94 龍との戦闘
場面がちょいちょい変わります
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『あれ? 急に声が聞こえた』
地龍は突然聞こえた声、奈良健人の思念波に思考を巡らせる。
急に聞こえてきたため、最初の方はきちんと聞き取れなかったが、どうやら地上で争いが起きているように感じられた。
『確か、この先は我が国のとか、国民が襲われて怪我をしたとか、言っていたか? よし、転生した俺のチート能力を見せてやる。“龍眼”』
龍種は本能で己の能力を理解する。金剛地龍雄は自己認識はトカゲでありながらも、本能的に龍としての能力を理解していた。そして彼は、地龍の持つ能力のひとつに、龍眼と名称をつけた。地龍は生涯の大部分を地中で過ごすが、通常の生物のように、目が退化して他の感覚器官に頼るような、環境進化とは無縁の存在だ。何故ならば、龍は“地中にあっても、地上を見渡せる” 千里眼のような能力を目に宿しているからだ。
そして彼は、とあるマンガにでてきた似た能力を参考に、己の能力に名称をつけた。パクりとも言う。龍と付けたのは将来への希望が含まれている。
『えーと、一方が鎧を来た人間の兵士と、農具をもった農民? そして相手方勢力は・・・オーク!? それにケンタウロスとアルケニーに・・・ワーウルフ? すげえ魔物の軍勢だ。・・・兵士だけでなく農民までもが、農具を武器に戦うつもりなのか。そう言えば母子が襲われたとかもいっていた気がするな・・・・・』
この時、もう少し注意深く見ていれば、魔物の軍勢にバイク用のヘルメットを被った者や、外見を多少偽装しているものの、現代人であれば一目で車とわかる物があったのだが、初めて目にしたオークやケンタウロスなどに興奮した、金剛地龍雄はそれらも魔物と信じて疑わなかった。
そして、人の集団にいる農民らしき者たちが次々に倒れた時、魔物の軍勢から人を守るために、彼は動いた。にらみ会う両軍の間、その姿を現した。
地龍が現れる少し前。
「│LRAD用意。兵士と後ろにいる町民を無力化する。戦力的には全く驚異にならないが、混乱されると無駄に犠牲者が出るから、民間人だろうが容赦しないぞ」
指示を受けた、ドワーフやエルフ、ハイ・コボルトで構成される車両部隊が、帝国の一団を挟むように左右に移動し、側面から音響装置を照射する。照射に際しては対象の動きに会わせて行うが、殲滅目的ではないので十字砲火ではなく、一方ずつ適時行うように指示してある。非殺傷とはいえ、装置からでる音波を浴び過ぎれば、人体に大きな負担となるからだ。
「巨大な魔物が左右に移動します!」
移動し始めた擬装車両を見て、兵士の一人が声をあげた。
「くそ、魔物ごときが包囲殲滅の真似事だと? 弓を持っている者は移動してきた魔物に向け弓を放って足を止めろ、囲ませるな」
兵士たちと言っても、その数は100人にも満たない。その上弓を持っているものは半数程度でしかないだろう。その50人が左右に別れて、魔物に擬装された車両に弓を射かけるが、攻撃を反射する結界を持つ車両に、矢を射かけたところで全く効果はない。もっとも帝国兵はそれを知らないので、単に魔物が強力なのだと思っただけなのだが。
「駄目です、矢が全く通じません」
そして兵士の奮闘も虚しく、略奪のために付いてきていた、町民たちが次々と倒れていく。
「どうした、なぜ町民たちが倒れていく」
LRAD はその性質上、射線から外れたものには全く影響を与えないため、直接的音波を浴びた者以外には影響を与えないのだが、間もなく町民に加えて兵士もちらほら倒れ呻き出す。そして、兵士の半数ほどが倒れたとき、それが現れた。
民間人が倒れ、兵士たちも半数がLRAD の影響を受けたところで、奈良健人が再度撤退を呼び掛けようとした時、地中から巨大な爬虫類が現れた。
・・・認めよう。あれはワニやトカゲじゃないし、恐竜でもない。
ワニの先祖には諸説あるが、ディノスクスと言われる体長15メートル程の、生物の復元図は、ワニそのものだった。しかし、目の前の生き物は、トカゲに近い姿をしている。なぜワニやトカゲを引き合いに出しているかと言うと、爬虫類と恐竜は別の種とされていたからだ。ワニはワニ足という言葉があるように、からだの左右に突き出た四肢を持つが、恐竜はからだの下に四肢が延びている。
そして、目の前に現れたものはと言えば、大型のワニを越える体躯に、ゴツゴツした突起物を備え、襟巻きトカゲのように起立している。俺が子供の頃は恐竜と言えば二足歩行で起立した姿が、当然のように描かれていた。例えば、ティラノサウルスなんかは、ゴ○ラやレッド○ングのような姿だし、ブロントサウルスなどはキリンのように首を高くあげた生物などと考えられていた。しかし、いつの頃からか骨格的に無理だったり、頭に血が行かないなどの理由で、水平に近い前傾姿勢であるとされるようになったな。
「ケント、混乱している場合じゃないぞ。どうするんだ」
モーブに言われ、現実逃避から覚める。
「すまない、状況は? それと帝国の連中は無事か」
「オーガの一件があったから、防御主体でどうにか凌いでいるが、ファイアブレスがヤバい。それと帝国の連中は無事だ。どういうわけか、あの地龍は帝国の人間を、守っているように見える」
「どう言うことだ? いや、ともかく敵対されているなら、倒すしかないLRADを地龍に当てろ。俺は│雷霆を準備するが、モーブのブリューナク・・・は混戦では厳しいか?兎も角援護を頼む」
『ファイア、ブレーーーース。ちっ、魔物の癖に動きがいいな。先日の魔物はもっとめちゃめちゃな動きだったのに、オークもケンタウロスも妙に連携してやがる。そうか、オークキングとかの上位種か魔王のような存在に支配されているんだな』
四足状態で尾を振るってケンタウロスを凪ぎ払えば、間にオークが割り込みケンタウロスには届かない。吹き飛ばしたオークはしばらくすると何事も無かったかのように、起き上がってくる。ならばと足の遅いオークに向けてブレスを吹けば、突然土壁が生じてブレスが塞き止められる。土壁は一瞬で崩れるがその間に、オークは姿を消していた。
地龍、金剛地龍雄が魔物の軍勢を見回し、オークやケンタウロスに混ざって人間のような体型の、人型生物が確認できたことから、この複数種族の混成部隊はライトノベル等に度々登場する湧きやスタンピードといわれる現象か、魔王軍による侵略と判断した。
・・・・異なる魔物が一緒にいることと、連携するのとでは全く違う気もしたが、現実の異世界がゲームや小説と同じはずがないので、気にする必要は無いと考えた。
そして、魔物の集団のなかにいる異様な顔をした者を目に留める。
『怪しい奴、お前が魔王か!』
心の内で叫んで地龍は立ち上がり、推定魔王に向けてブレスを放とうと、口を開く。
その口内に灼熱の炎が生まれ、そして放たれようとしたとき、魔物の集団のからまばゆい光が放たれた。
「デカイとは言え四足になられると、狙いがつけにくいな」
出現当初は、起立していた地龍だが、今は四足で四肢と尻尾を使った格闘や、水平発射のブレスを放っている。LRAD は照射しても全く効果がなかったようだし、魔道レンジを 使おうにも既に混戦になっていて、狙い撃ちは難しいだろう。
暴れる地龍に、オークが尾で吹き飛ばされているが、魔法薬で即時回復して戦線復帰している。だが、長期戦になると事故が起きる可能性も高まるから、早々に何とかしたいところだ。
「やつが立ち上がったら、全力でぶちこめるんだが」
「ああ、たった状態なら、俺もブリューナクを撃てる」
そんな話をしていると、地龍が立ち上がってその顔を、俺の方に向けて口を開く。
予備動作からファイアブレスと判断し、対抗するべく俺も攻撃を解き放つ。
「全員退避、│雷霆焼き尽くせ」
「ブリューナク、つらぬけ」
撃ち出された炎と刃は、開かれた地龍の口に向かって一直線に飛翔する。
そして、地龍の目前で爆炎弾けた。




