24.後は余生だ
〈何屋さんですか?
ギャンブル系とか十八禁系のお店は、絶対イヤなんですけど〉
確かに、不健全な業種とコラボしては、二木あおい……二木粟生井鉄道のイメージダウンになってしまう。
そこだけは、どれだけカネを積まれても断ろうと心に決め、三木は白百合農園からの申し出だと返信した。
〈白百合農園って三月まで観光エリア閉めてますよね?
その頃にはこのブーム、終わってるんじゃないんですか?〉
行間に「許諾しても儲からないのではないか」との懸念が滲む。
農園に儲けが出なければ、キャラクターの使用料を払ってもらえないかもしれない。
三木は念の為、西口に確認した。
〈どうするつもりか聞いてみます。
西口さんは、白百合農園さんが使うのは構わないんですね?〉
二木あおいの作者から了承を受け、三木はツイッターにログインした。
見たことのない桁数の通知件数に目眩がする。
数え切れない程のいいねとリツイート、フォロー、ツイートへの返信の中から、ねとにゅ~からの問合わせの@ツイートを発掘し、ひとまず個別アドレスと本文をテキストに保存した。
ニローからのダイレクトメッセージに返信する。
〈ご連絡いただきありがとうございます。
二木粟生井鉄道「非公式・非公認」アカウントですので、恐れ入りますが、管理者の身元につきましては、現時点では伏せさせていただきます。
白百合農園様は現在、観光エリアの営業期間外ですが、よろしいのでしょうか?〉
それだけ送って返事を待つ間に、ねとにゅ~への返事を考える。
取材依頼の@ツイート自体は、シンプルな定型文だった。
〈ねとにゅ~編集部と申します。
二木あおいについて、取材したいのですがよろしいでしょうか?〉
質問の内容も何もない。
取材に応じて燃料を投下してブームを引き延ばさなければ、ニローの白百合農園の売上と二木粟生井鉄道の乗客数を引っ張れない。
だが、この記事がきっかけで身バレしたら、三木と西口の雇用が危ない。
悶々としているとメッセージのポップアップが立った。
ニローからの返信だ。
その間にも、通知の件数がどんどん増える。
〈お忙しい中お返事ありがとうございます。
直売コーナーは通年、営業しております。
そこで看板娘になっていただこうと考えております。〉
リアルでのノリの軽さとは別人のような礼儀正しさに少し戸惑ったが、三木は粛々と返信する。
〈失礼ですが、看板娘だけでの集客は難易度が高そうです。
何か、そこでしか買えないコラボ商品もあった方がいいと思います。
特産の栗を混ぜたクッキーのパッケージなど、如何でしょう?〉
西口に作画料兼口止め料として支払った、くまくま茶屋の栗クリームケーキからの連想で何となく思いついたことを書いた。
……版権料の相場なんて知らないし、どうやって決めればいいんだ?
返信を待つ間にもどんどんフォロワーが増え、いいねとリツイートもリロードする度に増えてゆく。
初めてフォロワーになってくれたウッディのリツイートから、いいねとリツイートが連鎖した時は嬉しかったが、今はこの爆発が恐ろしかった。
〈ご提案ありがとうございます。
今の時期はお客さんが少ないので、キャラクターの使用料があまり高額だと難しくなります。
看板の分が一万円
クッキーの売上の二割
このくらいでしたら可能ですが、如何でしょう?〉
相場がわからないので、ひとまずそれで了承する。
現実的に支払えない金額ではどうにもならないし、そもそも二木あおいはキャラクタービジネスの為に作ったのではなく、二木粟生井鉄道の存在を知らせる為に作った広報キャラだ。
何故か、ねとにゅ~に取り上げられ、三木の想定を遙かに超える爆発的な勢いで存在が知れ渡った。
もうこれだけで、充分過ぎるくらい役目を果たしている。
後は余生だ。
〈使用料のお支払いにつきましては、来週以降に改めてご連絡させていただきます。〉
来週以降にしたのは、二木鉄の乗客を増やす会の第二回会議で、絶対にこの話題が出るからだ。ニローも出席するだろう。様子を見てから今後の方針を決める。
西口には、ダイレクトメッセージのスクリーンショットを添付したメールを送った。




