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起死回生ブレーキ! 二木粟生井鉄道  作者: 髙津 央


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47.駅舎の写真

 ニローは早速、来週の日曜からコラボクッキーを販売する旨、ツイートしていた。

 三木も、二木あおいのアカウントで引用リツイートして、宣伝に全力で協力する。最低限、看板製作費と版権使用料、イラスト料の分を回収できるまでブームを終息させられない。



 〈パッケージイラストは公式絵師の新作です。

  どんな絵柄か、現地に来てご確認下さいね。

  白百合農園の最寄り駅は、国包(くにかね)駅でーす♪〉



 瞬く間にいいねとリツイートが付き、拡散が進む。

 見た人が実際どのくらい買いに来てくれるか全く読めないが、とにかく、なるべく多くの人の目に触れて、可能性だけでも増やしたかった。


 「わー、あっという間に三桁リツイート。……本社の人、なんて言ってました? 昨日、会議でしたよね?」


 その件を言い忘れていた。テーブルに身を乗り出して小さく手招きする。西口も身を乗り出し、額を寄せ合った。


 「ニコパの分は、本社の雑収入に入ることになりました。販売する駅はまだ決まってませんけど、マグカップとTシャツは沿線住民有志の方がボランティアで販売してくれるそうです」

 「よかったじゃないですか」


 二人の囁きに珈琲の湯気が揺れる。


 「後、缶バッジも作って売るとか提案があって、駅スタンプを作ってスタンプラリーする話も出てます」

 「それのデザインは決まってるんですか?」


 「バッジの方は、有志の方が既存の写真や、ニッキーのイラストを流用して作ってくれるそうです。スタンプは僕の発案で、駅の写真をなぞって作ろうかと……」

 「できるんですか? トレースったって、どの線をなぞるか難しいですよ? 写真からデザイン起こすの」


 そう言われても、実際やってみないことにはわからない。

 何もかも西口におんぶにだっこというのは気が引ける。


 「まぁ、何とかしますよ」

 「どんな写真をトレースするか、決まってます?」

 「写真は僕が一年くらい掛けて撮って、もう決めてあるんで大丈夫ですよ。デザイン的に微妙なら、助役に頼んで写真を使わせてもらいます」


 厳選した画像フォルダを開き、スマホを向ける。

 西口はずり落ちた眼鏡を押し上げて溜め息をついた。


 「写真は、上手いんですねー……この野菜の写真、どうするんですか?」

 「特産品とかも入れようと思って」

 「構図とか、決まってます? 駅名も入れるんですよね?」

 「まだ決まってないけど、空の部分に入れればいいかなって……」


 西口はしばらく画像をみつめていたが、溜め息混じりに言った。


 「この画像、全部、送ってもらえますか?」

 「えっ? いいんですか? でも、それ、完全ボランティアで原稿料も何も出ないんですよ?」

 「それは販売の住民さんもですよね? 最初からないものとわかってれば、諦めもつきますよ」

 「でも、いいんですか?」


 ついさっき、イラスト一枚が七万だの十万だのと言われたばかりだ。


 「私も、近くで働ける場所がなくなるのはイヤですから。ブームが収束する前にとっとと完成させましょう。適材適所ってコトで」

 「何か……余計な仕事増やしちゃって……すみません」

 思わず涙が滲んだ。


 「余計って……客寄せにするんですよね? まとめて発注掛けた方が送料安く済みますから、〆切り決めましょう。スタンプの形って決まってます? 丸と四角どっちにするんですか? 画像のファイルサイズは?」


 早口に質問され、三木の目から涙が引っ込んだ。

 頭が真っ白になる。


 「……決めてなかったって顔してますね。決めましょう。今すぐ」

 「えっあっ、あぁ、は、はい。すみません」


 赤いメタルフレームの眼鏡に心を読まれたようで、三木はひたすら頭を下げたが、西口はそんな駅員に構わず、スマホを操作する。


 「スタンプ屋さんって、どこの業者ですか?……四角の方が安いんですね。サイズはえー……原画六四十×六四十ピクセルで、スタンプがあんまり大きいとアレなんで……三センチ四方くらいなら、全十一駅、A4に入りますね」

 「そ、そうですね」

 「スタンプラリーの台紙も発注するんですか?」

 「い、いえ、大量に刷っても余ると思うんで、欲しい人だけコンビニのマルチプリンタで出してもらおうと思ってます」

 「デザインは決まってるんですか?」

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