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67 空を翔る鬚

「あちしはアントニャオの妹、ステラだにゃ」

「奈良建人だ、魔法王国期のゴーレムを見つけたので、色々調べたい」

「話は聞いているにゃ、補助魔石まで抜いてあるなら危険は無いにゃ、全身くまなく調べつくすにゃ」

「補助魔石の事まで知っているのか」

「以前発掘された資料を調べたにゃ」


なるほど、どこで手に入れたのか知らないが、設計図のようなものを手に入れていたというわけか。


「よし、念のため町から離れた場所に持って行って、そこで確認するがそれでいいか」

「良いにゃ、万一があるからそれで良いにゃ」


二人でばらせる部分をばらして構造を確認し、術式をアプリで取り込んで解析する。

当然ステラからスマホを強請ねだられた。

もちろん渡しますよ、俺は猫に甘い男ですからね。


「急いで所有権の設定方法を調べるにゃけど、調査には焼き魚3匹が必要にゃから、出来る限りはやく用意するにゃ」



ふむ、何故焼き魚が必要なのかは全くわからないが、一つだけ言える事がある。



「三匹で足りるのか?」


「ニャ!!! フシャー」


俺が聞くと尻尾がぶわっと膨らみ威嚇をされた。やばい完全に怒らせてしまったか。


「失礼にゃ、あちしは三匹も食べにゃいにゃ。一匹は、にい様の分にゃ」

「あ、すみません」


そうだね、三匹はチョッと多いよね。俺もそうじゃないかと思ったよ。


「家族で食べるのかと思ったんだよ、他に他意はないよ」

「・・・・怪しいけど納得してやるにゃ」

「ありがとう。それと、所有権もだけど、ゴーレムの自立制御や知識がどうなっているかも調べて欲しい」

「?どういうことにゃ」

「例えば歩くためには交互に足を出して、上半身も併せて体重移動しないと倒れてしまうよな?警備員として遺跡に入った侵入者と遺跡にいるべき関係者を、どうやって判別しているのかも不思議だろ?そういう部分の調査も重要なわけだ」

「わかったにゃ!ちょっと時間がかかるにゃけどきっと調べて見せるにゃ。魚九匹よろしくだにゃ」


そう言い残してステラは去って行った。魚が三倍になってるのは何でかな?



あけて翌日。


「できたぞ」

「・・・・うん?」

「できたぞ」

「・・・だから何が?」

「『だから何が?』じゃないわい、お主が昨日言ったもんができたんじゃ」


昨日?


「すまん、ドルトン。俺の記憶違いでなければ、俺は昨日ステラとゴーレムを調べていて、日中は街にいなかったと思うんだが、いったい何ができたんだ」

「何いっとるんじゃ、昨日渡された図面の飛行機ができたといっているんじゃ、まだわからんのか」

「・・・・それ、昨日じゃねえよ!!」


一体この男は何を言っているのか・・・まさか痴呆か? 俺は噛んで含めるように説明してやることにする。


「いいか、前回の会議は月曜日だ、昨日会議だというなら今日は何曜日になる」

「火曜に決まっとるぞ、馬鹿にしとるんか」

「そうだ、月曜の翌日は火曜だ、正解だよ。だがしかし・・・どういうわけか今日は火曜日では無いんだ」

「む、徹夜してしまったか、すまん。今日は水曜だったんじゃな」

「今日は木曜だ、ボケ――――」

「なんじゃと!! ばかな・・・、ワシは会議後二食しか食べとらんぞ!」

「飯の回数で日数を数えるな! というか、身体壊すぞ」


俺はこの国をそんなブラック企業にした覚えないぞ、いやお前は技術系の統括部長か?間違いなく重役だからドルトン自身はブラック関係ないか。ならあれか、昭和の創業技術者たちか? 寝る間も惜しんで仕事と物作りに没頭するのか?世界のトップを目指して・・・たな。しかし、お前は、ドワーフの長だろうが、天に名を轟かせるとか無茶してんじゃねえよ。



「本当に三日三晩で作ったんだな」


目の前にドルトンの作った試作一号機が置かれている。

全長は5m程で、翼の全幅も同程度。大戦末期に日本軍が試作した局地戦闘機の震電しんでんを真似た、独特の形状をしている。極端な話、浮遊石が前提だから翼がなくても飛べるけど、燃料節約のために翼を付けた。そして機体形状も“恰好いいから”真似た。あれだね、形が自由なら前世のアニメや漫画にあった、飛行空母的な乗り物を作成できるわけだし、戦闘用のロボは無いけどゴーレム降下部隊は作れるだろうし、なんかこうオタク心が疼くね。

・・・だんだん世界征服可能なレベルになってきた気がするな。


「もう飛んだのか?」

「まだじゃ、じゃが、製造者責任としてワシが最初に飛ぶぞ」

「いいよ、どうせ俺が最初に乗るって言っても、誰も許してくれないし。ならドルトンが乗るのが一番いいだろうし、やばそうなら俺が大型ゲートで回収するからな」

「ワシもまだ死にたくないから墜落しそうなら頼む」


翌日、試験飛行が行われることになった。

何故か周囲には沢山の観衆が集まっている。

キッドたちの船は空亀に乗っていたため、自力飛行より亀に運んでもらっているというイメージが強かったが、何故か“公国の新型魔道具は自力で空を飛ぶ乗り物”と言う、正しい?情報が漏れているため、一目見ようと多くの国民が集まったのだそうだ。


機体に乗り込むドルトンに、いくつか忠告をする。


「空を飛ぶにあたって注意事項がある、これは命にかかわるから真剣に聞いてくれ」

「お、おう」


俺の真剣な表情にただ事では無いと、ドルトンも表情を引き締める。


「今日の天気はどうだ?暑いか涼しいか」

「・・・・最近は暑さも和らいで過ごしやすいんじゃないか?」


予想外の質問に、怪訝な顔をするドルトン。急に何をという感じだろうが話しはこれからだ。


「いいか、空に上がるとだいたい100mごとに一℃弱、気温が下がる。そして空気も薄くなる。人は空気を吸わないと生きられないのは分かるな?高いところに上がると、だんだん空気の成分が薄くなるんだ。いいか、この街の敷地幅は約2kmだがそれと同じ位上昇すると気温が13℃ほど下がる。そして空気は2割減る。この時点で、或いは体質によってはもっと早く、頭痛や寒気や吐き気などが表れる。そして、そのまま放置すると失神して場合によっては機体と共に天高く神の御許へ昇天してしまうだろう」


ドルトンはコクコクうなずいている。


「すこしでも気分が悪くなったら機体を下げろ。いっそ、魔力供給を切っても良い、後は俺が回収してやる。だから天高く上がる前に何とかしてくれ」


魔法の鍵をアプリではなく現物として作成できるほど、技術が上がれば緊急時の脱出装置も作れるだろうけど今はまだ無理だ。



「・・・よ、よし行くぞ、この・・・・これの名前は?」

「おま、今頃聞くのかよ・・・天翔壱式てんしょういちしきでどうだ」


俺はメモ用紙を出して漢字で書いて見せた。


「意味は?」


態々口で言うだけでなく漢字で書いたことに何か感じたのか、ドルトンが意味を聞いてくる。


「前世の言葉に“天翔あまがける”というものがある。これは神や霊魂が自由に空を飛びまわる様を表した言葉だ。壱は一と同じ意味だが、商取引などで改竄を防ぐために使われる。そして今日より国の年号を天翔元年てんしょうがんねんと定める。我が国は、何者にも囚われず、国民の全ては在るがまま、自由に生きられる国だ、天翔壱式もまた自由に天を翔ける最初の機体だ」


まあチョッとアレだけど。


「「「「「「「「「おおおおおおおおおーーーーーーーーー」」」」」」」」」


ビク! な、なんだ!?

我ながらちょっと中二臭かったかな?と考えていたら、周囲の観衆が急に沸きあがったぞ。


「うむうむ。成り行きで建国した感があったが、流石公王じゃ。皆この国の姿勢、目指すところを聞き、感銘を受けておるのじゃ」

「長老・・・なんだか久しぶりだな」

「・・・最近悪戯が過ぎると誰かさんに怒られたから、少し大人しくしておったのじゃ」

「そうか、しかしそれは自業自得だからな、俺が悪いわけじゃないぞ」

「うむ。少しは反省しておる。しかし、アレが我が愚息が乗っていた船をヒントにして作られた、空を飛ぶ乗り物ですか。正直あの愚息が役に立つとは思わなかったのじゃ」

「いや、前にもリリパットたち用の小型試作機を作ったじゃないか。それにキッドは凄いぞ、空亀の食生活から浮遊石を見つけ、ラピュータへ行くための乗り物を作るとか、凡人に出来ることじゃないし、自由奔放だが物事の道理をわきまえている。一緒に居た連中も気の良いやつらだったしな。リリパットの一族を率いるには向かないかもしれないが、違う方面ではまだまだ、活躍するんじゃないか」

「そんなもんかのう」


「下げフラップの動き異常なし」

「同じく左右の方向舵ラダー動作異常なし」

「左の昇降舵エレベーター動き甘いよ、何やってんの」

「左右の補助翼エルロン同じ方向に動いているぞ、これじゃフラップと同じじゃないか、誰が施工したんだ!」


長老と話している間に、ドルトンは操縦席にもぐりこみ、仲間たちと各部の動きを確認している。資料を元に各部の動作確認を手伝っているが、不具合もあるようで時折怒声が飛んでいる。たぶん操縦席の男を筆頭に、バカ共が三日寝ずに作った飛行機だから、どこに異常があるかわからん。確りチェックして、ついでに叱ってやって欲しいものだ。


「大丈夫なのか?」


俺はドルトンではなく整備スタッフに聞いた。


「動作上の不具合は全て解消しつつあります。開発はトライ&エラーですよ。今回の飛行実験に支障はありません。それに今飛ばないなら1000年先も俺たちは飛べませんよ。大丈夫、ドルトンならうまくやりますよ」


「いよ~~~し、全て問題ないな、天翔壱式てんしょういちしきドルトン、発進するぞ」


そしてプロペラが高速で回転し、機体はゆっくり前進を始め、いきなり地面から浮き上がった。こういうところは地球の飛行機と違うから、少し驚いた。

そして、機首から空高くへとグングン上がっていった。ありゃ、浮遊石の浮力で浮いていると言うより、完全に飛んでいるな。1ドワーフりきなのに大したもんだ。


「「「「「「「「「おおおおおおおおおーーーーーーーーー」」」」」」」」」


そして再びの大歓声だ。


ドルトンが乗る天翔壱式は空高く、鳶の様にクルクルと回っている。・・・・・・でも、大分スピードが落ちたな。こぎ疲れてきたんだろうか? けど、こがないと風で機体が流されるからうまく風に乗って旋回し続けなきゃいけないんだが、そこまでの技術は無いよな・・・・。補助動力も必要かな?


「しかしまあ、これで、少し海が近づいたな」


魚介類に海草、そして、にがりを手に入れれば食事の幅も広がるな・・・。


「ふふふ、これで我が野望にまた一歩・・・・くはははは」


「いや、長老。勝手に俺の言葉っぽく、アテレコ入れないでくれ」


次回15日です

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