51.台紙の見本
三木は「宗佐ゴルフ場」でツイッター内を検索した。
公式アカウントはすぐにみつかったが、先週作ったばかりで、フォローは関係者らしきアカウントが十数件、ツイート数もフォロワー数もまだ二桁だ。
駅でのゴルフレッスンの件が固定表示されている。
各ツイートのタイムスタンプは午後一時から五時前までで、それ以外の時間はひとつもない。広報担当者が勤務時間内にツイートしているらしい。
過去のツイートをざっと見たが、いいねやリツイートは固定表示のツイートに数件ついただけだ。
アカウントの存在自体、まだ知られていないなら仕方がないだろう。
フォローして、レッスンの件をリツイートすると、あっという間にリツイートが三桁に達した。
三木は、明日驚くだろうな、と担当者の反応を想像してニヤけながらスマホを充電器に挿した。
自宅のプリンタで印刷した駅舎写真から、西口に指示された二木駅を取り出し、トレーシングペーパーを重ねる。
A4サイズの写真は想像以上に広大だ。
ここからどの部分をなぞればいいのか。
……手前の電線とか、超邪魔だな。
確認だけして、パソコンの電源を入れる。
エクセルで枠線を全十一駅分引いて、二木駅から終点の粟生井駅までの駅名を枠の上に入力し、余った部分に車輌の写真を貼り付けた。車輌の上にワードアートで「二木粟生井鉄道乗車記念」と入れて完成だ。
試しに一枚印刷して、三木は溜め息をついた。
「商店街のチラシみたいですね」
翌日、帰りにおうちカフェで現地集合した西口は、ストレートな感想を呟いた。
思った通りの反応で、三木は何も言えずに珈琲を啜って誤魔化した。いつも以上に口が苦い。
西口は三種類作っていた。
沿線の特産品のイラストをあしらったもの、助役の鉄道写真をあしらったもの、三枚目は二木あおいのイラスト付きだ。
三頭身にデフォルメされた二木あおいが敬礼する立ち姿のイラストで、確かにクッキーのパッケージらしくはない。だが、スタンプ台紙の枠の余白には、誂えたようにぴったりだ。
「二木粟生井鉄道乗車記念」の文字は、明朝体、教科書体、丸ゴシックで、普通のフォントばかりだが、商店街のチラシっぽさはない。
毎月、ウォークイベントのポスターを作っているだけあって、センスがいい。いや、絵心が壊滅状態の三木と比べる方が失礼だろう。
「うん、まぁ、あの……三木さん、いいですか? せっかく作ったんですから……ネタとして活用すれば、かなりオイシイことになるかもしれませんよ」
「ネタ?」
慰めなのか励ましなのか、貶しているのか、さっぱりわからないが、西口の目は真剣だ。
赤いメタルフレームをほっそりした指で押し上げ、ハーブティーで口を湿して説明してくれた。
「二木あおいの中の人が作りましたー! ってツイートすれば、ダウンロード数、一番多くなりそうですけどね」
「それって、ネタとして……こう……」
……バカにされる前提だよな?
キリキリと胃が痛み、言葉が続かない。
掲示板で散々ネタにされた西口も、こんな気持ちでいるのだろうか。
いや、あちらはツイッターなども含めれば、恐らく数万単位だ。
三木とは比較にならないだろう。
それを「ネタ」と言い切るメンタルの強さに尊敬を籠めて、西口の目を見る。
西口は、スマホをつついてイラクティブを表示させた。
「枠線のテンプレートを配布して、マイスタンプ台紙を作ってもらうって言うテもありますよ」
「あぁ……そう言う人も居るでしょうね……じゃあ、公式の四種類が欲しいって人はそれで。そうじゃない人は、自分で……」
「但し、他人の写真やイラストを無断で使わないように、著作権の注意喚起して……向こうから申告があって、こっちで画像のチェックができたものだけ、ツイッターで告知」
「上手い人はホントに上手いですもんねぇ……」
「そりゃそうですよ。プロも混じってますから」
「えっ?」




