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起死回生ブレーキ! 二木粟生井鉄道  作者: 髙津 央


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28.絵師にお礼

 〈西口様、お疲れ様です。ご連絡ありがとうございます。

  スレッドいくつか拝見しました。

  この件に関しては、

  「二木鉄について色々考えて、楽しんで下さってありがとうございます」

  ……くらいはツイッターで反応しとこうかと思っています。

  白百合農園には許諾を出しました。

  使用料は一万円とクッキーの売上の二割だそうです。

  受取方法はまだ考え中ですが、三月中には決めます。

  できれば、半分はリアルでの活動資金にいただきたいんですが、いいですか?〉


 頑張って描いてもらったイラストに罵詈雑言を浴びせられ、好き放題に言われ、修正されている件については、下手な慰めを言うと却って傷を抉ってしまうだろうと思い、触れないでおく。



 勤務時間中には、二木あおいの件について何も言えない。

 西口とは挨拶以外の言葉を交わさず、三木は粛々と夜勤をこなした。



 真冬の風を切る架線の音が、星灯の冴える盆地の空に流れる。終電を見送った三木は、改札を閉めて仮眠室に入った。カーテンを閉め、一人になったことを確めてメールを開く。


 〈クッキーのパッケージデザインとかもした方がいいですか?

  先方さんもわかってると思いますけど、非公式キャラなんで、看板には社名と社章とニッキーは絶対、使わないように釘刺しといた方がいいですよ〉


 まさかそんなことを言ってもらえるとは思わず、三木はその言葉に甘えていいものかどうか迷った。

 だが、動くなら西口の気が変わらない今しかない。

 スマホに指を走らせた。


 〈何から何まですみません。ありがとうございます。

  お言葉に甘えちゃっていいですか?

  イラストの報酬は使用料の半分とクッキーの売上の一部、上乗せでいいですか?〉


 西口は迷っているのか、返信が来ない。

 もう自宅に帰りついている頃だ。

 もしかすると、夕飯を食べているのかもしれない。


 三木は夜食のカップ麺をもそもそ啜りながらイラクティブを見る。イラストは四千件を越えていた。


 ……みんな上手いよなぁ。


 描いた絵師や、イラストに「いいね!」を付けた閲覧者の全員は絶対にムリだが、その一パーセントでも二木鉄に乗ってくれれば、かなり助かる。

 ランキング上位に食い込んだイラストの「いいね!」は万単位の数値を叩き出し、更に増えてゆく。

 元々人気の絵師なのだろう。フォロワーも多かった。


 三木は、画面の隅に青い鳥のボタンがあるのに気付いた。ツイッターで共有できるらしい。


 ……ランキング上位から順番に……は、露骨過ぎてダメだよな。


 それに、西口が描いた「オリジナル」より露出度の高い衣裳に改変されたイラストもある。

 駅長に眉を顰められないよう、お色気要素のないイラストを選んで、投稿された順で出すのがいいだろう。あまりイラストばかり紹介しても仕方がないが、毎日五件ずつ紹介しても三か月近く持つ。


 ……見て欲しいからUPしてんだろうし、いいよな?



 〈鈴蘭ノースさん、イラスト一番乗りありがとうございます♪〉



 お礼を添えてツイートした。

 あっという間にリツイートが数百件に達し、いいねも同じくらいついた。

 同様に五枚目までツイートし、ねとにゅ~の記事も引用リツイートで共有する。



 〈ねとにゅ~さん、丁寧にご紹介いただき、ありがとうございました。〉



 これで乗りに来てくれるとは思えないが、一日乗車券を写真付きでツイートし、固定表示させる。


 ……これ、もっと早くに何回も出しときゃよかったな。


 ねとにゅ~の記事から見に来た人たちにもっとアピールできた筈だが、今更嘆いても仕方がない。



 できなかったことを悔やむ暇など一秒たりともなかった。



 こうしている間にもどんどんリツイートで拡散し、事態は動いてゆく。

 今できることと、これからすることに全力を傾けたい。


 三木の手の中でスマホが震えた。

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