30.工作を依頼
〈こんばんは☆
コラボってすごいじゃないですか♪
何のコラボで、どんな協力すればいいですか?〉
三木は深呼吸して返信した。
〈グッズ製作のお話をいただきました。
マグカップとTシャツだそうです。
本社の“二木鉄の乗客を増やす会”のメルアドと担当者の電話に
「二木あおいがネットのニュースで話題になっているから、
今の内にキャラクターグッズを作って駅で限定販売すれば、
グッズ目当てで乗りに来る人が増える可能性が高いですよ」
……的なことをお伝えいただきたいんです。
コピペじゃなくて少しずつ変えて、なるべく大勢の方にご協力いただけましたら、本社も動いてくれるんじゃないかと思っています。〉
ママ友サークルのリーダーののママが顔文字をちりばめて即レスした。
〈あおいちゃんグッズ! 私も欲しいです!
何駅で売るんですか? 絶対、買いに行きます!
それと、その業者さんってどこですか?
アレなカンジなとこだとちょっと……〉
三木は、どこの業界にも悪徳業者が居るのか、とげんなりした。
そこまで教えていいか躊躇したが、今の段階で業者名は絶対、本社に言わないようにと釘を刺し、許諾がなければ販売場所は全く決められないことと、株式会社ニコパの名を返信した。
〈ニコパさんなんですか? 超大手じゃないですか!
スゴイですよ! 私、頑張ります!
サークルのみんなにもニコパさんの名前は出しちゃダメですよね?〉
サークルメンバーに拡散する前に確認してくれたことに感謝して返信する。
〈ご協力、ありがとうございます。
ののママさんだからお知らせしたんです。
恐れ入りますが、業者名はご内密に願います。
それとは別に、地元の白百合農園からもコラボ依頼が来ています。
キャラクターパッケージのクッキーの販売と立看板の制作だそうです。〉
三木の狙い通り、ののママから絵文字だらけの浮かれた返事が来た。
〈わかりました!
ニコパさんと白百合農園さんのお名前はお口チャックで!
サークルのみんなや知り合いにお願いしてきます。
それと、地元の人も動いてるんですね。よかったです!
もし、会社の偉い人にダメって言われても、缶バッジを手作りして駅でこっそり売りましょう。
子供が保育園行ってる間だけでよければ、店番のお手伝いとかできますよ。〉
どうやら、前回の会議で本社の上層部がネットに疎いことを見透かされたようだ。
缶バッジなら、SNSの口コミで拡散して販売駅の協力が得られれば、本社の上層部にバレるのはかなり後になるだろう。
バレた後が恐ろしく、三木にはそこまで危ない橋を渡る気はなかったが、それで遠方からの乗客が増えるなら……と最後の手段のひとつとして心に留めた。
ののママに礼を返し、今度は白百合農園のニローに同様の依頼を送る。
こちらもすぐに返信が来た。
〈わかりました。
ウチのコラボの件と合わせて言います。
それと、ねとにゅ~にもコラボの件を教えて、販売時期を大々的に流して外堀埋めてしまいましょう。
火消し不能レベルで話が大きくなってからコラボを握り潰したらどうなるか、ネットに疎い年配の人たちでも、流石にわからないなんてことはないでしょう。〉
一人では全く思いつかなかったことを次々と提案され、三木の目頭が熱くなる。袖で目元をこすり、ニローにお礼の返信をした。
アドバイス通り早速、ねとにゅ~にコラボ二件の内容をDMで送り、ニコパにも、デザインに社章や社名を入れないように注意して許可を出す。
見本の現物は本社の広報部、商品写真をこのアカウント宛に送るよう、追記した。
西口からメールの着信があった。
〈グッズですか? 私は別にいいですよ。
クッキーのパッケージイラスト、こんな雰囲気でどうでしょう?〉
ラフ画像が添付されている。
ヘッドマークのような雰囲気で、二木あおいのロゴとキャラクターが円内に納まっている。
返信がない間ずっとこれを描いていたと気付き、三木は震える指で返信した。
〈ありがとうございます。
スゴイ! いいです! これでお願いします!
ありがとうございます〉




