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90 稲藁といえば・・・

最後の部分でちょっと汚い話が出ます。

ご注意ください。

「公王様、ゴーレムを調べ終わったにゃ」

「おお、終わったのか」


その日、俺が領有地外で黒足と小屋を作っていると、ステラがやってきてゴーレムの調査が終わったことを伝えてきた。猫基準で見ると明るい屋外にもかかわらず、瞳孔が丸く広がっているので、結構興奮している感じではあるが、尻尾が大きくゆっくりと揺れているので、おそらく上機嫌なのだろう。


「それで、どんな感じだ」

「先ず、血液や魔力でマスターとして登録するにゃ。公王様は魔力がすくにゃいから血液登録がいいと思うにゃ」

「へえ・・・どの位血が要るんだ」

「ほんの一滴にゃ。それから、体の制御にゃどは、そういう動きを記録したものを使うらしいにゃから、現状人型以外は難しいにゃ」

「なるほど、血は問題ないが、模倣品を作るにしても、体型が大きく違うものは無理か。記憶などはどうなんだ」

「たぶん以前の記憶は残っていると思うにゃけど、記憶と関係無しにマスター登録されれば言うことを聞くはずにゃ」

「分かった、念のためダンジョンの街外れで起動してみよう」


ステラと数人の護衛を伴い、ゲートで移動する。俺も学習したから、二人でだけでノコノコ出かけて、後で怒られるようなまねはしない。

指先をちょっと切って、スポイトで血を吸い取り、ホムセンで売っていたマジックハンドにテープで固定する。そして小屋の中からゴーレムの登録装置部分に血をたらす。


「あ、これ前の情報はリセット済みなんだよな」

「たぶん問題にゃいはずにゃ」

「血をつけてからどうするんだ」

「体内に魔石をはめるにゃ」

「・・・マジックハンドじゃ難しいぞ、誰かに代わってもらってもいいのか」

「誰かに代行させると、血液と魔力で情報がダブってどうにゃるか不明にゃから」

「結局近寄らないと駄目じゃねえか」

「とりあえず、魔石はめ込み口が見えるようにしてくるにゃ。その後ゲートで手だけ出すにゃ」


はめ込んだ瞬間に腕つかまれて、引っ張られそうな気がするんだが、大丈夫なんだろうか。


「大丈夫にゃ、安心するにゃ。あちきに一台くれるなら先に実験してもいいにゃよ」

「・・・ステラに一台やるったって、これ一台しかないぞ」

「商品化したはずにゃ」

「・・・したっけ?」

「魔石を抜いた後にしたにゃよ」


ステラに指摘され、ホムセンを探すと、確かにもう一台あった。物陰に補充されて(わいて)いて気がつかなかったようだが、暗がりで半壊の女性型ゴーレムが三角座りしている姿は、少し怖かった。

元の場所に戻り、改めてゴーレムの起動を行う。


「さあ起動するにゃ」


かけ声とともにステラが魔石をゴーレムにはめ込むと、マネキンのごときゴーレムの目が明滅し、ゆっくりとした動作で動き出す。


「マスターご命令を」


ステラに向かって姿勢を正すと、ゴーレムは軽く頭を下げて声を発した。


「にゃ、マスターが分かるにゃか」

「はい、もちろんです」

「何か妙な声だな」


PCの読み上げソフトで文章読み上げした時のような、少し変な声に似た感じ。まあ機会音声のようなものなのだろうか。


「名前はあるのか」

「・・・・・・」

「ゴーレム、名前はあるにゃか」

「ありません。名前はマスターのご都合に合わせ、必要に応じお決めください」

「・・・・ゴーレムさん、俺の声は届いてますか」

「・・・」

「ゴーレム、公王の声は聞こえているにゃか」

「はい、マスター。男の声は聞こえています」


・・・あれ? それじゃ俺、完全に無視されてる?


「なあ、ステラ。俺は無視されているのかな」

「聞いてみるにゃ。ゴーレムは何故公王に返事をしないのかにゃ?」

「私が命令を聞くのは、マスターのみです。あの者に返答する義務はありません」

「・・・だ、そうにゃ」

「思った以上に融通効かないんだな。まあ、マスターに忠実と考えれば、悪いことではないかな」

「少し教育してみるにゃ」


ステラはゴーレムを連れて帰っていった。ゴーレムにロマンを感じはするけど、マスター以外は完全無視のあの融通の効かなさは、悪用されたら滅茶苦茶危険な気がする。


「・・・まあいいや、研究者のステラなら謀反とかしないだろう。たぶん」


そして、俺は作っていた小屋を完成させるべく、建設現場に戻り黒足に状況を確認する。


「指示通り、ユニット内に断熱加工をして、棚を設置しておきました」

「サンキュ。暖房も出来るようになってるか?」

「例の床暖房を組み込んでますから、室内を締め切ったままで温度管理できます」

「よし、じゃあ室温を40℃にしておいてくれ」


場所を移動していつもの作業場。


「さて、新しい食べ物を作ろうと思うんだが・・・先に言っておくと、これから作る物は俺の前世でも意見が分かれる食べ物なので、もしかしたら完成しても俺以外に食べる者が居ないかもしれないけど、そこは勘弁してくれ」

「はあ・・・」

「んじゃ、始めるぞ~先ず大豆を水で確り戻す。そして戻したものがこれだ」


大豆をボールに入った大豆を示す。


「そして戻した大豆を軽く水切りして、これを圧力釜に入れて蒸す。そして、こっちに用意したこのわらを束ねて縛って・・・」


一握りほどの稲藁を二箇所縛り、縛った間を少し開いておく。

稲藁はリザードマンが持ち込んだ物を使って居る。彼らが住む、湿地帯には稲が自生しており、彼らは食用や酒用に収穫しているらしい。まあ、酒といっても口噛み酒らしいので、正直のみたいとは思わないが、うちに買い物に来た際に、白米を見てそんな話が伝えられてきたので、収穫されて稲穂を少し融通してもらったわけだ。来年はこの米を少量栽培してみるつもりだが、正直米の味には期待していない。元日本人にとっては、日本の米にすぐる米は無いので仕方が無い。


「指でつぶれるほどにやわらかくなった大豆を熱々の状態で藁の中に詰め込んで、藁を閉じる。これは、豆が冷めると駄目なので、手早くやること。そして暖めた部屋の中にこの藁苞(わらづと)を入れて一晩放置する。うまくいけばこれで完成するはずだ」


何故態々納豆を作っているのかというと、リザードマンが持ち込んだ稲藁を見て、俺が食べたくなったというのが切っ掛けではあるんだが、大豆の食べ方として煮豆よりも、納豆の方が体にいいという理由もあるからだ。


そして翌日。


「お館様、何か妙な臭いがしますが」

「そうだな、だがこれで成功だ」


開いた藁苞には、まだ早めではあるが糸を引く納豆が、出来ている。鑑定しても納豆と表示されたので問題ないはずだ。

そして、何人か集めて試食会を行う事にした。

過去の試食会メンバーに加えて、料理店の経営者や料理人なども集めての試食会になった。

臭いから来る拒否感はあったが、とりあえず食わせた。

卵焼きに加えたもの、魯山人風に崩れるまでかき混ぜて出汁と醤油を加えたものや、納豆春巻きのようなもの、味噌汁の具、和え物、お好み焼きなどなど・・・


「ふむ、多少臭いますが味は悪くないですね」

「混ぜて崩れた物は、年寄りでも食べやすそうな?」

「あ、たぶんこれだとコボルトでも、きちんと消化できますね」

「春巻という料理は初めて見ましたが、餃子のようなものですかね」

「ペーストにして薬味を加えればパンにも・・・」

「一応、煮豆より納豆の方が体にいいので、気に入ったら料理に使ってみてくれ」

「煮豆は体に悪いのですか?」

「まあ、主食代わりに毎日大量に食べなければ、それ程害は無いんだが・・・植物には動物に食べられないように、苦味や毒性などを持った進化をしたものがあって、豆類もこれに当たる。多くの豆類は過熱で無毒になるんだけど、大豆の場合は熱に強くて、煮豆にしたぐらいの加熱では消化の阻害や栄養(各種ミネラル)吸収の阻害といった作用が残るんだ。でも納豆のような発酵食品にした場合は、それが消える。だから、成長期の子供などは煮豆よりも納豆の方がいいんだよ」


納豆はかき混ぜるとうまいと言い北大路魯山人は「手間を惜しまず極力練り返すべし」と記しており、実際混ぜるごとにうまみ成分が増し、400回混ぜると混ぜる前の4倍にもなるらしい。納豆のねばねばはγ-ポリグルタミン酸による物だが、これをぐりぐりかき混ぜると、一部離隔して昆布のうまみ成分でもあるグルタミン酸となるそうなので、混ぜるとうまいのも納得だ。


「それと、季節商品として売り物に追加された物があるから、ここで紹介しておくよ」


言って俺は原木を取り出した。


「??」

「薪ですか?」


「いや、これはとある物の栽培キットで、これに所定の処理を加えて5日ほど置くと、こうなる」


俺は更に、もう一つ原木取り出す。


「きのこ!?」

「こんなに沢山!」

「これは椎茸の栽培キットだ。ちゃんと育てれば結構な数が取れる。自分で栽培して料理に使うなり、栽培キットをそのまま販売するなり、使い道は自由だぞ」

「買います。とりあえず10個ください」

「え?」

「うちも10・・・いや20ください。鍋の具材で使いたいです」

「えーと・・・今は全部で20個ぐらいしかないんだけど」


椎茸って、そこまで人気あるものなの?


「一日に100個ぐらいまで増産してください」

「いや、他の町に卸してもいいのであれば、日に数百は売れますよ」

「椎茸ってそんなに人気あるのか」

「それはもちろんですよ。椎茸の収穫時期は限られている上に毒キノコの危険がありましたから、今までは椎茸採りの名人が採ってきた信頼できるものが少量手に入るだけでした。それに、余るようなら干し椎茸にすればいいだけです。味も良くなって長く保存できますから何の問題もありません」

「・・・わかった。それなら、増産するから数日まってくれ」


その後椎茸が大ヒット商品として売れる影で、納豆もそれなりに普及して行ったが、特にコボルトの子供たちが食べる事が多かったようだ。


「なあ、黒足。コボルトでも消化がどうのと言っていたけど、以前から何か気になっていたのか」

「いえ、なんと言いますか、ちょっと汚い話ですが、普通のコボルトは咀嚼が苦手なので、煮豆を食べるとそのまま・・・ハイ・コボルトになると奥歯が増えてまた状況が変わるんですけどね」

「あ~うん、なるほどね」


と言う事はケット・シーも、なのだろうか? 

異世界は意外なところが奥深いな・・・。


次回2日です

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