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起死回生ブレーキ! 二木粟生井鉄道  作者: 髙津 央


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49.〆切を決定

 「えーっと、じゃあ……駅名の字数が色々なんで、短いのは上下、長いのは周りぐるっと一周で行きましょう」

 「それがいいでしょうね。会社名と駅名、どっちを上にします?」


 予想外の質問が次々飛び出す。

 確かに、どちらか決めなければ作業できない。


 どちらでもいいような気がしたが、わざわざ聞くからには、何か違いがあるのだろう。だが、三木にはその違いがわからない。

 時間を節約する為、すぐ質問した。


 「どっちが……いいんでしょう?」

 「社名は字数と画数が多いんで、デザイン的には下にある方が安定しますね。でも、語順とかを重視するなら、社名が上」

 「どっちがいいんですか?」

 「どっちを優先しても、間違いってワケじゃありませんよ。好みとセンスの問題で」

 「好みと……センス……」


 それを絵心のない三木に聞くこと自体が大間違いな気がしてならない。

 額に脂汗が滲む。


 ……こんなに迷うんなら、全部ぐるっと一周デザインに統一……いや、それだと文字数少ない駅がスッカスカになってダメなのか?


 字数の最小は「二木駅 にき」で、最大は「西這田(にしほうだ)駅 にしほうだ」と「下石野駅 しもいしの」だ。二木粟生井(にきあおい)鉄道には「国包(くにかね)駅 くにかね」など難読駅名が多い。かなを併記しなくては、ブームで来る一見客には、まず読めないだろう。


 「えーっと、じゃあ、上でお願いします」

 「はい。じゃあ、社名上、駅名下で、三文字の駅はぐるっと一周。〆切り、いつにします? スタンプの発送、最短で三日後なんですよね?」


 人々の熱が冷めない内に、なるべく早い方がいいに決まっているが、全十一駅で、作業にどのくらい時間が掛かるか全く読めない。

 敢えて〆切りを決めると言うからには、でき上がり次第などとぬるいことを言うのは許されないのだろう。


 西口の顔色を窺った。

 すっかりぬるくなった珈琲を啜りながら、スマホで駅の写真を確認している。


 三木は恐る恐る、丸投げの質問をする。

 「いつぐらいがいいと思いますか?」

 「そうですねー……」

 西口はスマホのカレンダーを表示した。


 「今日が火曜で、みんなの気持ちが冷めない内に……次の日曜には最低限、スタンプラリーやりますってアナウンスだけでもしたいんですけどね」

 「ツイッターで燃料投下して、冷めないようにすれば、〆切りを延ばせるんですか?」


 「上手く行けばですけどね。最悪、台紙のサンプルとネットプリントのコードをUPして、先に台紙を持っててもらえば、少しは延ばせる……かな?」

 「じゃあ、明後日までに台紙だけ急いで作って反応見て、えーっと来週の火曜日くらいにはスタンプの原画用意して、金曜日に本社の協議会の担当者に連絡して、土曜日に台とか用意してもらって、日曜朝からスタート……キツいですか?」


 「三木さんが大丈夫なら、まぁ……私は平気ですよ。日勤専門ですから」

 西口が、三勤一休で夜勤もある駅員の三木を気遣う。

 ここしばらく、睡眠時間がどんどん削れているが、このブームの大波を逃せば次はないとの危機感が、三木を突き動かしていた。


 「大丈夫です。やれます」


 「協議会の参加者で、イラスト描ける方って心当たりありませんか? 高校の美術部とか漫研のコ」

 確かに、三木が描くよりずっといい作品に仕上げてくれそうな気がする。


 二木鉄の乗客を増やす会に参加する高校生と大学生は、どちらも鉄道研究会の所属だ。絵心の有無は確認していない。


 ……でも、それを「二木鉄公式」って言っちゃっていいのかな? 本社の正式な公募じゃないのに。


 「うーん……部活までは把握できてないんで……それに、今はテストで忙しいんじゃないんですか?」

 「あー……そうでしたねー……じゃあ、二人で頑張りましょう」

 取敢えず今日はそれだけ決めて解散した。

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