落ち着かない。
静かに。
俺は山本 太郎。小説家だ。
5年前に本当に何もない静かなド田舎でコツコツと書いていた小説が見事大ヒット。
今では東京は銀座の一等地に家を構えるほどになった。
しかし、最近スランプに陥った。
もうかれこれ2年近くは納得のいく作品を作れていない。
なんというか、面白くないのだ。
男女の熱い青春小説、
人が言葉を作ることのなった世界を描くSF小説、
道徳を面白おかしく茶化すブラックユーモアの大衆小説。
何れも題材やネタは好きだったが何だかスッキリしない。
そんな日々を送っていると家にいるときはネタを探して部屋をウロウロウロウロと歩き回るのが日課となって居た。
そして今日も、近くでやっている現場の重機の音を聞きながら家を
歩く。
歩く。
歩く。。
「…あぁ!ダメだ、思いつかない!」
ペンを半ば投げるように机に置いた。
俺は家に居てもこれ以上いいネタは浮かんでこないと考え外へと行き気分転換をしようと考えた。
大金を叩いて買った赤いフェラーリに乗り込む。
豪快な音を立てエンジンがかかる。
この音を聞くたび自分がいかに小説家として成功したかを教えてくれる。
俺は気分良く車を走らせた。
やはり、東京だけあって地元の田舎と比べ物にならないほどの人がいる。
これだけの人を眺めていればきっと面白い題材も浮かぶはずだ。
信号待ちをしていると、窓から何やら喧騒が聞こえてきた。
男性と女性が言い争っている。
「あんたが悪いんでしょ!!」
「ほんとごめん!この埋め合わせは…」
よくある男女の痴話喧嘩。
しかしそんなたわいのない所からもネタは浮かぶ。
俺は少し想像を膨らませた。
「そうだな、時代は近未来。
技術の発達により、心から何かを思う…感情をなくし自殺が相継ぐ時代。そんな時代に、政府は危機感を募らせ感情庁を設立。感情庁の仕事は、国民に感情を取り戻す事。
そして先ほどの男女は感情庁の職員。そう、あれは国民の感情を…」
んー。
何かが違う。
面白い題材だとは思うがスッキリしない。
そんなモヤモヤを払拭出来ないままに信号が青になってしまった。
また、しばらく目的もなく車を走らせた。
ふと横を見れば、軽自動車に乗った、スーツを着た美人の女性がいた。
バリバリと仕事の出来そうな女性。
「んー…彼女はいつもクールで淡白。どんな仕事もそつなくこなし。どんな事態が起こっても動じない。
しかし、そんな彼女も、一つ時間を忘れるほど熱中せざるおえない物があった。
それは…
婚活。
結婚適齢期となってしまった彼女に降りかかるドタバタコメディ小説…」
うん。面白そう…
面白そうだけど何だか納得いかない。
その後も目的なく車を走らせた。
ミステリー、ファンタジー、アクション、風刺、冒険、官能。
あらゆる小説のタネが浮かんだがモヤモヤが止まらない。
気がつくといつの間にか俺は森の奥深くへと着ていた。
得体の知れない鳥の鳴き声と虫の鳴き声以外なんの音もしない森の奥。
あたりはすでにが落ちて真っ暗。
しかし、稲妻の如しヒラメキが頭に浮かんだ。
「そうだ…落ち着けてなかったんだ…」
落ち着かない、オチ付かない。
オチがない。
お後がよろしいようで。
しょうもない、オチですいませんw
ただ思いついたから書きたくなりましたw




