69 さあ戦おうか
「野郎共、分かってんだろうな、今日のこの戦、公国に我ら鬼族の力を見せつけてやるぞ!!」
「おおおおお~~~~~」
緑の下草が生えたバトル、フィールドの片側から勇ましい声が上がる。
「皆、分かっているわね? この戦、負けたら屍拾う者なし。無様晒したくなかったら、死ぬ気で闘うのよ。さあ、今こそ公国の力を、見せる時よ!」
「おおおおお~~~~~」
同じく反対側からも声が上がる。
「・・・・・・お母さん、何時から野党の頭首になったのかしら?」
「いや野党じゃなくて、公国バンデットな。まあ山賊だから、大きく間違ってもいないけどな。あと頭首で投手でもあるかな」
「さあ、いよいよ始まりました、公国バンデット対鬼族タイガー・パンツァーの一戦、実況は私“アルケニーの上の人”こと、服飾工房アラクネーの店主、アルケニーのクーナが、お送りいたします。そして本日はスペシャルゲストとして、公王様夫妻に解説をしていただきます」
「はい。よろしく」
「よろしくお願いします」
「さて、鬼族チームは凄く派手な姿ですね」
「トラジマ模様の鎧ですね。まあチーム名がタイガー・パンツァーですからね。もしトラジマパンツで出てきたら、笑えましたが・・・。しかし、男性の観客は応援席に目が釘付けのようです。私は、前世見たアニメを思い出します」
「・・・凄いですね、おまたと胸しか隠れていません。パンツというか、あれは下着その物ではないのでしょうか?」
「「「「うお~~~」」」
「クーナさん結婚してくれ~~~」
「「「「きゃー黒足様~~~」」」
「あ、お前逆玉狙いか、ふざけんなよ」
「貴重な人族の貴重な美人だぞ、早い者勝ちだろうが」
「ざけんな、鬼族の、紅葉ちゃんや、いわちゃんの方が、万倍かわいいんだよ!」
「そうだそうだ、鬼っこに人族が勝てるわけねえ」
「シデンく~ん頑張って~」
「はん、トラジマビキニに惑わされやがって、レオーネ姉さん鬼怖さの前には鬼だって裸足で逃げ出すさ」
「ちょっと~その辺の人、今何か言ったかしら?」
「さあさあ盛り上がってまいりました。観客席から熱い声援がかけられています。各選手の人気が伺えるというものでしょう」
「(お母さん、普段いったい何をしているのかしら)」
「(理由は知らないけど、以前からわりとこんな感じだぞ)」
「(そうなの?)」
「(そう・・・なんだよ、実は)」
「さて、公王様、本日の戦いの見所はどこでしょうか」
「そうですね、今日は両軍初の戦ですので、先ずはこの戦がどのようなものか、見て楽しんでいただきたいですね・・・試合と関係ありませんが、クーナさんはアラクネなんですか、それともアルケニーなんですか」
「どちらでもかまいませんよ、別名みたいなものです。さて、この戦形式は、お館様の出身国で盛んに行われていたそうです。是非良い戦をして頂きたいですね」
「意外と適当だな!」
俺は、種族間違えないように、気を使っているけど、時々混乱するんだよ。名前もケーナと呼びそうになるし、これでアルラウネが街に住んだ日には絶対にどこかで、言い間違えそうだ。
「さあ、今戦開始の笛が鳴ります」
ピーーーーー
「さあ、両軍にらみ合っておりますが、ここで、ボールが出たーーーーそして、くおーたばっく?のイブキ選手にボールが渡った。そして、投げた~~~~公王様これはどういうことですか!?」
「クオーターバックはセンターからボールを受け、攻撃に移る基点です。自然、指揮官になることも少なくないですね。こうやって、相手の陣地にボールを運んでいく試合になります」
「なるほど、イブキ族長が付くにふさわしいポジションなのですね」
「うんまあ、司令塔という意味ではね。でもこの試合ではどうかなあ」
「さあ、ボールは凄い勢いで飛んでいきますが、果たして取れるのか・・・あ~っとこれはイバラキ選手だ、れしーばーのイバラキ選手が走りこんでいます。そして、余裕でボールを今掴み・・・・あああああーーーーー止まった、ボール目前にして立ち止まってしまいました、そして黒足選手が悠々キャッチ、これは一体!?」
「あ~取られてしまいましたね」
「直前で足が止まってしまいましたが、どうしたのでしょう」
「おそらく、走って来た黒足選手に、びびったのでしょうね」
「なるほど、イバラキ君はまだ幼いですからね、黒足にいさ・・・選手が、怖かったのかもしれませんね」
「さあ、鬼族タイガー・パンツァーはいきなり攻撃チャンスを失ってしまいました。これは痛いですね」
「そうですね公国軍において、黒足選手は割りと見た目が大人しいほうですから尚更ですよ。黒足選手にびびっていては、この先・・・・」
「公国バンデットのクオーターバックは、女性ですね」
「はい。母です」
「ほほう、それは楽しみですよね。レオーネ選手は果たしてどんなプレイを見せてくれるのか・・・あああーーー投げるふりして、地面に置いた?これはなんでしょう」
「いや、これは・・・」
「おや?ボールが動いています、地面に置いたと思われたボールが敵陣めがけて一気に移動します。これは一体何なのか」
「良く見るとボールの下にシデン選手がいますね。これは彼のランですよ」
「これは!これは果たしてアリなのでしょうか!? シデン選手、自身より大きなボールを万歳のように両手で担いで元気よく爆走しています。これは厄介だ、もはや止められないぞ~~~~」
「種族特性をうまく生かしてますね、止めたくても相手が小さすぎて、迂闊に止めにいくとファウルを取られますよ」
「そして、爆走のままタッチダウンーーーーーー」
「さて、試合は進みますが、鬼族タイガー・パンツァーは公国バンデットに押されて良いところがありませんね」
「ええ、。何とか挽回していただきたいところですが・・・」
「あ~っとここでシュテン選手のランだ。しかし果たして、どこまでいけるのか、正面にはセンターのノブタ選手が迫るぞ~~~」
「っく、酒気爆炎・・・」
ドゴーーーーン
ピーーーーーーーー
「あああああああ、魔法だ、シュテン選手、炎系の攻撃魔法を使ってしまった、これは明らかな反則です。しかもノブタ選手は怯まずタックルに行ったーーーー」
「これはちょっとかっこ悪いですね」
「あせって、うっかり使ってしまったのかもしれませんが、これはいけませんね・・・」
「審判は反則を取りましたが、これはどういった扱いでしょうか」
「プレイ中の、危険行為を違反とする、パーソナル・ファウルを取ったのでしょうけど、それ以上は私にはちょっとわかりませんね、ただルール的には15ヤードの罰則ですが、危険行為の重さによっては・・・」
「あーーーーーと、退場です。シュテン選手退場を命じられました」
「妥当な判断でしょうね」
「おおおおおーーーーーーー」
「しかし、客席は余計に盛り上がってますよ」
「う~ん。この辺りルール調整が必要かなあ。アメフトは危険だから意外とルールが細かいんですよね」
「あーーーーキャッチに行った、イバラキ選手の頭上を、緑色の影が走ってボールを奪った、あの選手はいったい!?」
「クー・シー族の選手ですね。彼らは無音、超速移動が出来ますからね、ルール的には存在そのものが、きわどい選手ですが、今回は流されましたね」
「クー・シー族!? 私、街中で一度もそのような種族を見たことがありませんが??」
「ケット・シーと同時に移住されてますが、彼らは森の警備を独自でしてくれています。その分街には寄り付きませんけど、一応我が国預かりになっています」
「私、初めて知りました」
「あ~~と、ここで終にイバラキ選手泣き出してしまった。これはどうなるのか」
「周囲が必死になだめていますが、試合継続は難しそうですね」
「鬼族チームは、全体のバランスとしては、決して悪くないです。人族相手であれば圧勝していそうですが、個々に特異な能力を持つ公国チームに押されっぱなしですね。シュテン選手を欠いたのも非常に痛いですよ」
「あ、ここでなにやら、イブキ選手が審判と話していますが・・・あーーーと、イブキ選手からギブアップ宣言だ、試合終了です」
「う~ん、これはルールがあわないのか、実力差なのか判断が難しいですね」
ボクシングとかの方が良いのかなあ。しかしそれだと格闘に偏りすぎるし・・・。
「続きまして、グラウンド整備後はサッカーの試合に移りたいと思います」
「続くの!?」
「はい。サッカーは手直しすれば出来そうですので」
「いや、できそうって、ラインも無いよ? これじゃサッカーにはならないだろう」
「そこはたぶん、ローカル・ルールかと」
「おいーー」
そして、サッカーが始まったが、それはもうひたすらボールを、ゴールに入れる競技だった。ラインが無いからキーパーがどこでもボールに触るし、オフサイドが如何こう言う状態じゃないんだが、ボールを蹴り入れるというシンプルな決まりが受けたのか、アメフトよりは盛り上がった。ただ、リリパットやクー・シーなどは体の都合上参加できないから、この辺りの不満はあったな。
「お館様、私たちが出来る競技も一つお願いします」
ケンタウロスのウーローンに言われたが、球技は無理だろうな。
じゃあ何をすればいいといっても、団体競技自体が厳しいだろう・・・。
「とりあえず、個人の能力を競う競技でよければ、一つあるんだが・・・」
俺がウーローンに教えたのは流鏑馬だ。競技というには語弊があるかもしれないが、決められたコースを走るタイムと、途中の的へ鏑矢を射る部分をダーツの採点のようにすることで、速さと的当ての合計ポイントを競う競技にしてみた。これは狩猟をしていたケンタウロスに狩りの腕を競わせるようなものだが、実際にやってみると、ケンタウロス以上に見物客が喜んだため、ケンタウロスたちも腕自慢が出来るとあって悪い気はしていないようだ。
「他にみなが喜びそうなものが、何か無いですか」
「・・・えーと、相撲という格闘技があってな、少し服装が特殊なんだが・・・」
クーナとブライアンの協力で、まわしらしき物を作った。
しかし、競技の説明をしたがあまり感触は良くない。仕方が無いので、モーブとノブタとシュテンに頼み込んで、とにかく一度やってもらった。三人での総当りだが、結果ノブタが二勝した。単純な力はモーブの方が上だが、ノブタの巨体と重量に、食料探しや農作業で鍛えられた足腰は、モーブを吊り出して勝利するという、驚きの結果を見せた。
全敗はシュテンだった。まあ少しばかり相手が悪かった気もするが、それも逆に彼の闘争心に火をつけたようで、強そうな者を見つけては次々に挑戦を挑み、結果的に相撲人口を増やして行った。チームプレイの球技よりも、個人の能力・・・それも戦闘力とも言えそうな分野の方が、受け入れやすいようだな。でも死人がでかねないから、総合格闘などはやめておこう。
現在、グラウンドで行われる競技としては、棒倒しや運動会の騎馬戦とサッカーっぽい何かだな。他の球技やバドミントンなど店にある用品を使ってできるスポーツは、人族にはそこそこ受けがよかったのか、見るのではなく自分が出来るスポーツという位置づけで楽しまれているようだ。




