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起死回生ブレーキ! 二木粟生井鉄道  作者: 髙津 央


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11/65

11.第一回会議

 一月末、正式に「二木粟生井(にきあおい)鉄道活性化協議会」が発足した。

 通称は「二木鉄の乗客を増やす会」だ。


 第一回会議は二木鉄本社で開かれ、三木は夜勤明けの頭に気合を入れて末席に座る。

 二木鉄からは、社長と広報部長と担当者、営業部長と担当者、主要駅の駅員が出席した。初回だからか、壇上で市長と社長がお堅い挨拶をするのを新聞記者が撮っている。


 大会議室の席はほとんど埋まっていた。

 パイプ椅子の背には、コピー用紙に書かれた大雑把な分類が貼ってある。

 沿線三市の「市役所」、沿線の「商工会議所」「観光協会」「商店街」「農業」そして「住人有志」。さまざまな人が、偉い人たちの退屈な話を静かに聞いていた。



 職業、年齢、性別、廃線が困る理由……属性の何もかもがバラバラな人たちが、二木粟生井(にきあおい)鉄道の線路で繋がっている。

 三木は最後列の隅から会議室を見回し、不思議な気持ちになった。



 「えー……平日昼間ですので、この会場にはいらっしゃいませんが、高校生や大学生の若い方も、協議会の呼び掛けに応じて下さいました。非常に心強いことで……」

 市長たちに続いて、協議会の会長に就任した宗佐(そうさ)ゴルフ場のオーナー広野氏が、マイクを握って挨拶する。


 今回は、メンバーの顔合わせが目的だ。

 配られた資料は、協議会の設立趣旨や組織図、責任者らの連絡先と参加者のリスト。個人の参加者はニックネームとメールアドレスだけだが、商店などは所在地と業種、電話番号も載っている。

 三木も、連絡先として駅の電話番号と社用のメルアドを載せられていた。


 「……ありがとうございました。えー、実際の活動ではなかなかこうして大勢で集まる機会がございませんので、後程、別室で情報交換のお時間を設けさせていただいます」

 司会進行役の田尾寺広報部長が、責任者たちの挨拶を締め括った。

 ゴルフ場オーナーの広野氏が住民有志代表で、他は市長と社長だ。


 実際の運営では、役所の産業課や観光課、広報課、二木鉄は営業と広報、イベント列車運行時には関係各部署、住民は各駅の近所の人がグループ単位で動いてくれるのだろう。


 ……あれっ? じゃあ、駅員の僕らは何するんだ?


 三木は他の駅員の後ろ姿を見たが、彼らが何か言われているかどうか、勿論わからない。



 壇上では、田尾寺(たおじ)広報部長から唐櫃(からと)営業部長にマイクが渡り、ここ十年分の経営状況の説明が進む。

 スクリーンに投影されたグラフは、どれも右肩下がりだ。表にも減収を示す▼が大量に並ぶ。


 赤裸々と言うか、赤字が目に痛い。

 彼岸花畑を幻視して、目眩がした。


 「毎年、約十億円の赤字が発生しております。運行すればする程、赤字が出る状態で……」

 唐櫃(からと)営業部長が感情の死んだ声で説明する。

 住人有志らの驚きや溜め息が、薄暗い会議室のあちこちから聞こえた。二木鉄と役所の関係者は元々知っているから反応が薄い。


 不景気で税収も年々落ち込んでいる。

 役所の支援は永続するものではない。

 廃線すれば、沿線地域がどうなるか。


 国鉄民営化でイヤと言う程、見せつけられた。

 他地域の惨状は他人事(ひとごと)ではなかった。


 ……だから、一般の人たちもこんなに集まってくれたんだよな。


 三木は、嬉しさと頼もしさを感じると同時に、情けなくなった。

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