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起死回生ブレーキ! 二木粟生井鉄道  作者: 髙津 央


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13.田尾寺部長

 百人近い人が行き交う部屋で、最初にみつけた広報部長の田尾寺(たおじ)にニローを紹介した。



 ニローがSNS活用のメリットを語り、スマホで白百合農園のツイッターを表示させる。

 フォロワーは八千人以上、フォローは千人ちょっとだ。

 フォロワー数は二木鉄公式の七十倍以上、直近のツイートに対するいいねとリツイートは、ゼロの二木鉄とは比較にもならない。



 「なるほど。大変参考になるお話を恐れ入ります。持ち帰って検討させていただきます。……因みに、このフォロイーとフォロワー数の差について、お聞かせ願えませんでしょうか?」


 二木粟生井(にきあおい)鉄道は、苺、椎茸、梨、葡萄狩りシーズンの旅客を頼る白百合農園に足を向けて寝られない。田尾寺広報部長はさっき名刺交換したママ友サークル会長への態度とは打って変わってニローに低頭した。


 上目遣いで媚びるおっさんから微妙に目を逸らし、農業青年ニローはスマホをいじりながら答える。

 「あぁ、これは実際、ウチに来たってツイートしてくれた人だけフォローしてるからっスよ。誰でも彼でもフォローしてたらキリないっスから」

 「なるほど」

 田尾寺広報部長が、わざとらしく感じ入ってうなずいてみせる。ニローは鵜呑みにするおっさんに苦笑した。


 「ウチは観光農園なんで、そうやってますけど、二木鉄さんは電車なんで、別のやり方がいいんじゃないっスかね?」

 「なるほど……不勉強なもので……例えば、どのような……?」

 自分で調べる気はないらしい。

 三木は、教えてちゃん化した田尾寺広報部長にこっそり溜め息をついた。



 「おぉ、駅員さん、いつもお世話になっとります」

 三木は顔見知りの老人会代表に声を掛けられ、笑顔を繕って挨拶を返した。


 その横で、ニローが田尾寺部長にスマホを見せて説明を続ける。

 「んー、そっスねー、例えば……こことか、自社キャラに広報させてるっスよ」

 「なるほど。では、弊社もニッキーでアカウントを取得するよう検討致します」

 「ニッキー?」

 「あちらの着ぐるみです。お恥ずかしい話、運用ノウハウがございませんもので、どうしても露出が少なくなりがちで、沿線住民の皆様にもなかなかご覧いただけないのが現状で……」


 リスの着ぐるみが部屋の奥で、割れたイガ栗をくっつけた手を振って出席者に愛想を振りまいていた。

 中途半端にリアルな着ぐるみは不気味で、二木鉄関係者以外は誰も近付かない。


 今日は、誰が中の人をさせられているのか知らないが、とんだ羞恥プレイだ。


 「あ、丁度、社長が傍におります。お手数ですが、先程のお話を改めて、お願いできませんか?」

 「いいっスよ」

 「あ、ちょっと……」


 お恥ずかしいのは露出の少なさではなく、キャラクター造形の方で、(むし)ろ露出してはいけないデザインだが、二人は人の間を縫って行ってしまった。


 「駅員さん、ワシら、電車がのうなったら、どこにも行けんようなります。何卒(なにとぞ)、何卒、廃線だけはご勘弁を……」

 三木は二人を止めたかったが、老人会長が手を握って拝み倒し、離してくれない。

 二人の背中がどんどん遠ざかる。


 ……イヤーッ! 待ってーッ!


 三木は心の叫びを押し殺し、涙ながらに懇願する老人を(なだ)める。

 祈り虚しく、ニローと田尾寺広報部長は二木鉄社長と接触した。

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