60 ミスリルの真価
突然の声がけではあったが、それでもモーブは反応し、俺が投げた剣を掴んだ。
「これは、剣か? 冗談だろ、剣で石を切るのは、金テコで殴るより難しいだろ」
モーブがミスリル製の剣に不満を垂れるが、鈍器で砕けないならミスリルで切りつけるしかないだろう。何回か斬りつけていれば、少しは切れるはずだから、うまいこと切って欲しい。
「ドルトンが作ったバスタードソードだ。ここなら、十分振れるだろ。叩いて駄目なら切り崩せ」
「簡単に言うな!」
叫びながら、ストーンゴーレムか、石像生物のような石の像を相手に、モーブは渡された剣を破れかぶれとばかりに、振り切った。
ゴトン。
音の直後、驚きが一瞬の静寂をつれてやってきた。
皆が見つめるその先、石像の上半身が無くなっていた。
「うっそ、マジで切れたんか」
「おい、お前切れると思ってなかったのか? 切れって言っておいてそれはどうなんだよ」
「え、いやだって石だぞ? 普通に切ったら剣で切れるもんじゃないだろ。隕鉄で作った剣を持つ石川さん家の○右衛門君でもなきゃ無理な話だぞ?」
「いや、石川さんって、誰だよ、知らねえよ。それ無理って、言ってるだけだろ」
そんなことは無いってと、笑いながらも、視線を微妙にずらす。
「しかしミスリルって割に、この剣は案外重いな。ミスリルは軽いものじゃないのか」
「中身は普通の鉄製で、外側に薄くミスリルを塗ってあるんだ。でも刃先があまり鋭くないから、俺にはちょっとな」
俺が使った感覚としては、切れない包丁で切っている感じだった。
「あ~ミスリルは、一度魔力で成形されると、何倍もの魔力を注がないと、溶けない性質があるんですが、その代わり魔力を流すと切れ味が増すんですよ。ですから公王様の場合は・・・・ね?」
ヨルンが種明かしをしてくれた。後半は俺に対して言葉を濁したが、つまり魔力の少ない俺の場合効果がないだけで、刃先が鋭く無くても普通はよく切れるという事か。
「それドルトンは知ってるよな」
「鍛治職人ですから、当然知ってるんじゃないですか?それが何か?」
「いや、なんでもない・・・」
ドルトンが凹んでたのは、俺にも切れる剣にならなかったから・・・・かな。
まあ無いもの強請りしても仕方が無いので、俺以外の戦力を強化することにしよう。
「じゃあ、同じような試作品があるから、好きなのとってくれ」
俺が店に置いた試作品容れを召喚して、皆に示すとそれぞれ好みの武器を手に取った。ヨルンと黒足がロングソードで、レオノールはサーベル、シデンがナイフだ。ナイフだけど、持った姿はグレートソードみたいな感じ。もちろん形状は違うけど体との比較がそんな感じ。
「じゃあ先へ進むか」
その後もゴブリンやらオーガやら、オークやらが襲ってくるが、全く言葉が通じないので、やむなく倒して進む。オークに至ってはノブタの一族を知っているだけに、非常に戦いにくかったが、鑑定によるとfake(偽物)の表記があったため、本物ではなく、それらの種族を摸倣した生物らしい。倒した後は旧鼠の分身のように魔力になって消滅し、小さな魔石が残った。そして、今は人族の冒険者と思われる一団のfake(偽物)と戦闘中だ。
「こいつら偽物で間違いないんだな」
「ああ、偽物だ」
相手の構成は剣と盾を持った、部分金属鎧男を前衛に、槍使いの女とショートソードの女、後方で魔法を唱える女という男×1 女×3というハーレムパーティーだ。
槍使いの女は動きやすそうな皮鎧にロングスピアで、ショートソード女はやや前傾姿勢でこちらの様子を伺い、時折ナイフを投げてくる。おそらくゲームの盗賊職的な存在なのだろう。最後尾の魔法使いは、もにゅもにゅと魔法を唱えて火の玉を撃ってくるが、詠唱が長くそれでいて威力はたいしたこと無い。詠唱の言葉は翻訳されず、そして、誰も知らない言葉らしいので、他の大陸など文化圏が違う土地の者たちの複製かもしれない。
「くそ鬱陶しいなこいつ」
言ってモーブが盾剣の戦士に斬りかかるが、相手は盾の使い方が非常にうまい。まともに当たれば盾ごとスッパリ行きそうなのに、盾の角度で刃を滑らせモーブの攻撃をいなしている。
「○×$%&」
「水球」
敵魔法使いの放った火球に、ヨルンが水球を当てて相殺する。
「相手の魔法が分かるのか?」
「いえ、向こうが火球しか撃たないので水を撃っているだけです」
「жжΠΞ!!」
シーフ(盗賊)っぽい女が悲鳴を上げる。何事かと見れば足を押さえてうずくまっている。どうやらシデンがアキレス腱の辺りを斬りつけたようだ。敏捷性が頼りのシーフが足を怪我すれば、もう脅威では無いな。・・・まあサイコロの出目が連続クリティカルとかいうような、何かが無ければだけどな。
「お館様撃ちます」
「あいよ」
「射撃後自分が突っ込みます」
レオノールの弓による射撃宣言に合わせて、数歩下がり槍使いとの距離を開ける。そして、間を置かず黒足が切りかかる。俺も戦うといったらサポートを付けられた。それも二人だ。まあここに来るまでに多少やらかした俺としては素直にしたがって、黒足、レオノールの二人と共に槍使いと対峙している。
「なあ、ヨルン。人族の冒険者のなかで、こいつらどの程度の実力だ」
「PTとしちゃ俺より上位ですよ。魔法使いは魔法のレパートリーは少ないし、詠唱に時間もかかってますが、ですがそもそも・・・ちぇい・・・・ふん・・・そもそも、人族は魔法をまともに習っちゃ・・・水球・・・居ないんですよ、俺はエルフから・・・は!・・・習ったんで他の人族より・・・水球・・・魔法に慣れてるんですよ」
ヨルンが戦闘中、途切れ途切れに返事を返してくれる。彼は敵魔法使いの魔法を相殺しながら、モーブの相手する盾戦士に散発的な牽制をしてくれているので、非常に忙しい。だがまあ、既にシーフが倒れ流れは俺たち優位だから、このまま押し切れるだろう。
「やっぱ、バランスが良い冒険者PTは手ごわかったな」
「この連中に比べたらオーガの群れとか単なる力自慢でしかありませんね」
「回収した魔石も中々良いサイズですよ」
「今俺たちが使ってる魔石は、以前発見した大きな岩から取ってるが、あれは何れ取り尽くしてしまうだろうけど、ここって、これからも魔石が取れるのかな?」
「どうなんでしょうね。それと先程の仮説がいきなり崩れましたね」
「それを言うなよ、さっきの話は忘れてくれ。少なくとも倒して魔石に変わる奴らは、真っ当な生物じゃないからな。どっかに複製する術式があるのか知らんけど、ダンジョンの謎が深まった感じだな」
「ところでそろそろ、ゴーレムの様子を見に行きませんか」
「そうだな・・・ユニットハウスのゲートが待機中だから、それを使うか」
「では僕が」
「いや鑑定しないと状態がわからないから俺が行くよ。ユニット内なら安全だから」
それでも一応ということで、シデンが先に行き安全確認したうえで、後から俺が行く。現地を確認すれば、ゴーレムは魔物の死体の中で平然と立っていた。俺たちに気がつけば、ユニットハウスに投石する程度にはヤル気のようだな。
「鑑定、ゴーレム」
【鑑定:ゴーレム】
名前 :セーコム社 アルソ式・セント1型ニュータイプ
種族 :魔道ゴーレム
年齢 :515(稼働年数)
職業 :自宅警備ユニット
レベル:-
耐久 :295 /500
魔力 :40/400
筋力 :500/800
敏捷 :15/40
知力 :25/35
状態 :経年劣化により耐久低下
スキル:
魔法 :熱光線(魔力ビーム)・電撃(要接触)
ギフト:
所持品:
備考 :魔力低下により省エネモードで稼働中
なるほど・・・。
俺たちは戻って、皆に状況を伝える。
「耐久がちょっと減ったな、同じく魔力も少し減った。減り具合からしたら、魔力は20%減っているが、耐久は殆ど減っていない。減少値は2%以下だ」
「20%って事は、さっきの4倍を送り込めば、ほぼ空に出来るのか」
「そうだな、強い奴ほど減るだろうけど、おおむねそんな感じだ」
「それなら、下層を目指しましょう。このダンジョンの行けるとこまで行って、調査した上で、強めの魔物をゴーレムにぶつけましょう。そしてここを冒険者に開放すれば、魔石が回収できますよ」
「冒険者って人族のか?」
「まあ、大部分はそうですね。ですが少数ですがエルフやドワーフも居ますよ。そして、転移ゲートを上の遺跡に設置して、遺跡内を小さな街のようにするんですよ、そうすれば地上に出なくてすみますから、冒険者は遺跡がどこにあるか分からない」
なるほど、元々上の遺跡は何かの施設だっただけにそれなりの部屋数があるし、それで足りなければ、冒険向けの歓楽街などはゲートを設置する地上に作ればいいわけか。そして、俺たちは冒険者が取ってきた魔石を買い取って、冒険者はその稼ぎで生活する。うん、悪くないな。
「良いな、それ。鬼族と相談の必要はあるが、基本路線はそれで行こう」
地下遺跡内で運営する施設は、買い取り所や武器防具の店に道具屋と薬屋に病院などかな。うちの店の商品も売れるし、トラブっても俺の街に影響は無いのが良いな。
「じゃあ行けるとこまで行ってみるか」
次回10月1日予定




