表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ウサギの冒険

作者: 水都莱兎

最初の方は、Twitterでツイートしてた話です。

フィクション話って書く欄に書き込んでました。

僕、ウサギ。

草食動物のウサギだよ。

でも、僕は他のウサギと違って、お肉を食べるんだ。

そうそう、魔物の肉って美味しいんだ。


僕は、群れから外れた一匹ウサギ。

群れの奴らは、僕が他の奴らと違う色をしていたから、仲間だとは思っていなかったのだろう。一生懸命置いていかれないようについて行ったが、ある朝、群れの奴らは移動していた。僕を鬱陶しく思ったから、何も知らせずにいたんだろうね。僕は、悲しかった。


……、なんてことはなかったよ。

僕は、さっさと群れから出たいと思ってた。

僕が持っていた黒という色が群れのトップになる条件らしくてさ、なかなか群れから抜けさせてくれなかったんだよ。でも、新しく黒持ちが生まれたから颯爽と出て行ったよ。


今の時代、ウサギも一人で生きていけるようにならないとダメだよ。群れなくても強くないとね。そんなことを思って、僕は修行した。


うん、毎日走り込みしたり、得物を捕まえるために知恵をつけたりするのが大変だった。

……、なんてことはなく、毎日寝てたよ。別に強くなるとかいう信念とか持ってなかったよ。ウサギも死ぬときは死ぬし、生きるときは生きるんだよ。要は、僕はぐうたら生活していただけだよ。それなのに、なぜか僕は強くなった。


「わ〜〜、僕って最強だ〜〜。」


全くもってつまらないので、投げやりである。感情がこもってない一言であった。



「わっ! 可愛いウサギがいるわ!! でも、ここは魔物が生息していて危ないのに、よく生きてこれたわね。きっと、運がいいのね!」


なんか、声がしたと思ったら、一人の変なメスがいる。とてつもなく、動き辛そうだ。魔物から逃げるのに大変そうな服装だ。もうちょっと、後ろの騎士みたいに、動きやすい服装すればいいのにな。まぁ、僕には関係ない。


「とっても可愛いウサギがこんなところで生きるのは酷だわ! 私が面倒見てあげる。」


ギューーーー!!


やめろ、抱き潰される。死ぬ。痛い。おい、離せ。この怪力女。


ギューーーーーー!!!!


力はどんどん強くなって、息がしづらくなる。


あぁ、僕は死ぬんだな。こんなちっぽけな人間に抱き潰されて、死ぬんだ。僕の安寧を崩しやがって、このメス。僕が死んだら、呪ってやる。メスは外見とか美容に気をつけてると聞いたことがある。だから、それに習って、僕は超絶不細工になれって呪ってやる。ついでに、行き遅れになれとも呪う。


「ひ、姫さま。 う、ウサギから魂が出ています。死んでしまいます!」


「あら? 本当だわ? どうしてかしら??」


このメス、絶対に呪う。死ななくても呪うって今決めた。そのまま、意識は沈んでいく。



「きゃーー! 可愛いウサギちゃん!! これからは、ここにいれば安全だからね。」


僕を腕に抱えている。そして、一方の手で僕を撫でている。このメス、誰が触れていいといったのか。無礼者め。だが、今は許してやろう。


「ほら〜〜。美味しい人参よ! いっぱい食べてね!」


やっぱり、このメス殺す。人参など誰が食べるか。僕は肉が食べたい。さっさと、森に帰って肉が食べたい。魔物の肉、不足だ。肉が欲しい。肉、肉、肉、肉、肉、肉。


「姫さま、どうやら西の森で魔物が増えているようです。あの森はそんなに魔物がいなかったはずなのですが、どうしたのでしょうか?」


「私がそんなことを知るわけないでしょう! 私が死ぬわけではないのだから、放っておきなさい。お父様、王様がなんとかするわよ!!」


西の森か。半年ぶりに聞いた。僕が昔、住処にしていたところだ。このメスに僕が連れ去られたから、魔物を狩る奴がいなくなって、魔物が増えたのだろう。人間も哀れだな。こんな馬鹿なメスのせいで死ぬことになるなんてな。まぁ、僕には関係ない。


「なんたって、僕、強いからね!」


「あれ? 誰か何か言った? もしかして、あなたかしら?」


僕をジーッと見つめてくるこのメスの目が鬱陶しい。僕は、プイッと首を背ける。


「あらあら、照れちゃって! 可愛いわね〜〜。ウサギが強いわけないじゃない。なにかの空耳よね〜〜。」


ギューギューッと抱きしめられて、僕は死にそうになった。このメス、絶対に抹殺する。


「姫さま!ど、どうか、お力をお貸しください。姫さまの治癒の力が必要なのです。」


真っ青な表情でメスに話しかける一人のオス。要は騎士だ。なんとも哀れだな。役立たずのアホなメスに頭を下げて、物事を頼むのは、本当に哀れだ。優秀な人間は僕の下僕になればいいのに、こんなメスに仕えているなんて、人間の世界って難しい。世の中、実力のあるものが上に立つべきだ。他の弱い人間を下僕にするためにな。僕に仕えていたら、みんな幸せになれるだろう。なぜなら、僕は強いからいざとなったらみんなを守れるからね。とにかく、僕の将来の下僕に死んでもらっては困る。


人間世界の支配を今決めたから、西の森の魔物をなんとかしてやろうではないか。


ウサギに使われる人間もなんとも哀れだ。もし、ウサギに人間が使えることになったら、シュールな光景である。というか、絶対に人間は逃げ出したくなるよ。自分より下だと思う者を敬う人はいないし、ウサギは可愛いから、そんな凶暴な姿みたら、真っ先に逃げ出すよ。うん、絶対そうだよね。


僕はあのメスの腕から逃げて、走った。勘を頼りに西の森を目指す。聞こえてきた、騒音。怒声、剣がなにかを切ったり、刺したりする音。人間たちは必死に生きようともがき、必死に魔物を倒そうとしている。他の人間に害がいかないように、いい根性を持った人間たちだな。あとは、僕に任せろ。僕は、跳躍した。そして、魔物を蹴った。近くの木を折って吹っ飛んでいく魔物。僕は、地に降り立つ。


シーンと静寂が場を制した。ウサギは人間たちをみた。


「おい、人間たちよ! 僕が、魔物を倒してやったぞ。喜べ! ひれ伏せ! 下僕になれ!」


可笑しなことを述べるウサギに魔物の討伐に来ていた人間たちは、もちろん反応した。ある意味、予想通りだ。


「ぎゃーー!! う、ウサギが喋った!! これこそ、魔物の頂点に立つ害悪だ〜〜!! た、倒せ〜〜!!!」


「ま、魔物の王だ。俺たちが手こずっていた魔物を一発で倒したぞ! しかも、普通のウサギが強いわけがない!」


「これが、諸悪の根源なんだ! これを倒せば、魔物はいなくなる。」


何が起こっている。人間の反応がおかしいぞ。僕は、人間を助けた側だから、讃えられてもいいはずなのにな。まぁ、それは置いておいて、まずはあれを食べよう。僕は倒した魔物に近づいていった。


「お、おい! あのウサギ、魔物に近づいていったぞ! ど、どうする気だ。蘇らせる気か?」


「そ、それは、まずい。早く倒そう!」


なんか、外野がうるさいけど、気にしない。まずは肉、食事。大事な食料。


「いただきま〜〜す!!」


カブガブと魔物を食べていく。


「これだよ! これ!! このおいしさを分かち合ってくれる奴はいないんだろうな〜〜。」


シュールな光景。小さなウサギが自分より何倍も大きな魔物を食べている。地を汚しながら、血を流がさせながら、食べている。


ガブガブガブガブと異様な音が響く中で、人間たちは動くことができなかった。そして、魔物を食し終わったウサギ。人間たちの方に振り返った。


真っ黒な身体からはよくみないとわからないが、血がべったり付いているのがわかる。血が固まっているところもあり、とても酷い匂いを放っている。


返り血を浴びている、ウサギはなんともホラーだ。


「ぎゃ〜〜!! まだ死にたくない、助けてくれ〜〜!!!」


「う、ウサギに俺たち殺されるのか?」


「に、肉食のウサギなんて見たことないぞ!」


「しかし、今……。魔物を食べているではないか。弱そうな見た目をしてなんとも屈強なウサギだ。」


「いや、何感心してんだ! さっさと逃げるぞ!! それで、国王様に報告するんだ。」


「報告することは賛成だよ。あと、屈強なウサギじゃなくて、凶暴なウサギだ!」


「おい、そんなことより、早く逃げるぞ!!」


僕から逃げていく人々。酷い言われようだ。助けてやったのにね。とにかく、僕は君たち人間の言葉にショックを受けたから、追いかけるとするよ。敵前逃亡なんて情けないにもほどがあるからね。


僕は人間を追いかける。


「おい! あのウサギ、追ってくるぞ! 馬でもなんでも使って、急いで逃げるぞ!!」


「ウサギにごろざれる〜〜! 助けて〜〜!!」


「じにだくない〜〜!!」


泣きべそをかきながらも、なんとか国王がいる城まで騎士たちは逃げた。国王を守る騎士たちが国王自身を危険に晒してどうするのかと言いたいが、ウサギのインパクトが強すぎたのだろう。正常な考えはもはやできていない。


「ご、ごくおうざま〜〜。 う、ウサギが! う、ウサギが!」


「騎士よ。ウサギがどうかしたか?」


「ウサギが! ウサギが!!」


「だから、ウサギがどうかしたのか?」


「ウサギが〜〜!!」


「ええいっ!! ウサギがどうかしたのか!?」


その騒乱に訪れた一人のお姫様。腕に抱いているのは真っ黒なウサギ。


「ひ、姫さま〜〜。」


「あら? さっきからウサギ、ウサギと騒いでいてどうしたのかしらと思って伺ったのよ。お父様、密会は静かにするものよ。」


「娘よ。密会はしておらぬ。それより、最近ウサギを拾ったと言っていたが、それか?」


ウサギを指差す国王様。騎士たちはそのウサギに見覚えがあった。


「そうよ。突然飛び出して言ったと思ったら、血まみれで帰ってきたから、私は倒れてしまったわ。護衛の者たちが優秀だから、フサフサのモフモフの元の可愛いウサギになったけれど、どこで血なんか浴びてきてしまったのかしら?」


「まぁ、そんなことはもう終わったことだ。ウサギは喋らんし、どこに行っていたかも分かるはずがない。それより、ちと抱かせてみろ。可愛いウサギだな〜〜。」


「こ、国王さま〜〜!!」


慌ててウサギを抱くのを止めに入る騎士たち。


「さっきからなんだ? お主らは私の邪魔をしたいのか?」


「いえ! ウサギの毛が国王様に付着するのはよろしくありません。この国の王としての威厳を保つべきです!!」


「ウサギを抱くだけだ。しかも、身内しか見ていない。威厳も関係ない。とにかく、さっきからウサギ、ウサギとうるさいが、この子はただの可愛いウサギではないか。何をそんなに慌てることがある。」


騎士たちは心を一つにして思う。


(ち、違います! 国王様〜〜! それこそが諸悪の根源なのです!! 見た目に騙されてはいけません!!)


そんな心の声は嬉しそうな表情をしてウサギを抱いている国王様に届くはずはなかった。、国王様に抱かれているウサギの中身は恐ろしい、魔物だと言うのに、あの嬉しそうな表情を見てしまったら、何も言えない。守るべきものがこんなことでは駄目だとは思う。しかし、見た目が可愛らしいウサギをどうやって魔物と証明できるのか。


本来、魔物の形は歪なものである。ウサギのような完璧な形をとれているものを初めて見たと言える。そのため、ウサギを魔物と証明できる証拠がないのだ。ウサギが国王様を傷つけるかもしれないと思うと気が気ではない。だが、ウサギを国王様の前で殺して危険なものであったと説得するのも無理な気がする。その前に、刑に処されて人生がその場で終わる。首と胴体がさようならなら、まだいい。首も胴体も骨も残らないなんてことになるのは、絶対に嫌だ。


言えるはずがないだろう。死にたくない。でも、亡骸がない死も耐えられない。本当は言うべきだが、言うべきなんだが、諦めよう。ごめんなさい、国王様。これから、精神誠意お仕えします。本当に許してください。


自分の身を大事に思った騎士たちはなんとも意気地なしであった。



国王に抱かれていたウサギは、騎士たちの方へ振り向く。表情はウサギなので読み取りにくいが邪悪な笑みを浮かべていた。それを感じ取ったのか、騎士たちは震えている。


その可笑しな光景に顔を見合わせて笑う国王様とお姫様の親子。


何も知らない親子は幸せであった。



親子の知らないところで、やんちゃをするウサギが一匹。


「おい、下僕。国王様とやらに僕と言う危険動物を近づけたくないんだろう? だったら、言うことを聞け! 僕を世話しろ!! 誠意をもって仕えろよ、下僕。」


地面放り出されているボロボロの騎士が一人。それを見て泣いているのが数人。ウサギに弱みを握られて絶望しているのが騎士の全員。ウサギは好き勝手し放題であった。


ある一部屋で言葉をこぼすお姫様。


「最近、ウサギが騎士たちの方に懐いていて、全然、構ってくれないのよ。酷いわよね。良いわよ! 私は、騎士の治療だけはしてやらないんだから!! 絶対に私のウサギに私より懐かれているのは許せない!!」


なんとも哀れすぎる騎士たちなのであった。


毎日、飽きずにウサギは騎士たちをいいように扱き使っていた。姫様や国王様の前では、大人しいウサギとして、人間の世界に馴染んでいったようである。


「人間の小間使い、下僕ができて、極楽だ。人間で遊ぶのはなんて楽しいのだろうか。長生きはしたいものだ。」


その言葉に絶望の淵に叩きつけられる騎士たちは全員、内心、首がもげそうなくらい首を振り続けていた。


「こんな凶暴で加減の効かないウサギの世話はごめんだ〜〜!!」


一人がウサギのいない時に大声をあげたと言われている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ