40.提案に乗る
ニローだ。
〈こちらこそ、ありがとうございます。
新作、わざわざ描き下ろしてくださったんですね。
白百合農園の場所をご存知ですか?
農園の直売所で、このDMの画面をお互いに見せっこして本人確認。
その時に使用料とイラスト制作費、新作イラストの引き渡しを同時にすると言うのはどうでしょう?〉
薄々わかっていたが、やはりそれ以外ないようだ。
近所の好で、顔の見える関係を築いた方が良さそうな気がしてきた。
ニローの提案に乗ると決め、お礼を返信する。
二、三やり取りを重ね、引き渡しは会議の翌日に決まった。
カレーを食べながらタイムラインを見る。新規フォロワーにフォローを返し、いいねとリツイートにまとめて礼をツイートする。いつもの作業を済ませ、告知を打った。
〈コラボ第一段は、二木粟生井鉄道沿線の白百合農園さんです。
グッズや発売時期などの詳細は、後日改めてお知らせします。
地元で有名な観光農園です。
最寄駅は国包駅。みんな、これ読めるかな?〉
白百合農園の公式サイトへのリンクを貼ってツイートすると、あっという間に拡散された。ツイートに駅名の読み方の答え「くにかねえき」や、質問がつく。
〈むちゃくちゃ遠いんですけど、通販やってくれますか?〉
〈ご質問、ありがとうございます。
通販につきましては、白百合農園さんのご判断になります。
私からはお返事できません。ごめんなさい。〉
頭を下げる絵文字を付けて返信すると、すぐにいいねとお礼のコメントが付き、それも拡散される。
ニローからダイレクトメッセージが届いた。
〈電車に乗ってもらう為のコラボですからねぇ。
売れ行きを見て、通販は春休み明け……
いや、ゴールデンウィーク明けくらいに考えてみようと思います。
何にしても、商品が完成してからになりますね。
今は何とも言えませんよ。〉
一緒にタイムラインを見て共に考えてくれることが心強い。
三木はすぐに心からのお礼を返し、タイムラインに戻った。
ニローの回答を二木あおいの言葉に翻訳してツイートする。
〈三月末までは、お得な乗り放題の切符があります。
遠方の方も、春休みやゴールデンウィークを利用して乗りに来ていただけましたら嬉しいです♪〉
割引乗車券の写真と、大手鉄道会社のターミナル駅からの乗換え案内を付けてツイートする。
沿線イベントの案内ツイートと、イラクティブ掲載イラストのツイートも流す。二木鉄主催イベントのリストは、テキストにまとめてあり、写真もフォルダに分けて用意している。それをコピペして、イベント当日朝まで時間を置いて何度も流すのが、ここしばらくですっかり習慣化していた。
ねとにゅ~の記事以来、券売機の日締め処理でいつもより心持、増収の手応えがある。
「#二木粟生井鉄道」で検索すると、切符の写真付きツイートが数件ヒットした。その中から「二木あおいちゃんの記念硬券出ないかな」というつぶやきをみつけた。
……いや、それはもう、夢のまた夢だから。
印刷コストが高い上に売れ残ったら目も当てられない。
……ん? あ、でも、記念スタンプとその台紙くらいだったらいけるよな?
乗り放題の切符がある時期なら、そこそこ集客できると思い、スタンプラリー自体は先日、メールで提案したばかりだ。資料に他社の成功例を添付したが、あの様子では目を通したとは思えない。
台紙をコンビニのネットプリントで出力できるようにして、各駅の改札内に一駅ずつ異なる図柄のスタンプを置いてラリーをすれば、全線乗ってもらえる。終点の改札外で景品と引換えればいいだろう。
次の「二木鉄の乗客を増やす会」の会議で改善案を発表すると決め、三木はカレーを食べながら詳細を練った。




