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89 暖房と家庭風呂

工作回です。

「お~いドルトン。ちょっと作りたいものがあるんだけど、誰か紹介してくれ」

「おう、今度は何じゃ。武器か? 鍛治師はあまり手隙がおらんぞ」

「いや、本職じゃなくてかまわないんだけど、住宅の増改築が出来て、簡単な鍛治が出来るといいな。若い見習いでもいいぞ」

「住宅? 何を始めるんだ」

「これからの時期は寒くなるんだろ? 家の中を温かくするための設備を作ろうと思うんだ」

「それは、商品化できるものなのか?」

「部品としては出来るけど、各家庭にあわせては無理だから、施工するのは職人の仕事だな。商売として稼いでくれていいぞ」

「そういうことなら、大工系を何人か集めよう」



「作るものは大きく分けて二つある。まずこの断面図を見てくれ、この床下部分もしくは床上に暖房装置を仕込むんだ。方法としてはいくつかあるが、安全を考えて温水パイプ方式にする。平面で見ればこんな感じだな、床下にパイプを何往復かさせて、ここに温水を流す。温水にするのは、かまどの熱や暖炉の熱を利用する。それともう一つ屋根の上に太陽熱温水器もつけようと思う。これの構造は太陽の熱で温まったお湯は軽くなって、上の温水タンクにたまって、タンクの湯が冷めてくると、太陽熱を集める部分に下りてきて再び暖められる」

「ほう・・・・ん? かまどの火は毎日使うし、これがあれば余熱で湯が沸くんじゃないか」

「その通りだ。例えばかまどの近くに温水タンクを設置すれば、煮炊きした余熱で暖めた湯を食器洗いに使うことが出来るし、自宅風呂や洗濯にだって毎日湯が使えるぞ」


そう、自宅風呂だ。現在は普及率が低く、多くの国民は銭湯を利用しているが、国民全てが入浴するには銭湯ではキャパが足りていない。これは浴場の面積だけの問題ではなく、感染症予防のために湯や敷地内の空気などに施している、殺菌装置の能力的にも厳しい状況だ。体を清潔に保つためにも入浴は続けてほしいが、寒さをおして銭湯に通った結果、体調を崩したり何らかの感染症にかかったりするなど、あってはならないことだろう。

だが、自宅風呂が普及すればどうだろうか。手軽に入浴できて、感染症のリスクも下がり、銭湯の状態も改善される。だが、そのための最大の障害が光熱費、この世界的には薪代と言うことになるだろう。

そこで考えたのが、太陽熱温水器やセントラルヒーティングなどの温水式暖房装置の利用だ。

日本では、屋根にぴたりとくっついた太陽光パネルに比べ、昔からある太陽熱温水器は古臭いイメージがあるのか、俺が日本に居たころでも徐々に普及数を減らしていたらしい。水を使うためその重量が屋根の負担になるというのも、敬遠される理由なのだろ。だが、実のところ最新の太陽熱温水器は他の装置に比べて圧倒的にエネルギー効率のいい装置だ。

残念ながら俺がこの世界で普及させようとしている太陽熱温水器は、最新の真空管式ではなく旧タイプとなるが、それでも夏場など薪を使わずに風呂に入れるだろうし、冬の熱量が足りない時期などは、調理で出る熱を使えばいいのだから、風呂のために湯を沸かす必要も無くなる。将来的には魔石を利用したコンロなどが普及するかもしれないが、西洋文化圏で今も暖炉が使われるように、何らかの形で薪の利用は残ると考えている。


「温水タンクなどはステンレスを加工できる鍛治師が必要じゃが、それ以外はそう難しくは無い。バルブ類も既製品を参考に何とかなるじゃろ。床上げなどはドワーフに限らず大工なら誰でも出来るじゃろうし、帝国から保護した連中に大工になりたい者や、下働きを希望する者が居れば、親方一人に見習い数人で当分食っていけるじゃろ。じゃが、太陽熱温水器というこれはどうかのう。かまどの熱で暖めるのは誰でも理解できると思うが、日の光でそこまで温かくなる物なのか」

「なるほど、効果が信じられなければ普及は難しいな。では俺が試作品を作って効果がわかるようにしよう。それと、別口で小型ログハウスにも暖房兼用の簡易コンロをつけたいので、煙突も含めて改修を手配して欲しいい」

「そういえば、暖房が無かったな。暖炉よりストーブの方が簡単じゃがどちらにせよ、煙突が必要か。わかったそれは手配しよう。試作品を作るなら、可能なら一式作ってくれんか? 仕組み上の問題点や不備を確認していくなら、こちらでも相応の者に任せねばならんが、お主が試作段階で色々確認してくれれば、担当させる候補者の幅が広がるぞ」

「なるほど。分かった、先に試作する」


小屋の暖房は、最初単純に火鉢を考えたが、暖房としては弱いし一酸化炭素中毒も怖いので、小型の薪ストーブにすることにした。防火については、俺よりもこの世界の人間の方が、詳しいだろうから火事対策はお任せで良いだろう。



「そういうわけで、また作ることになった」


黒足たちを集めて、太陽熱温水器サンプルを作成するむねを説明する。


「太陽熱温水器とは湯を沸かす装置と言うことですか」

「ああ、沸かすと言うか温水を作るだけなんだが、うまく作れば真夏で50℃ぐらいだと思う。材料も加熱装置部分は塩ビ管で代用できるから、わりと簡単だぞ」


そして作成した装置をキャンプ場のようになった、低価格宿泊エリアの炊事場付近に設置する。ついでにかまどの余熱を利用した温水装置も設置した。宿泊利用が無い時に遊ばせておくのも、もったいないのでバーベキューなどでも使える様にしたところ、休日などにそれなりに利用されているらしい。


温水装置は好評だった。特にかまどの余熱を利用する方式は、調理中にお茶に適した熱いお湯が作られ保温性も良いと言う評判だった。

・・・が、危なかった。試作品は熱湯を出す、電気ポットのようなものだった。しかも、沸騰後の安全装置が無いので、常にタンク内で高温になっていた。いっそ蒸気機関になるんじゃないかと思えるほどだった。このままでは危険と判断し、タンクに温度表示と温度調節装置を取り付けた。それぞれ魔道具となったが、魔力の消費は小さなものだし、蛇口などから使用者の魔力をわずかに吸引することで、装置は魔力切れ無しに永久的に使用できるようになっている。


「とりあえず、これである程度は安全になったかな?」

「そうですね、温度表示が数字以外にも色と絵の表示付きになったのは良いアイデアだと思います」

「太陽熱温水器も、悪くないだろ? まあ構造上、季節と時間帯に制約を受けるが、薪を使わずに温水を使えるようになるんだし、長い目で見れば凄く得なんだよ」


問題は使わない時期に、温水機内やタンク内の水が傷むことだな。日本の水道と違って塩素を使用していないので、水はそれほど長持ちしないだろう。やはり魔道具で再度殺菌なり除菌をするべきだろうか? 前世で、40歳以上の日本人の7割ぐらいはピロリ菌に感染していると聞いたが、この世界にもピロリ菌は居るのかな?



「殺菌ですか。これは試作ですけど製品化するときはステンレスですよね、ならばこれも殺菌魔法陣を付けて魔石で自然回復ですかね。常時作動ではなく、何時間おきかに殺菌すれば問題ないのではないですか」


黒足たちに聞いても、分からないということなので、何人かに聞いた結果ガイアンから、アイデアをもらった。確かにそうだ、密閉容器である以上常時殺菌する必要は無いだろう。


「なるほど、ありがとうガイアン」

「いえいえ、このくらいどうという事もありません。ところで、帝国から来たエルフたちに良い仕事はありませんか」

「体は皆回復したのか?」

「怪我などは、皆回復していますが、体力はまだ完全では無いですね。ですが、彼らも自立を目指して職を探したいということなので、何かありましたらと・・・」

「今、温泉街を作り始めたから、温泉宿や商店の経営者や従業員を探しているな。後は狩ができればダンジョンで冒険者になる手もあるが・・・何か技能があるとか文官が出来るとかそういうことを含めて、バラルやドルトンと求職や就職の相談を出来る仕組みを、検討してみるよ」


前世風に言えばハローワークになるのかな。冒険者ギルドについても、宿屋や酒場を窓口として残すとか、時間をかけても冒険者ギルドの経営者側として、引き込むなどすれば出来ないことも無いよな。無理ならダンジョンの中だけでもやってみるかな。


次回、都合により29日となります

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