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88 ブルクスのその後

ちょっと短めです

「では、近日中に各指導員を派遣いたしますので、冒険者や職人、兵士の手配をお願いいたします」

「はい。ちょうど職にあぶれた砦の兵がいますから、先ずは彼らの中から募集してみましょう。まあ聞けば、かなりの高収入が見込めるようですし、腕に覚えのあるものなら話に乗ってくるでしょう」


ブルクスでの交渉を終えて使節団は帰路へとつくことになった。ブルクスでの決定事項としては、ケット・シーによるダンジョン出入り詰め所の設置と交易に関する事項に、各種技術者の交流。これは航海術に長けた船乗りや船大工も含んでおり、これにナラ公国の技術を加えることで、聖光神国に対抗しうる海軍戦力を設けて防衛を行う考えである。

対聖光神国についての賛同が得られた背景として、ブルクスでは何らかの形で水生種族の血を引くものが住人の半数近くも居り、ブルクス伯自身も水を生み出す魔法など使えることから、聖光神国の思想にてらせば、根絶やしにされる対象であるという事情があった。


「それから、これをお渡しいたしましょう。スマホという道具らしいのですが、最初に起動した方以外には利用できませんし、紛失しても手元に戻ります。ですが、決して他の者に渡さぬようお願いします。これは魔道具ではなく神具ですので。各スマホには制限レベルがありますので、それぞれについた説明の札や使用感を確認してから、貴国の家臣方に分け与えてください。私の連絡先はこちらになりますので何かありましたら遠慮なく連絡ください」


クシミールはパソコンで作った名刺をブルクス伯に渡す。


「これは?」

「名詞と言います。ご覧の通り私の名前と役職、連絡先、住所などを記載しています。郵送物はケット・シーに渡していただければ対処してくれます。ではいずれまたお会いしましょう」


後日、スマホの機能を知ったブルクス伯は、それが正しく神具であると理解した。そして、ナラ公国への訪問後、帝国との決別とケット・シー王国を含む森との同盟を公式に発表した。

帝国皇帝は激怒し、ブルクスから来た使者を捕らえて切り捨てるよう命じたが、使者は突如生じた黒い何かに飛び込むと、そのまま姿を消してしまった。

皇帝はブルクス砦に討伐を命じる伝令を走らせるが、後日戻った伝令から砦の消滅と、ブルクスが堅牢な城砦都市になっていたという報告を聞き、帝国が北方都市の支配権を失ったことを知る。



「八咫烏1号機、対象の様子はどうだ」

『こちら八咫烏1号機、現在対象は廃村内に居ます。馬車の残骸は対象たちが廃村に持ち帰り、現在宴会の真っ最中です。ブルクスの馬車以降は、旅人も通りませんので盗賊被害は出ていません』

「了解した。本日日暮れをまって野盗の殲滅を行う」

『了解です』 



「食料がなくなった時はどうなるかと思ったが、いいときに馬車がきてくれたよな」

「まったくだ。帝都をでたら町なんてありゃしねえ、大陸最大国家とかいつの話だって言ってやりてえよ」

「だよな。でも、もう少し進めば北部の都市があるんだろ? こんな危険な所とは一刻も早くおさらばしたいぜ」


廃村に居た者たちは、馬車から持ち出した食料を食べ、酒を飲み上機嫌であった。帝都内で小規模な犯罪者集団を組織していた彼らは、帝都水没事件以降に発生した内乱を期に帝都を捨て、他の都市に移ることを考えて、そして実行した。

彼らの認識では帝都の外には、いくつもの貴族領があり、帝都から二日も歩けばそうした町に、たどりつくと思っていた。だが実際は、小さな村がいくつか点在していただけで、町と呼べる規模のものは無く、生活レベルもかなり貧しいものだった。彼らは村人に助けを求め僅かばかりの水や食料を分けてもらうと、早々に村を立ち北へと向うということを繰り返し、そして辿りついたのがこの廃村だった。

廃村では馬車を襲撃したのに、何故道中の村は襲わなかったのか。それは、野盗よりも村の方が戦力的に上回っているからに他ならない。仮に野盗たちが村を占拠しようとした場合や、本気で恐喝した場合、村人との戦いになる恐れがあり、盗賊たちはこれを恐れた。

何故、村人を恐れるのか? 

村には満足な防壁も無く、常駐する兵も居ない。だが、それでも魔物が闊歩するこの世界で、村として存続している。

村は魔物の襲撃を受けたことが無いだろうか?

それとも、村人たちに魔物に対抗できる力があるのだろうか?

盗賊たちは後者であると考えた。

地球であれば、その結論とは違うのであろうが、盗賊たちは村で生きると言うことがどういう事で、村人とはどういう者たちかを正しく理解していた故の帰結だった。


「ああ、そうだな。村を壊滅させるような魔物が出たら俺たちじゃ、手も足も出やしねえから明日の朝には出発しよう」


彼らは、街で暴力と組織力を背景に人を脅して生きていた。だが、村人は彼らとは違う。自然と魔物の脅威の中で、己の力で生きるということがどれ程過酷であることか。

あまり一般には知られていないが、街の暴力組織の構成員などより、村人の方が精神的にも肉体的にも、はるかに高い能力を持っている事実があり、彼らにとってはそこらの兵士よりも屈強な村人の方が強いというのが常識であった。


「生憎だが、お前たちの旅はここで終わりだ」


突然、家の外から声がかけられ、盗賊たちはぎょっとするが、時既に遅かった。突如、鎧戸が外側から破壊され、室内に何かが投げ込まれる。だがそれが何かを盗賊たちが確認する間もなく、室内に閃光と轟音が響く。


「ぎゃーーーー」

「目が!めがーーー」


そして、モーブとノブタが室内に飛び込み、盗賊たちを外へと投げ飛ばすと、家の外に居た者達が、次々と盗賊たちに刃を立てその息の根を止めていく。


「この建物は残しておくのか」


襲撃前にクシミールから“室内では殺さず、外で殺す”という方針を聞かされ、それに従った結果モーブたちは、盗賊を外に放り投げるという事にしたのだが、全て終わった後にその指示の理由を考えて、モーブはその疑問を口にした。


「一応残しておこうかと思います。また同じようなことがあると困るので、何か手を打つ必要がありますが、状態も良いので移民が入れればそれも良いかと」

「何気に標準的な人族の村は初めてじゃの。王様に言って商品化しておいてもらわんか? 何ぞ役立つかもしれんし」

「正直言って俺は粗末すぎて住みたくないが、まあそれでも利用する可能性があるなら血糊は無い方がいいな」

「壊そうと思えば直ぐ壊せるし、それで良いか。それで、次はどこに行くんだ」

「ブルクスの東にある山にドワーフの集落があるらしいので、そちらに向ってみようかと思います」

「では、偵察部隊に後を頼んで、ワシらは一旦戻るかの」



次回26です

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