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起死回生ブレーキ! 二木粟生井鉄道  作者: 髙津 央


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42/65

42.提案の発表

 「こんにちは。木幡(こばた)と申します。西這田(にしほうだ)保育園のママ友サークルを主宰しています。西這田(にしほうだ)駅で、二木鉄関係の缶バッジの販売を計画しています」


 缶バッジを作る機械は、木幡リーダーの私物を使い、材料費を差し引いた売上の残りを二木鉄の収入にすると言う。

 唐櫃(からと)営業部長が、プロジェクターでニッキーのイラストを表示させる。


 「缶バッジ用に丸いデザインのイラストを新しくお作りした方がいいですか?」

 「あ、いえ、元データをメールで送っていただけましたら、私の方で丁度いいカンジに加工しますよ」


 ……あぁ、顔だけ使って、イガ栗持った手は、入れないんだな。


 三木だけでなく、会場――特に職員席は事情を察して、何とも言えない微妙な空気に変わった。

 「あ、それと、電車の写真とかも貸していただけましたら、鉄道マニアの人が来てくれるかも……以上です」



 コアな乗り鉄や撮り鉄は、とっくの昔に訪れている。


 知る人ぞ知るローカル線で、沿線風景はほぼ山と田畑。

 倒木や斜面崩壊、鹿身事故や猪身事故での運休が多い。


 沿線には一応、温泉や観光施設があるが、全国的な知名度を持つ所はなく、駅からは車がなければ不便な位置が多い。

 路線バスがあるのは、始点の二木駅と三木たちが勤務する幸瀬駅周辺のみで、他は、ワゴン車で運行する一日一往復のコミュニティバスがあればいい方だ。


 二木粟生井(にきあおい)鉄道は、普通の観光客を呼ぶには厳しい生活路線だった。

 公式グッズとして鉄道写真の缶バッジを出せば、二木あおいの件でこの超マイナーなローカル線を知った「ゆるい鉄道マニア」が、買いに来るかも知れない。



 ママ友サークルの木幡リーダーの発表で、会場の空気が明るくなった。

 事前連絡があった二人の他にも、イベントの案を出す者がないか、田尾寺広報部長が会場に呼び掛ける。非公式キャラとのコラボなので、ニローは手を挙げなかった。



 三木は手を挙げ、スタンプラリーの改定案を語った。

 先週、上司の谷上駅長に説明し、許可を取って本社にメールで資料を送ったが、会社としての発表はなかった。


 ……ブチ切れてたもんなぁ。


 大勢の目がある中で無視する訳にもゆかず、田尾寺広報部長が渋々、余計なことをした駅員を壇上に呼んだ。三木は、自宅で印刷した資料を片手に説明する。


 「各駅に図柄の異なるスタンプを置いて、割引乗車券のある期間にスタンプラリーを開催してはどうかと思います。専用の台紙を持って、各駅に捺しに来てもらいます。台紙はネットプリントで、全国のコンビニで出力できるようにすれば、無駄が出ず、在庫を抱えるリスクもありません」


 大手鉄道会社は、駅スタンプを駅長室前や改札内に置いていた。

 特にイベントをしなくても、押し鉄――駅スタンプのマニアが全国行脚する。集めたスタンプをブログやSNSに載せる者も多かった。


 郵便局でも、消印マニアが全国行脚していると言う話を聞いたことがある。絵入りの記念消印は勿論、何の変哲もない局名と日付のみの消印も集めるらしい。


 押し鉄と乗り鉄は重なる部分もあるが、鉄道マニアとしては、分けて考えるといいだろう。


 ……コンプリート欲を掻き立てるような「全駅違う図柄」がポイントなんだけど、予算の都合で全部同じ図柄でも、ある程度は来てくれるかな?


 ニコパの件を手掛かりに、キャラクターもののスタンプ制作専門の業者をみつけた。


 レーザーカットでかなり細かい図柄も対応可能で、コースター並の大型でも、ひとつあたり四百円と消費税、送料だけで済むと言う。

 駅名と駅舎、特産品や観光名所などを入れて各駅異なる図柄にして、全て集めたらオリジナルグッズと交換する。


 三木が田尾寺広報部長にスタンプ業者の見積もりを渡すと、「五千円弱で済むのか……」と呟いて唐櫃(からと)営業部長を見た。

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