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86 ブルクス伯

「どうやら、ブルクス伯という者が行方不明らしいのじゃ」

「あの地の領主でしょうかね。帝都から救った方たちには居ませんでしたが、帝都に戻されたのか、元から帝都に居なかったのか分かりませんね」

「帝都周辺から北部にかけて少し探索してみるかの。領主なれば馬車か何か使用して護衛も連れて居るじゃろ。探せば見つかるかもしれん」



『こちら八咫烏1号機、廃村らしき場所に複数の生物反応を確認した』

「了解じゃ、生物反応の色と数を知らせよ」

『反応数は8、色は赤っぽい黄色です』

「了解。1号機はその者たちを監視。2号機以降は付近を捜索し、ブルクス伯の手がかりを探せ」


『こちら2号機、林に潜む数人の負傷者を発見した。座標を送る』

「了解、合流できそうな地点にゲートを開け」


暫くの後、馬車の残骸と数人の生き残りを見つけた、という報告を聞いた長老とクシミールは、出かけて行った。




「マーク、テオドール様とバルナールの様子はどうだ」

「ああ戻ったのかジェリコ・・・」


マークは身振りでジェリコに付いて来るよう指示し、少し離れた位置で話を始める。


「伯爵様は眠られているが、やはり傷の具合が悪い。薬草を当ててはいるが、少々熱があって体力を消耗されている。バルナールの方は更に危険な状態だ。・・・おそらく日暮れまで持つかどうかというところだ・・・」

「くっ・・・そうか」


帝都で内乱が発生した直後、ブルクス伯は早々領地に戻ることを決めた。その行動は夜逃同然であったが、元々帝都に屋敷を持たぬため、身一つで帝都を脱出する事が出来た。伯爵一行はいくつかの村を中継地点に食料などを補充していたのだが、そうした中継地点であった寒村で、伯爵一行は思わぬ襲撃を受けてしまう。

寒村は過去に何度か立ち寄った場所であったが、伯爵たちが帝都に居る間に、村は魔物に襲われ廃村になっていた。そして、襲撃してきた者たちは廃村を根城にしていた盗賊たちだったのだが、何も知らぬ伯爵一行は寒村で突如襲撃を受け、伯爵を庇ったバルナールが大怪我を負い、伯爵もまた負傷してしまい這う這う体で脱出したが、途中で馬車が故障し負傷した二人を馬に乗せ、近くの林に身を隠したというわけだ。


「そっちはどうだった?」

「山芋をいくつかと鳥を獲った。小さく刻んでスープにすればテオドール様も食べられるだろう」

「ああ、どうにか食べてもらわ・・・!」

「テオドール様!」


話していた二人が突如会話をやめて走り出す。


「マークはテオドール様を! 何者だ、姿を現せ」

「わかった」


ジェリコが剣を抜いて周囲に鋭く視線を走らせ、マークは倒れている二人の下へと急ぐ。そして、ジェリコの誰何に応じるように、返答をする声があり、男が一人現れた。


「あ~俺たちは怪しい者だけど、敵じゃないから落ち着いてくれないかな」


「怪しい者? ・・・ふざけるな! 怪し者を自称するような奴をテオドール様に、近寄らせるわけに行くか」


一体いつから居たのか、冒険者風の男が一人立っていた。驚くことにその距離は5m程しか離れていない。林の中とは言え、彼らも警戒を怠っては居なかったし、林の中を移動すれば少なからず音がする物だが、気がつけば男は目の前に居る。


「きさま、何者だ。いつどこから現れた」

「何者かというと、俺は魔の森のとある国に仕えるヨルンという者で、どこからかと言うと、ちょっと仕掛けがあるんだけど、たった今、魔の森からここに来た」

「たった今、魔の森だと?」

「そ、魔の森。見せたほうが早いね」


言ってヨルンはゲートを起動させる。


「何をいっている。!? いや何だ、それは! おいその黒いのは、何なん・・だ、誰だ」


ジェリコが目の前に展開されたゲートについて問うっていると、ゲートから一人の男が出てくる。男はさっと周囲を見回し、口を開く。


「北部の都市の関係者だな。俺はモーブ、その男と同じ国に属するもので、今は使節団の護衛をしている・・・血の臭いがするな、怪我人が居るのか? ちょっと見せてみろ」


言って、モーブは倒れた伯爵たちの方に近寄っていく。


「お、おい動くな。止まれ」


ジェリコが制止の声をかけるが、モーブはかまわず近寄っていきバルナールをみやる。


「・・・その男、死に掛けていて、もう長くないな。だが俺たちなら助けられるがどうする?」

「なに?」

「そっちの男も負傷しているようだが・・・まだ大丈夫だな、直ぐには死なんだろう」

「きさま、伯爵様に対して無礼な」

「そんな事はどうでもいい。助けるか死なせてやるか聞いているんだ」

「助けて・・・いただけますか」

「テオドール様」

「伯爵様」


寝ていた男の発した言葉に、護衛二人が驚きの声をあげ、伯爵に駆け寄る。


「我々には何もできない。だが彼は助けられると言う。なら縋ってみるべきだろう・・・」


ブルクス伯は身を起こすと、護衛二人を諭すように告げる。声音からは若干の疲労を感じるが、それでもその顔つきはからは確りとした、強い意思が伝わってくる。比較的整った顔立ちの美中年ではあるが、若干薄くなった髪は年齢から来るものか、はたまた心労から来るものなのかは分からない。


「ヨルン薬を与えてくれ。俺は薄める加減がよくわからない」

「了解。・・・半分ぐらいに薄めて飲ませ・・・意識が無いから無理そうだな。とりあえず傷には塗り薬をぬって飲み薬はスプーンで一杯だけ口に入れてみよう」


三人が見守る中投薬が行われる。

護衛の二人は渋ったが、ヨルンが目の前で飲んで見せ、バルナールに与えて問題ないようなら、伯爵も飲むことになった。バルナールは人体実験のような扱いだが、何もしなければ数時間後には死ぬだろうし、普通の治療ではこの状態からの回復は絶望的だろうということで、護衛の二人も納得したようだ。


「すごい。顔色が戻って呼吸も安定してきた・・・」

「これほどの薬が存在するのか」


薬を与えられたバルナールは、負傷していた腹部の傷が修復され、目に見えて回復していく。


「それと、そちらの貴方もこの薬を飲んでください。すぐ回復します」

「わかった。いただこう・・・これは・・・体の不調が嘘のように消えた。これはエリクサーと言われた伝説の霊薬では無いのか?」

「・・・あ、いいえ。伝説の何それなどではなく、我が王の慈悲です。たぶん」


ヨルンは、にこやかに応対をしているが、内心少しあせっていた。気のせいで無ければ、目の前の伯爵の髪のボリュームが少し増したように思えたからだが、誰も何も言わないので目の錯覚と思うことにした。


「王の慈悲・・・そなたらの王の望みを伺っても良いか」

「それは私の権限を越えますので、担当者を呼ばせていただいても?」

「ん? かまわんが」

「では・・・と言ってもここでは少し狭いですね」

「なら、俺が少し木を伐採して広げよう」


モーブは立ち上がり腰の袋に手を入れ薙刀を引き出す。突然取り出された武器に、伯爵の護衛たちが驚きの声をあげるより早く、モーブは動いていた。岩融いわとおしを握り締めるや否や、一気に魔力を注ぎ込み雷光一閃、振るわれた薙刀から眩い光と衝撃が放たれ、次いで轟音が鳴り響き土埃が、舞い上がる。


「ヨルン、風で飛ばしてくれ」

「俺、風は苦手なんですけど・・・微風」


ヨルンが弱い風を送り、土埃を吹き払う。

土埃がなくなると、そこには扇状の更地が出来ている。更地の先は切り飛ばされた樹木になぎ倒された木々が散見される。


「人薙ぎで林を・・・ば、化け物か!」

「やはり森の民であったか・・・」


土魔法で土地を均したモーブは、魔法の袋から屋敷を取り出し設置する。


「屋敷が入る魔法の袋・・・・」

「もう、何がなにやら・・・」

「あ~会談の場も用意できましたので、こちらの担当を呼び出しますね」


衝撃の出来事の連続で半ば放心している伯爵一行ではあったが、再び展開したゲートから、エルフ、ドワーフ、リリパット、ケンタウロスにオークと、続々と異種族が姿を現し、驚きに目を見張る。


「先ずはご挨拶を。私の名はクシミール、ご覧の通りのエルフで、我らが王の意思を伝えるための、使節団の代表を任されております。ですが、皆様は大変お疲れのご様子。先ずはあちらの屋敷で、休まれて食事などいかがですか。我が国の料理は中々に美味ですので、きっとご満足いただけることでしょう」


次回22日予定

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