表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/154

78 捕虜からの情報

「帝国人から聖光神国の場所と、魔法の鍵の所在を聞き出せたにゃ」


翌朝早く、殿下が俺を訪ねてきて、取り調べで得た情報を告げてきた。


「随分と早かったですね」

「敵の首魁を尋問用の牢獄に入れたにゃ。意識は残って話も出来るにゃけど、手足が全く動かない牢にゃ、入れてまもなく、泣きながら白状し始めたにゃ」

「あらま、随分あっさり喋ったんですね。俺はてっきり“さっさと殺せ”か“身代金を払うから自分だけでも解放しろ”の、どちらかを言うと思ってましたよ」

「所詮、人族のなかで権力を振りかざすだけの男だったにゃ。ろくに戦えもしないにゃから、部下無しで突っ張る度胸も、実力もにゃかったにゃ。ちょっとにゃーが、自慢の爪で撫でてやったら、ペラペラ喋ったにゃ。敗れて死を選ぶような潔さは帝国人にはにゃいし、状況が状況だけに助命の交換条件は口にしなかったにゃ」


なるほど、中々の駄目さ加減だな。もっとも、偉そうに捕虜の権利や待遇とか主張しなかっただけ、状況を理解する頭はあったんだろうな。


「それで、鍵はどこにあるんですか? それと、今回捕まえた者の素性は分かりましたか」

「一つはここにゃ。捕らえた首魁が自分で持っていたにゃ。素性にゃけど、先代皇帝の孫だったにゃ、首魁から見た現皇帝は、いとこ違いにゃ従叔父じゅうしゅくふと呼ばれる間柄になるにゃ」


殿下は腰のポーチから金の鍵を一つ取り出す。既に手に入れている二組の魔法の鍵とよく似たデザインの金の鍵だから、間違い無く魔法の鍵なのだろうが、それより気になるのは・・・。


「いとこ違い?」

「現皇帝は先代の弟の息子にゃから、首魁からみて父の従弟、現皇帝からしたら首魁は従兄の子にあたるにゃ。現皇帝は、先代亡き後のごたごたのなか、棚ぼたで皇帝になったといわれていたにゃから、首魁は先代の直系である自分の方が、皇帝にふさわしいと思っていたみたいにゃ。もっとも先代皇帝も簒奪帝と呼ばれていたにゃ。帝国皇帝の血筋にゃんて数代単位で入れ替わった、パッチワークの帯みたいな物にゃ」


うわ~帝国は、権力欲が強い人間ばかりなのか? そういや、普通は“○○○帝国”って名称になるのに帝国としか聞かないのは、皇帝の血筋が入れ替わりすぎるからなのかな。


「えっと、もう片方はもしかして?」

「そうにゃ、既に聖光神国に持っていかれてしまったにゃ」


そうだよな、1万人送ってくるって言ってるくらいだし、鍵の片割れは向こうにあるよな。


「聖光神国は別大陸で間違いないんですか?」

「それは間違いないみたいにゃよ、場所は北にある大陸の南端付近らしいにゃけど、船で渡ってくる場合、船員以外の兵士は最大で200人ぐらいしか運べないらしいにゃ。この人数は、きちんと食料を与えた場合の人数で、奴隷なら無理すれば300人位は運べるそうにゃ」

「え~と・・・大部分を奴隷としても、30隻ぐらいは必要ですね、まともな兵士としたら50隻ですか、それだけの船と船員を抱えている国ですかね?」

「流石にそれはにゃいにゃよ、船を造るのも大変なら、船員の教育も大変にゃ、それほど用意出来る力があれば、既にこの大陸に砦の一つや二つ持っているはずにゃ」


まあそうだよな~。


「ならば、鍵が無ければこっちへの侵略は、簡単では無いですよね。鍵はアプリで取り込んでから鉄板にでも挿して、池に沈めましょう。後日回収できるように頑丈な鎖をつけて、水が流れこんだら分かるようにしておきましょう。そうだ、爆発する魔道具を作って水と一緒に流れ込むようにして、無効で爆発させて・・・で、その後は聖光神国にこちらから仕掛けて、ダメ押しです」

「どうやって海を渡るにゃ?」

「それは、大型飛空船か、小型飛行機で空を行けば、いいんじゃないですか? そして、その先は帝国に潜入した方法でもいいですし、戦時下で無ければ普通に接近も可能でしょう。なんだったら空爆する手もありますし。それと、こちらの大陸の帝国以北にも国はありますよね?」

「一応あるにゃけど、帝国の属国になっていた小国の集まりにゃ。人族至上主義には反発していた気がするにゃし、同族も少し住んでいたと思ったにゃ」

「帝国を、もう少し揺さぶればそれらの国がもう一度、独立できるんじゃないですかね? こちらに付いてくれるなら、物資を支援してもいいですし、帝国より排他的な聖光神国の事も良くは思ってないでしょう」

「ちょっと、待つにゃ。それはにゃーの判断ではにゃく、ちゃんと皆の意見を聞くにゃ」

「そうですね、そうしましょう」



「というわけで、皆の意見を聞きたいわけだ」


殿下と話した内容を、会議の場でもう一度説明して、意見を求める。皆一様に考え込んでいるな。モーブなどは、また難しい話をとぼやいていたが、厄介ではあっても放置は悪手だと思うから仕方が無いんだよ。


「帝国を揺さぶるというのは、どうするんです?」

「今の帝国は内戦中だ、各地で独立の気運も高まっている状況では、本来俺たちにかまっている場合じゃないんだよ、だからその状況を少し後押ししてやる」

「戦か?」

「いや、今のところ帝国と直接戦うつもりは無い。むしろ聖光神国には、早期に打撃を与えておきたいと思う。まあ、今回の作戦の危険度は先日の潜入作戦と同程度だと思う」

「詳細はまだまだ分からんが、詰まるところ得意の変則で反則な攻撃で混乱させるわけだな。確りした作戦を立てて、危なければ直ぐに引けるなら・・・いや、その辺りはお主に敵う者は無いか」


おう、作戦は兎も角、逃げる算段に関しては、俺の右に出る者ないと思うぞ。


「帝国を放置しておくと、状況が悪化するのか?」

「まず、現在何故帝国が混乱しているかといえば、謎の洪水によって現皇帝が求心力を失ったためで、その結果、複数の反乱勢力が生まれた。現在捕らえているのはそうした反乱勢力とは少々違う物なんだが、それでも反乱勢力としては一番大きい。魔法の鍵を取り上げたから、聖光神国が直接侵攻してくることは無いが、反乱勢力の弱体化で皇帝が力を取り戻す可能性がある」

「まあ帝国に残された反乱勢力は、一気に叩かれるかもしれないな」

「とは言え属国との火種は暫く燻るだろうから、聖光神国が諦めなければ、密かに属国へ支援するふりして、聖光神国に取り込もうとするだろう」

「属国とは思想が合わないと言っていなかったか」

「聖光神教が、他種族を蛇蝎だかつの如く嫌っていたとしても、目的のために一時的に利用する事はあるはずだ。あの異端審問官のような者なら、手を組むのではなく利用していると考えて、他種族に対して表面上は友好的に接するぐらいの、自制心はあるだろ」

「嫌な自制心だな」

「帝国の属国になっている地域は、どうやって支援するんですか」

「詳細は一度現地に行き、現地のケット・シーから情報を得て考える。支援の必要が無くても聖光神教とその国の情報だけは伝えたい。一度現地に行けば、ケット・シーを通じて交易する事が可能になるし、聖光神国への対処もしやすくなる」

「良いんじゃないか、放置すれば手遅れになることがあるなら、動くべきだろう」

「そうですね、仕方が無いんじゃないですかね」

「これまでを思い返してみると、ケント様がすべきと思うなら行動した方が、ええじゃろうな。わしが思うに何か神様が神託でも請けておるんじゃないかのう? エルフ村然りドワーフ村然り、鬼族の遺跡もまた都合よすぎるからのう」

「長老、怖いことを言わないでくれ。それから、ドルトンは引き続き造船の指揮をするようなのか? もし手が空くなら天翔壱式に積む武器を、作成をしたいから相談に乗ってくれ」


・・・俺も実は気になってた。何か神様が俺との遭遇率を、操作しているんじゃないかと、思った事はある。流石に、仕組まれた悲劇や救出劇を演出されたとか、俺の思考を誘導されているとは思いたくないが、俺にとってプラスになる存在の危機に、俺が遭遇することが多すぎるとは感じる。全て結果オーライではあるし、現状に不満は無いんだけど、それでも思考誘導されていないことを願う。


「武器じゃと? ワシにはまだ、お主ほどの魔道具は作れんぞ」

「魔道具部分は俺が手掛けるが、鍛治関連の部分があるんだ。前に作ってもらった魔道レンジ砲とは、方向性が違うから鍛治技術が重要なんだ。まあそれでも、敵に模倣されないように魔法や魔道具が必要な構造にするけどな」


以前、俺がスマホでテストして、ドルトンに作成依頼した電子レンジ魔法陣は、軽トラの荷台や防壁に接した監視塔に据え付けられている。幸いまだ必要とされる状況は発生してないが、生物に対しての威力は申しぶんないが、それ以外に対してはあまり効果がないので、対物にも効果のある武器を作ろうと思っている。それと、地下遺跡で見つけた魔道具も新たな魔道具に応用できるはずだ。


「魔法を打ち出す杖とかそんな感じか?」

「まあそんな感じ・・・・かな」



「俺の使っている槍の中空部に魔石をな・・・んで、こっからドーンと」

「ふむ、確かにそれなら・・・しかしそれでは帝国の人族にも使えてしまうじゃろ」

「安全装置は組み込むつもりだ。魔道具の解説本で小型化の仕組みも分かったし、多少複雑になってもどうにかなる」

「・・・お? こっちの図面は何じゃ」

「それは天翔壱式用の武装だ。天翔壱式の利点はなんと言っても空にある点だからな、上空から対地攻撃するための手段と、相手を直接狙って攻撃する武器を装備する」

「これは確かに鍛治技術がいるな。これを人が携行出来るようにはせんのか?」

「少数作成してもらうつもりだけど、基本的には大型船や飛行機、武装車両につけるだけにしたい。技術は何れ模倣されるけど、現物を奪われなければそう易々と模倣されないだろうからな」


一般販売なんかしたら、絶対商人が飛びつくし、横流しして儲けようってやつが出るだろうからな。朧ミスリル剣はその危険があるからあえて質を下げているんだ。朧は鉄剣より丈夫だが、本物のミスリルと切りあったら数合で、表面の朧ミスリルが欠けて、鉄の心金が切り落とされるだろう。


「まあ確かにな。人族にも魔法を使えるものが多少いるじゃろうし、技術の秘匿や制限が出来るなら、した方がいいじゃろな」


実のところ、帝国人は1~3の魔力しかもたないから、魔力を必要とする武器であれば、奪われても連射できないので、殆ど役に立たないと思う。それでも一人一回で武器を使いまわす方法であれば、人海戦術で使えなくもない。何故そんなに魔力が少ないのかは、はっきりしていないが、可能性の一つとしては、そもそもベースになった生物が違う可能性がある。帝国や神国と魔法王国が根本的に別種の生物から人族化したのであれば、魔力保有量などにも差があるのが理解できるし、魔法王国や人族外の”人”が敵視されるのもそうした理由なのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ