最強を願った結果4
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https://ncode.syosetu.com/n4750fb/ その3
酔っぱらって廃車置き場で遊んだりするんじゃなかった。
おれは今、積み上げられた錆びだらけのトラックが崩れ落ちてきたと思ったら、真っ白な空間で長いひげの神と名乗る老人と対面するという有り得ない体験をしている。
どうにかしてうちに帰れないだろうか、アニメの録画予約もしてないのにと考えていると老人が少しいらだってきた。
「これ、聞いておるのか?おぬしはもう死んでいる。うちにも帰れぬしアニメも見ることはできん。
そんな事より神の仕事が押しておるので、早くおぬしの希望を言わんか。
転生するなら完璧に希望の条件とはいかんかもしれんが、武力だろうが有り余る金だろうが望みのまま叶えてやろう。
当然ワシが管理する6億余りの世界のうちで条件に合うものが無ければ無理だがの。」
やっぱり死んでしまったのか。さすがにあの状況で生きていられるわけもないし、生き残ったところで長く後遺症なんかに苦しめられるのはごめんだ。
ああ、そうだ。好きな能力がもらえるのならアニメの主人公みたいにステータスを奪う能力が欲しいな。
近くに居るだけで相手の力を奪って生殺与奪を握り、成り上がって英雄になるんだ。
「アニメの主人公じゃと?どれ、少し記憶を見せい。ふむ、そんな事で良いのか。
おぬしにぴったりの世界があるぞ。
簒奪系の能力で人間の平民スタート、実力次第で成り上がることができ、文明レベルは地球でいう中世末期程度。
剣と魔法と火縄銃の世界じゃ。
まったくの凡才じゃと何かと不便じゃろう。初期能力は一般人の二割増しで記憶も成人と共に覚醒するようにしてやろう。」
おお、アニメそのまんまじゃないか!
それでお願いします。ああ、楽しみだなあ。敵から特殊能力をいっぱい手に入れて、ステータスを上げて英雄になるんだ。
アニメの主人公みたいにハーレムを作ってもいいかもしれない。
見れなかったアニメの続きを俺の人生で再現してやるんだ。
「よかろう、それでは新天地へゆくがよい。再び相まみえることは無かろうが、良い人生を!」
老人の言葉と共に目の前に光が広がり全てが光の奔流に飲み込まれていった。
そして唐突に訪れる闇。
ぼくの14さいのたんじょうび。あさひがのぼったからあたらしいおしごとにいかなくちゃ。
きょうからおとなのなかまいりで、のうえんのしごとができる。
きしさまが「おまえはゆうしゅうなへいみんだから、すこしおおくごはんをやろう。」ってほめてくれた。
うれしいな。まえにしんじゃうまえも、なにかをいっぱいほしいってかみさまにおねがいしたから、きっとごはんおいっぱいもらえたんだ。
「よし、来たな平民4356号。お前の持ち場はあのあたりだ。
先輩の平民から指導を受けて耕すように。
畑に来た鳥や害獣からはステータスを吸い上げて倒せ。
お前が獣から吸い上げたステータスのうち9割ほどは我ら騎士が貰い受け、騎士のステータスは貴族様へ、貴族様から国王、国王から皇帝へと力が受け渡されていく。
知力はなかなか難しいだろうが、我らが吸い上げた寿命も害獣から補てんできる。
倒せば倒すほど長生きできるぞ。お前は他のやつより優秀だ。がんばれよ。
三百年ほど生きのこっていられれば、騎士くらいにはなれるかもな。」
えへへ、よくわからないけどほめられた。うれしいな。
がんばってたがやして、どうぶつからちからをすうんだ。
すべての者が簒奪し合う世界。力のない者は搾取され、力だけではなく知恵も寿命も奪われる。
貴族、国王、皇帝、力ある者はさらなる力をつけて神のごとく振る舞い、奪った寿命で永劫の時を生きる。
平民はあらがう力も体制に疑問を感じる程度の頭も持たず、ただ家畜のように生まれては働き、死んでゆく。
そこでは弱者が栄光を掴むなど夢物語なのだ。
平民4356号はこの後450年ほどかけて騎士へと至ったが、もはや成り上がる夢も枯れ果てていた。
彼は平民を従えてただ平穏な生活を送ることのみを願ったという。