり使えないと色々面倒な気がする為、今のところ選んでは居ない。
においとかは風魔法でどうにかなるだろうけど・・・まぁ、その話はまたにしよう。
主に俺がこなしているのはグラスラビットの討伐納品。
G未満の脅威度が低い魔物を総称してランク外という。
このグラスラビットはランク外で、ほぼほぼ動物と変わらないが繁殖力が高い。
そして何より、割とこいつの肉がうまい。
その為、この依頼はほぼほぼ常設依頼として設置されているらしい。
打ち直したショートソードや短刀を使うと、正直ごまかしが効かなそうなので、この間追加で買った量産品のショートソードを使っている。
それからステータスプレートを毎度隠蔽するため忘れがちだが、全体的にステータスが同年代よりも高い。と言うより下手したら大人より高いかもしれない。
その為、自分に負荷をかけて力を押さえるようにしている。
正直他の人のステータスを見たことがないのと、まだ教練でも同学年の生徒と打ち合いを行うほどのことが行われていないため、判断が難しいんだが・・・。
だが、この方法にもいい効果もあった。
自分に負荷をかける為に、魔力を体に循環させ、筋肉の動きを阻害する。
身体強化の魔法とは逆の効果を発揮する方法の為、移動速度も力もある程度落ちる。
それに併せて、普段実家で行っていた魔力循環の訓練よりも多い魔力を使っている為か、魔力制御の効率が上がる。
座学中や実技教練中も同様に負荷を掛けているが、魔力を使っている為察知されると面倒だなと思っていたのだが、ここで役だったのが隠蔽術。
これ、ステータスだけじゃなく魔力の流れも隠蔽出来るらしい。
こんなに万能なスキルで本当にいいのかとちょっと心配になるが、正直今の環境では助かる。
それから、偶にだが薬草採取の依頼も受けている。
これは種類が豊富だがだいたい外周部に群生している。
ただ、見た目が似ている物が多いため、普通にやると時間が掛かって仕方がない。
まぁ、鑑定スキルを持っているからそれを駆使してこなすわけだが。
それと、身体負荷を毎日続けていた副産物で、魔力を体の一部分に集中して強化することも出来るようになった。
うまく使うと視力を強化したり、聴力を強化したりも出来て、薬草を探すのも、グラスラビットの足音を聞き取るのも容易になった。
毎日のルーティーンをこなす。
寄宿学校がある日は授業を受け、学級の面々と話をする機会も多くある。
新しく知った面々もいれば、未だに口をきいたことがないものも居る。
メンツ少ないのにね。まぁ精神的バリケードを張っているやつもいるからそれは追々か。
最初の内は剣術を選んでいたが十分と思って弓術の教練に変更した。
休日に依頼をこなし、帰りに消費した鉱石を買い込む。
そんな生活を繰り返すこと、1ヶ月・・・
冒険者のランクはFに上がり、Gランクの魔物討伐依頼を受けられるようになった。
レベルはまだ上がっていないが、魔力制御がまた少し向上したように感じる。
鋼の精錬にも成功し、そろそろ鋼を使った武器の制作に入れそうだ。
刀の鍛造も始めたいが、鍛冶施設を借りることが出来る時間のことを考えると、間に合わない為まだ先送りにするしかない。
教練も順調にこなしている。そろそろ学科試験が控えているが、何とかなるだろう。
他の学級とは違い、貴族間の派閥争いのようなことは起こっていないし、それなりに良好な関係を築いて居ると思う。
アニータとオレインの2人と良く行動することが増えた。
冒険者の依頼も今では3人で受けている位には仲良くなった。
アニータが聖魔法を取得していてくれたおかげで後衛を任せることが出来るから、魔物討伐も無難にこなせている。
素のステータスで言えば俺個人でも十分にこなせるのだが、これはまた別のお話。
ここまでは順調に来ている、来ているのだが・・・
「駄目だ、今日も失敗だ・・・!」
ベッドに勢いよく倒れ込む。
今日もまた収納魔法の付与に失敗した。
これで、30回目の失敗。
正直何が原因かはっきりわからない。
基本的に付与魔法を使う場合は付与する対象に対して魔法を唱える一時的な付与方法と、短刀に施した魔法陣を刻み込む永続方法の2種類がある。
後者は今までは広く知られていなかったわけだが、マナダイト鉱石の製錬でそれを可能にした。
実際に現存する魔法武器も恐らく同じ原理か、もしくは似た方法を使っていると推測することは出来る。
収納魔法、ひいては空間魔法を使用できる人は今の時代に一体どれくらい居るかと言うほど貴重。
実際今行っている実験がうまくいけば、それこそこれから先冒険者の仕事を増やすことが出来る。
転生してからこっち、一度も感じたことがない、焦燥感。
俺は、焦っていた。
失敗を積み重ねて成功する。これは物作りの世界では当たり前のこと。
それもあって、転生前、何度も何度も失敗を繰り返し、その先で成功してきた。
だが、今回は完全に詰んでいる。全く先が見えない。困った。
「ちょっと、休憩がてら別のことをするか・・・。」
おもむろに収納魔法を使い、中にしまっていたメラダイトを取り出す。
人前ではおいそれと使えない収納魔法だが、自室では問題ない為、量がある物は収納魔法でしまっておくことにした。
「これの精錬方法も、未だめどが立っていないしな・・・。」
メラダイト鉱石は熱に非常に強く、冷気に非常に弱い。
加工に必要な錬金術は未だによくわかっていない。
ベッドに寝そべったまま鉱石を頭上にかざす。
「錬金術、か・・・。一体全体どうするんだかな・・・。」
何となしに今までやったことがないことをしてみようと、両手で鉱石を包み込む。
鉱石を挟んで円が出来る。
その状態で何となく魔力を鉱石に送ってみる。
ゆっくり、ゆっくり。身体負荷とは違い、純粋な魔力を。
だんだん、だんだんと魔力が鉱石に浸透していく。
すると
「・・・ん?なんだ?」
薄らと、光った
「?!」
そのまま意識はメラダイト鉱石に向けたまま、魔力の量を少しだけ増やす。
そして、浸透させた魔力を鉱石の中に留めるように循環させる。
ピンと来た。
確証はない。だが、合点はいった。
「そうか、錬金術も、基本は魔法と一緒か。つまり・・・。」
魔力の流れを少し早くする。だんだん、だんだん。
そうして鉱石の中に魔力が満たされ、更には送り込んだ魔力が暴れ出す。
だんだん、だんだんと鉱石自体が赤く輝く。
「これは、成功、なのか・・・?」
メラダイトは魔力を込め始めたときと比べて明らかに強い光を放っている。
確認のため、鑑定を使う。
————— ————— ————— ————— —————
種類:鉱石
名称:メラダイト鉱石
レア度:E
説明:鉱山から採石出来る鉱石。熱に強く冷気に弱い
鉱石理解により追加情報が解放:
→高温をものともしない為炎熱系の付与魔法と相性がよく、凍結系の付与魔法と相性が悪い。
熱に非常に強い為、加工には錬金術が必要。
→加工可能
————— ————— ————— ————— —————
説明の下に項目が増えていた。加工可能。
考え方は合っていた、ってことか。
試しに自分自身に鑑定をする。
————— ————— ————— ————— —————
Name:アルバス=セルタニス
Age:12
Lv:21
種族:人族
職業:冒険者
体力:2100/2100
魔力総量:1200/1300
力:3200
知力:1500
敏捷:1300
器用さ:5200(+600)
運:850
スキル(基礎スキル):成長補正(特大)、魔法適正(特大)、武術適正(特大)、技能適正(特大)、魔獣理解(中)、???(???)、鉱石理解(大)
スキル(術技スキル):剣術Lv6(MAX10)、抜刀術Lv1(MAX10)、火魔法Lv7(MAX10)、風魔法Lv7(MAX10)、土魔法Lv7(MAX10)、空間魔法Lv3(MAX20)、付与魔法Lv3(MAX20・New)、隠蔽術LvMAX、
鑑定LvMAX、鍛冶術Lv8(MAX20)、錬金術Lv1(MAX20・New)
スキル(加護スキル):女神の寵愛、鍛冶神の寵愛、剣神の寵愛、魔神の寵愛、???
————— ————— ————— ————— —————
「錬金術のスキルが発現しているのは予想通りなんだが、加護に不明スキルが増えてるぞ・・・?」
魔力総量が上がっている、鍛冶のレベルも上がっているし、付与魔法と錬金術までは予測が出来たが、なんじゃこりゃ。
前に出た不明スキルもまだ確認出来ない。
とりあえず、考えてもわからないから続けて錬金術を鑑定
————— ————— ————— ————— —————
スキル:錬金術
Lv:1 MAX20
詳細:無機物に対して魔力を流すことで加工することが出来、条件を整えることで性質を変成させることが出来る。一定レベルに到達すると技能補正や特殊技能を習得する。
獲得技能:消費魔力減少(Lv1)
————— ————— ————— ————— —————
技能も新しく習得していたみたいだ。
消費魔力減少と言うことは、今みたいに鉱石に対して魔力を流す量が少なくて済むっていうことかな。
それに、鉱石だけじゃなく無機物全般と言うことは、鉱石の錬成だけじゃないわけだな。
ちょっと色々試してみたい気もするが、今は辞めておこう。
メラダイトを机の上に置き、もうひとつメラダイトを取り出す。
同じように魔力をメラダイトに流す。
すると先ほどよりも少ない量で同じように赤く輝き始めた。
「なるほどなるほど、だいたいこのくらいの量ってことだな。」
何となく必要な魔力量を把握することが出来た。
さて、この状態のメラダイト、どうするべきだ?
なにやら少し焦げ臭いような・・・
「ん・・・?!あれ、なんか燃えてる?!」
先ほど机に置いたもうひとつのメラダイトに目を向けると、机に接している部分が燻っている。
魔力を通したことで熱を持ったのか?!
「と、とにかく一旦収納っ」
机の上から取り上げて収納魔法の中に放り込む。
収納空間内は時間経過もなく、他の物に干渉することもない。
変成状態も維持したまま保管できることを考えれば、この判断が正解と言っていいだろう。
もうひとつのメラダイトも同様に放り込む。
水差しの水を浴びせて机の火を消す。
「いや、ホント、焦った・・・。」
もう一度ベッドに腰掛ける。
危なく自室でぼや騒ぎを起こすところだった・・・。
とりあえず、鉱石の種類によっては状態が著しく変わることがわかったのはいいとしよう。
錬金術も理解出来た。
だけど、これは本格的に寄宿舎だと出来ることが限られるな。
「ほんと、本格的に冒険者の仕事がんばって稼ぐしかないか・・・。」
ぱたっとベッドに寝そべり、今起きたことを反復する。
鉱石を手に持ち、両手で魔力を循環させた。
そうすることで鉱石に魔力が満たされ、変成が始まった。
そういえば、意識していなかったけど両手で持ってたな。
「魔力を循環・・・循環・・・円・・・?」
何かが引っかかった。
普段から行っていることが、今やろうとしていることにつながっているはずなんだが、何なのかが出てこない。
のどに何かがつっかえているような、すごくむずがゆい。
手の平に魔力を送る。
「『火灯』」
唱えると手の平に炎が灯る。
魔力の流れに意識を向ける。
「・・・!!そっか、そういうことか!」
気がついた。今まで失敗した理由がはっきりとわかった。
なんとも単純な理由だった。
魔法を使うとき、魔力は循環している。つまりは円を描いている。
魔法陣も基本的には円。円でなくても全て線でつながっていた。
「この考えが間違ってなければ、これで成功するはず・・・。」
革袋の口をほどき、縁に魔法文字を刻み込む。
再度口を止めていく。
最終的に円を描くように止める。
袋の中は今は空っぽ。
その状態で、革袋の口に魔力を流す。
革袋の中に、机の上に置いてあった教科書を入れてみる。
「よし、いくぞ・・・。」
革袋の中に教科書を放り込み、口を閉じる。
魔力の供給を止めて、袋の中を確認するが、無い。
再度魔力を通して手を入れると、教科書を掴むことが出来た。
それ以外には何も、入っていない。
これで、自分が普段使う収納魔法とは別の空間に保管されることも確認出来た。
「つまり、これは、成功・・・!!」
実験は成功。
ついに出来上がった、収納魔法を付与した、革袋。
自分自身が使う収納魔法とはさらに別の空間にしまうことが出来る為、誰でも利用することが出来る。
後はどの程度収納できるのか、作る人によって収納量に差があるのか、調べる必要がある。
そもそも普及させることを余り意識していなかったため、実用化のめどが立った途端、考えるべきことが増えた。
「・・・これは、明日学長に相談が必要、だなぁ・・・。」
パタリとベッドに倒れ込んだまま、そのまま寝入ってしまった。
翌日、授業が始まる前に俺は学長室へ来ていた。
既にミネルヴァは部屋にいたらしく、直ぐに入室を許可された。
「おはよう、アルバス。朝早くにどうしたんだい?」
「おはようございます、学長先生。実は、ご相談したいことがありまして。」
ミネルヴァに促されてソファーに腰掛けると、正面にミネルヴァも腰掛ける。
鞄から1つの革袋を取り出し、机の上に置く。
目にしたミネルヴァは首を傾げる。
「これは、革袋、だね?」
「はい。一般的に販売されている革袋です。昨日俺が改造した物ですが。」
「待て、改造、だと?」
「とりあえず、1度見てください。」
革袋を手に取り、中に手を入れる。
薄っぺらかった革袋の中から、1本のショートソードを取り出す。
間違い無く、革袋から出てくるには長すぎる代物だ。
それを見た瞬間、ミネルヴァが目を見開いて驚愕する。
「これは、魔法の袋、なのか・・・?!」
魔法の袋。これを見てそう言うということは収納魔法が付与されたアイテムは現存する、もしくは既に作る技術は失われている。
恐らくだがこの反応を見る限り、後者だとは思うが。
「ご存じなのですね。」
「昔、ダンジョンで発掘された物を見たことがある。それこそ古代文明で使われていたと言うが、今はそもそも空間魔法の使い手がほぼ居ない。それを付与しているのか、それとも又別の原理を使っているのかも不明だった。だが、アルバス、これはお前が改造した、そういったな?」
「ええ、偶然の産物ではありますが。」
これは嘘だが、この場はそれで逃げ切ろう。
やはり大昔は使われていたのか。
「ふむ、そうか・・・。益々規格外な男だな、お前というやつは。本当に12歳なのか?」
正確に言えば、前世含めれば貴方よりだいぶ年上ですけどね。
ここは何も言わず苦笑いで流すことにしよう。
「まぁ、それはいいとして、だ。これを見せるためだけに来たわけではあるまい?」
「ええ、そうですね。せっかく出来上がったので、実用化したいと思っています。ただ、普及させるにしても、作成には時間と手間が掛かってしまいます。そこで、何かいいアイディアがあればと思いまして。」
「・・・なるほど。だが、この技術をむやみに人に教えるわけにも行かない、というのはわかっているな?」
「それは、もちろん。先ほどの学長のお話を聞く限り、失われた技術に類似していると認識しています。」
古代文明で使われていた技術なんてそう易々と表立って出すわけにはいかない。
今の俺の立場では直ぐに他の家に取り込まれて搾取されて終わってしまう。
武力を持って対抗することも出来なくはないが、今後の生活に問題も発生する。
出来るだけ穏便に、自分の自由の為に動きたい。
「ふふ、本当にお前はおもしろいよ。わかった。この件はひとまずこちらでも何か方法を考えよう。」
「ありがとうございます。そうしていただけるよ、こちらとしても助かります。」
よし、約束は取り付けた。
あとは、量産するために必要な魔法陣を羊皮紙に書き留めておくか。
「ちなみにだが、これは革袋だけに施すことが出来るのか?」
「いえ、恐らくですが、他の物にも付与することは可能かと。まだ、これから実験するので明確なことは言えませんが。」
「なるほどなるほど、そうかそうか。これがうまく行けば輸送問題が一気に解決する。よくやったな、アルバス。」
「いえ、私はなにも。あくまでも鍛冶術の研究を進めている中で出来た副産物ですから。」
「その過程で空間魔法を習得した、ということか?まぁ、そういうことにしておこう。」
含みのある言い方ではあるが、ここはあえて何も言わないでおこう。
無言の肯定になってはしまうが。
空間魔法はまだ隠していた部分だが、この件を相談する上で明かさなければいけない部分でもある。
あえて全てを言わなくても、ミネルヴァなら理解してくれるだろう。
そのうち、全てを見せないといけないだろうけど、今はとにかく受け流す。
それが得策だろう。
「取り急ぎ午後の実技教練の時に私の息の掛かった者を連れて行く。しばらくは市場に流れないようにしつつ、研究するということでいいな?」
「かまいません。」
「わかった。だが、このレベルの物になると、実用化が決まった段階で王室には報告せねばなるまい。まぁまだ先だが、覚悟はしておけ。」
「やはり、そうなりますよね。わかりました。」
「そろそろ授業の時間だ。先に教練室へ向かっていてくれ。」
「わかりました。では、よろしくお願いします。」
革袋を回収し、ソファーから立ち上がり、出入り口に向かうとミネルヴァから再度声を掛けられる。
「ああ、そうだ。あとでいくつか用立ててくれないか?もちろん、お礼は支払う。」
「わかりました。午後の教練の後、実験をして問題が無ければ、ご準備します。」
「ああ、頼む。」
学長室を後にし、教練室へ向かう。
1つの懸案材料が片付き、肩の荷が下りた。
これで、次の段階へ進める。
だがまだまだやることはたくさんあるんだが。
「とりあえず、実技教練までしっかり授業を受けますか。」
いいね、感想、評価、ブックマークが投稿の励みになります。
下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします。




