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起死回生ブレーキ! 二木粟生井鉄道  作者: 髙津 央


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18/65

18.炎上が発覚

 「三木君、これ知ってるか?」


 二木粟生井(にきあおい)鉄道活性化協議会……通称「二木鉄の乗客を増やす会」の第二回会議を一週間後に控えた日、夜勤で出勤した途端、谷上駅長に呼ばれた。


 イヤな予感がしたが、何でもないような顔で駅長席に近付く。

 パソコンのディスプレイを覗くと、例のまとめサイトだった。


 ……やっと気付いたのか。


 西口が本社のツイッターに捨てアカからアドレスをツイートしてから、一カ月近く経っている。

 「新聞社の画像とテキスト、無断転載……」

 「それもだが、内容!」

 「……ニッキー、すごい言われようですね」


 さも、今まで気付かなかった風を装って、卑語が飛び交う掲示板のまとめを見る。

 谷上駅長は重い息を吐いた。


 「広報は、前回の会議で白百合農園の方からツイッターの活用を提案されて、ニッキーのアカウントを作る方向性で調整していたんだが……」

 「作ったら、マズいことになりそうですね」

 「あぁ。三木君は知らんだろうが、コイツができた当時も、社内の意見は賛否が真っ二つに割れてな……」


 駅長が苦り切った顔で画面に顎をしゃくった。

 悪ノリした誰かがニッキーを擬人化し、リスの耳としっぽをつけた美少女が、割れたイガ栗を持ってあられもないポーズをとるイラストまで載っている。


 西口の描いた「二木あおい」より可愛い萌えイラストなのが、何となく(しゃく)(さわ)った。


 「反対派の意見は、これと同じだった」

 「どうして廃止しなかったんですか?」

 「唐櫃(からと)営業部長の肝煎(きもい)りで作ったキャラだったからな」

 派閥の力で押し切られたと確認できたが、三木は無言でうなずくだけに留めた。


 ……社内の人間関係とか力関係じゃなくって、お客さんがどう思うか考慮しなきゃいけないのに。


 そんなだから経営が傾くんだ、と言いたいのを(こら)えて唇を引き結ぶ。

 駅長ら現場で乗客と接する者は、ウチではなくソトに目を向けなければならないことを日々の業務で感じているが、本社では、そうではない社員の力が強いようだ。


 「作ってすぐ廃止したのでは、経費をドブに捨てるようなもんだから、と押し切られたんだ。反対派は反対派で、グッズ制作の経費をストップして、活用を阻止した」

 「パンフのイラストは……」

 「手前に花を重ねてニッキーの手元を隠して、イラストレーターに裏から手を回して新作を請け負わないように頼みこんで……」


 駅長も当時、反対派として奔走したらしい。

 「あの……って言うか、イラストレーターさんがこのデザイン……」

 「違う」

 駅長のドスの利いた声に西口や他の駅員がギョッとして注目する。

 大きく息を吐き、駅長はいつもの落ち着いた声で言った。


 「唐櫃(からと)営業部長が、どうしても特産の栗を入れると言って何度もリテイクさせて、最終的にあの形になったんだ」


 減収を厭わず、反対派の要求を飲んだと言うことは、イラストレーター自身も指定されたデザインが不服だったのだろう。

 ニッキーは廃止こそ免れたが、滅多に出番を与えられず、次第に忘れ去られていった。


 「唐櫃(からと)部長が、予算に着ぐるみのクリーニング代を盛りこんで再登場させたら、案の定これだ」

 駅長が忌々しげな眼を画面に向ける。


 遠くの席で西口が顔を引き攣らせた。

 先輩たちは何とも言えない顔で黙る。

 三木は勇気を振り絞って聞いてみた。


 「ニッキー……どうなるんですか?」

 「わからん。取敢えずツイッターの件は再検討になった。会議で社外の人に聞かれたら、適当に濁してくれ」

 「このサイトは……」

 「その件も含めて、対応を検討中だ」

 「わかりました。それと、活性化の案をひとつ練ってみたので、メールで資料をお送りしました。これでよければ、本社に送りたいんですけど……」

 「そうか。さっそく頑張ってくれてありがとう。確認する」

 時間が押している。三木は急いでホームに上がった。

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