38.工作の報告
〈二木あおいちゃんの中の人様
こんにちは。
ママ友とサークルのみんなに声を掛けて、問合わせてもらいました。
あおいちゃんの二次絵描いたコが、フォロワーさんに呼び掛けてくれて、思ったより大勢の人が動いてくれました。
それで、最終的にどのくらいの人数で二木鉄さんに何て言って問合わせたのか、私の方ではちょっとわからなくなっちゃいました。
なんだか思ったよりオオゴトになっちゃってすみません。〉
末尾に手を合わせて拝むポーズで謝る絵文字が並ぶ。
三木が夜勤明けに広報部で怒鳴られた背後では、二時間以上、電話が鳴りやまなかった。谷上駅長も、本社に電話が繋がらないと言っていた。
回線がパンクした件についての謝罪だろう。
……まぁ、伝言ゲームで何がどう伝わるかわかったもんじゃないし、ねとにゅ~の記事を見て、僕たちの知らない人たちがどんな問合わせしてるかわかんないし、その辺は別にいいよな。って言うか、「ママ友」と「サークル」? 「ママ友サークル」じゃないのか?
学生時代の仲間にも声を掛けてくれたのだろうと解釈し、三木は読み進めた。
どうやら本社は、この電凸で初めてコラボグッズの記事を知ったらしく、確認後、折り返し掛け直すと言われたらしい。
問合わせが集中して代表電話が繋がらなくなったので、何人かは、二木粟生井鉄道公式サイトに載っていた広報や車内広告の部署、二木駅の代表電話にまで掛けたらしい。
……これ、けしかけたのがバレたら、威力業務妨害で訴えられて、クビになりそうだな……まぁ、その時はその時だ。
メールが何件送られたのか、あまり想像したくない。
三木は細切れに送られたののママのメッセージを読み進めた。
〈グッズが実現したら、使う用と保存用と観賞用と布教用に絶対! 絶対! 買います!
あおいちゃんも頑張って下さい!〉
ののママのダイレクトメッセージは、激しくキラキラした応援の絵文字で締めくくられていた。
丁重にお礼を返信して考える。
本社の反応は予想通りだ。
きっと今は、ニッキーをゴリ押しした唐櫃営業部長や、萌えキャラをエロマンガだと誤認する社員が、二木あおいの公認やグッズ販売に難色を示して、潰しに掛かっている頃だろう。
グッズ販売の可否は、二木粟生井鉄道活性化協議会の会員が、どのくらい頑張ってくれるかに掛かっている。
三木たち社内で発言力のない下っ端が、どれだけメリットを説いても、上はその声を汲まない。
沿線住民や乗客予定の人々の声がたくさん集まれば、社内の反対派を抑えられる可能性が皆無ではなくなる。
役所から声が上がれば確実に折れるだろうが、民間鉄道の経営にそこまで口を出すとは考え難い。
メンテナンス代を税金で補填して住民の足を守っているが、官主導の姿勢を見せると余計な責任だけでなく、うるさい外野が発生しかねないのだ。
同じく、本社に声を掛けてくれたニローの首尾が気になり、ダイレクトメッセージを開く。
〈お疲れ様です。白百合農園のニローです。
二木鉄本社の方は、二木あおいの存在を知りませんでした。
ホントに非公式キャラだったんですね。
それで、ウチとのコラボについては、そのキャラクターは本社が与り知らない件なので、社名や社章、ロゴ、鉄道の写真を使わないんなら、キャラクターの権利者と好きなようにして下さい的なことを言われました。
話したの朝イチなんで、その社員さんの独断なのか、会社全体の見解なのかちょっとよくわかりませんけど、一応OK出ました。
問合わせが殺到したらしくて、代表電話は繋がりませんでした。
乗客を増やす会の担当者のスマホに連絡しました。
俺の方からも、これだけ反響が大きいんなら、ブームが終息しない内に乗っかっといた方がいいですよって言っときました。
駅で売れば、乗客や入場券を買う人が増えるってコトも提案してみましたけど、実際に動いてくれるか微妙ですね。〉
ニローの感触では、その担当者は割と乗り気なようだが、上の方がカンカンに怒っていて、そんな話ができない気配を感じたと言う。




