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77 突撃、怒りの3種族+1

「そろそろ城壁を越えたと思うぞ」

「そうか、じゃあドルトン上に向って直径5cmぐらいの穴を頼む。貫通したら地面の穴を変えずに下を広げてくれ」

「わかった」


地上に向ってドルトンが慎重に穴を掘っていくと、やがて地上への穴が開き、ドルトンは指示通り穴の下を広げる。

俺は念話で指示を出す。


先ずはシデンが様子を見てくれ。


無言で頷いたシデンはドルトンの手に乗って、地上への5cmの穴から顔を出して様子を見て戻る。俺たちは一旦穴から離れて、シデンの報告を聞く。


「周囲に人影はありません。かがり火もあまり届か無いので、僕が出る分には問題なさそうです」

「そうか、ありがとう。殿下、潜入工作員との連絡場所などは、決まっていますか」

「一応のアジトがあるにゃ、ここからにゃら壁を左に見て50m程進んで、右に行ったところにゃ」


殿下は以前仲間が描いたという地図と、スマホの地図を見比べながら、およその位置を指し示す。


「分かりました、そこまで行ってゲートを開けばいいですね」

「ああ、それが一番目立たないだろうから頼む。危険を感じたら直ぐにゲートで戻れ、俺たちのスマホは1番ゲートを出せるように待機しておく」

「はい。では行ってきます」


シデンが外に出た後、穴を少し広げてそれぞれスマホのマップを更新する。その後はドルトンが地上への穴を塞ぐ。これで、俺たちが発見されることは無いだろう。地上に出たシデンも身長20cmで今は黒っぽい服を着ているので、滅多なことでは発見されないだろう。それからしばし待っていると、俺たちの元にゲートが開いた。


「よし、潜入員は頼むにゃ」

「にゃーお任せくださいにゃ」


ゲートをくぐって二人のケット・シーがシデンの元に向う。彼らはケット・シーとしては、若く小柄なため、ちょっと大きめの猫にしか見えない。メインクーンと同サイズ以上の殿下とは、大人と子供の差があるな。


更に待つことしばし。

再びゲートが開き、二人のケット・シーが戻ってくるが、片方は先程とは違うケット・シーだ、おそらく潜入工作員だのだろう。


「諜報部隊所属、ヨシコー・ワシマですにゃ」

「ご苦労、報告を頼むにゃ」


ヨシコー・ワシマ? わしま・よしこー・・・・わしまよしこ・・・か、なんか和名っぽいな。


「わかったにゃ、では反乱軍はこの建物を本部にしているにゃね」


おや、考え事している間に報告は終わっていたようだ。地図の一点を指し示しているが、その建物にいるわけかな。


「公王、聞いた通りにゃ。目標が居る建物の場所が、分かったにゃけど、どうするにゃ」

「警戒具合は?」

「厳重にゃ、不眠番も居るらしいにゃから、敵の首魁を探すのは大変にゃ」

「そうですか、ちょっと待って下さいね」


地図とスマホのナビマップを比較する。なるほど確かに人が大勢いるようだな。

そして、色の表示を確認する。


「殿下とケット・シーの皆さんの、ナビ画面を、みせてください」

「? 自分のでは、ダメにゃのか」

「ええ、殿下たちのナビが重要です」


地図は同じだが、全てが同じ表示ではないので、殿下たちの地図を参考にする。


「殿下は帝国から恨まれていますからね、ほら俺の表示はこれです」

「何で色が違うにゃ?」

「俺が人族の容姿をしていて、森で敵対している勢力の長であると、ばれていないからでしょう。そして、敵の指揮官がもっともケット・シーに詳しいでしょうから、その王族である殿下に強い敵意を持ってるわけです。それは当然、赤い表示となりますから、この赤い光点が敵の大将の可能性が高いです。他の者も種族によって色が違うだろう?」

「黄色じゃな」

「緑だ」

「僕も黄色いです」

「黄色ですね」


ドルトン、モーブ、シデン、黒足とそれぞれの色を伝えてくる。モーブは既に人族の分類なので、敵対しているとばれなければ、俺と同じ扱いだな。黒足はまだ種族的には上位コボルトだし、顔も目元とか毛が生えてるので、誤魔化しきれないということかな。


「シデン、そんなわけで、この辺りにゲートを頼む」

「分かりました」


俺の表示は緑だから正体はばれていない。用意しておいた覆面をかぶり、今後も正体がばれないようにする。


「よし、今から1時間後、襲撃を行う。それぞれ配置についてくれ」


同行者が準備のために転送地点に・・・敵を転送する先に移動し、俺とドルトンはシデンにバックパック(飛行装置)を取り付ける。


「じゃあ、シデン頼む。見つかりそうになったら直ぐに撤退しろよ」

「はい、行ってきます」


そして、シデンは軽く地を蹴って空高く飛び上がった。シデンが背負うバックパックには浮遊石と小型のファンが組み込まれている。ファンは電池式で風圧の強いものではないが、シデンの体を進めるには充分で、何より静音性に優れていた。


『目標を発見しました、20秒後ゲート発動します』

「了解」


俺はゲートをくぐり、シデンと合流する。まあ、合流といっても俺はゲートから頭を出しただけの、宙に浮く生首状態。中国妖怪の飛頭蛮みたいな感じだな。

そして、俺は建物の上空から加護を使う。

領域拡張、送還。

広がった魔方陣が一瞬にして建物を消し去る。目の前の建物が消えると、外にいた兵士が騒ぎだしたが、もはやどうしようもないだろう。騒ぐ兵士の声を聞きながら、俺はゲートから頭を引っ込める。まもなくシデンがゲートから戻ってくる。


「じゃあ、合流ポイントへ移動するぞ」


俺たちが移動すると、既に皆準備を終えていた。


「それじゃあ、建物を出すぞ。敵に気取られる前に一気に制圧してくれ、ただしできるだけ死人は出さないようにな。特にターゲットの司令官は殺すなよ、偉そうだとか、気に入らないとか思うところは有るだろうけど、生かして捕らえろ」


俺は仲間たちが囲むその広場に、先程の建物を召喚する。魔方陣が浮かびと共に建物が地面からせりあがる。


「フラッシュバンを投げ込んで突撃!」


カーン、コロコロ・・・バンッ!!!

カーン、カーン、コロ、カン、コロコロ・・・バンッ!!! バンッ!!!


「うおーーーぶち殺せえええ」

「ドワーフに負けるな、我らも行くぞぉぉーーーーーー」

「死ねえええー」

「GYAAAAA」

「積年の恨み思いしれ!」

「WAAAAA」


ん? 人族が何か叫んで・・・・いや、単なる悲鳴か。


「リリパットは玩具(にんぎょう)やペットじゃないいんじゃ!」

「ケット・シーにゃめんにゃよ」


「ケント、これ大丈夫か? 死なれると失敗だぞ」

「フラッシュバンは殺傷力の無い武器だ。・・・俺の自作だから正規品と違って安全性は確かではないが、まあ、薬もあるし、どうにかなるさ。殺してはいけないという話はさっき何度もしたし、半殺しか七分(ななぶ)殺し・・・最悪九分くぶ殺しぐらいですむんじゃないか? スプリガン戦で、手足が無くても首がつながっていれば助けられるって分かってるし、大丈夫だよ」


ホムセンの栄養ドリンク(魔法薬)は飲ませるか、傷口にかければ欠損した手足さえも生えてくるからな。

・・・なんかケット・シーの声も聞こえたけど、彼らも虐げられてたのか? 

いや、仲間が食われてた事への怒りかな? 食ったのはスラムの住人で、彼らは無関係だろうけど、ある意味連帯責任だな。


「しかし、突撃していった面子がちょっと想像と違ったな」

「そうだな」


突撃の指示で真っ先に動いたのがドワーフにエルフ、リリパットだった。彼らの突撃に気圧されたのか、他の種族は建物の周囲を囲んで警戒している状態だ。


「やっぱり長生きな分、今までに色々あったんでしょうね」

「それでも、同じ街に住む者に怒りを向けていないんだから、人族相手ではなく帝国への恨み辛みなのだろう。他の種族は俺や黒足たち同様、人間から直接的な迫害を受けたことが、無いんじゃないか」

「言葉が通じなくて、コボルトやオークが魔物扱いされていたとか、ケンタウロスは蛮族扱いされていたと、クーナさんから聞きましたが、今の世代は実体験してませんからね、自分らピント来ないのです」


やがて、野太い勝鬨が建物から聞こえてくる。声の感じだとドワーフたちかな。


「負傷者は、速やかに治療しろ。建物から全員でた後は点呼をとって報告、捕虜は牢獄に連れていく」

「□△◆▼?▧◁▷▷」

「▧▼▲◆□△◁」


捕虜が騒ぎだしたが言葉がわかんないな。


(ドルトン、連中は何を言っている?)


「お主ら人族がワシらに協力しているのを、不満に思っているようじゃ」


なるほど・・・・。


「ガタガタうるさいわね、種族云々の前に、敵対して負けたんだから、殺されたってあたりまえなのよ、生かしてもらえている事を感謝して、ちょっと黙ってなさい」

「□□△△◁▼▼▲」

「あーもう、うるさいわね。くーちゃん、やっておしまいなさい。お~~ほっほっほ、騒げばあなたたちもこうなるわよ」


クーナがアルケニー状態で、槍をもって前に出てきて、帝国兵を一喝した。

が、蜘蛛女という異形の姿に、帝国兵から悲鳴が上がる。クーナは手近な帝国兵を蜘蛛糸で絡め取って、更に騒げば同じようになると帝国兵を脅した。

・・・貴女は、悪の組織の女幹部か何かですか。


「じゃあ殿下、俺言葉がわからないし、正体を明かすと不利にしかなりませんから、尋問はお任せしていいですか?」

「わかったにゃ、終わったらステラが貰った魚を、30匹頼むにゃ。にゃーが食べるんじゃにゃいにゃよ、今回の作戦に参加者した部下への、特別手当てにゃ」

「はい、用意させていただきます。じゃあドルトン、皆に撤収の指示を出してくれ、捕虜にはゲートを見せないように、目隠しをした上で牢獄送りにしてくれ」

「徹底的に手の内を隠すんじゃな」

「そういうことだ」


寝ていたか起きていたかは知らんが、突如襲撃を受けて建物から引きずり出されれば、町はない。知らないうちに見知らぬ土地に連れてこられ、次は一瞬にして牢獄だ。しかもその手段が全くわからないとなれば、いい加減連中の理解を越えているはずだ。

そろそろ未知への恐怖心で、いい感じに心が折れ始めているだろう。


次回4日です

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